鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

なぜ「1人でいる」のか?:質問は“行為の動機”か“状況の規定の根拠”か?(GLASS6-7)

2008-12-27 23:18:54 | Weblog
さてアリスがハンプティ・ダンプティにたずねる。「なぜあなたは1人で戸外の塀の上に座っているんですか?」と。「なぜなら誰も俺と一緒にいないからだ」と彼が答える。そして「お前は俺が答えられないと思ったのか?ほかの質問はないのか?」と言う。
 
 PS:アリスはここで驚いたはずである。では彼女はどういう答をここで期待していたのだろうか。なぜ「戸外に」いて家の中にいないかの答、あるいはなぜ「塀の上に」いて普通に地面の上にいないのかの答えなどを彼女は考えていたろう。つまり彼の行為の動機を尋ねている。“戸外が気持ちがいいから”とか、“塀の上は眺めがいいから”とかの答えをアリスは予想していたはずである。あるいは、アリスはなぜ「1人で」いてほかの皆と一緒にいないことについてハンプティ・ダンプティにその行為の動機を尋ねたのかもしれない。そして“誰も友達がいないから”とか“1人でいるのが好きだから”というような彼の答えを期待していたのかもしれない。
 ところがハンプティ・ダンプティは「1人でいる」という行為の動機でなく、「1人でいる」という状況の規定の根拠について尋ねられたと思ったのである。“誰も一緒にいない”なら状況は「1人でいる」と規定される。もし“ほかに誰かと一緒にいる”ならこの状況は「みんなでいる」と規定される。かくて彼は状況の規定(「1人でいる」)に関して、その根拠(“誰も一緒にいない”)を答えたのである。