鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

アリスという名前:固有名詞か一般名詞か?(GLASS6-5)

2008-12-22 00:44:24 | Weblog
さてこれまで決してアリスの方を向かずにものを言っていたハンプティ・ダンプティが初めてアリスに向かって話しかける。「お前の名前と仕事を私に言いなさい」と。「名前はアリスです」と彼女が答える。するとハンプティ・ダンプティが「それはどういう意味だ?」 What does it mean? とたずねる。これに対してアリスが「名前は何か意味を持たないといけないんですか?」 Must a name mean somethng? と質問した。

 PS:この会話は何を言っているのだろうか。名前をアリスは固有名詞として考えている。固有名詞はひとつの個物のみを指し示す。指し示されているのがどれかor誰かがわかればよい。アリスという名前は目の前の自分を指し示しておりそれはハンプティ・ダンプティもわかっているはずとアリスは思う。だから「名前は何か意味を持たないといけないんですか?」 と彼女は訝しく思って質問する。
 ところがハンプティ・ダンプティは名前を一般名詞として考えている。例えば、ものについて「その名前は独鈷杵(トッコショ)です」と誰かが答えたら独鈷杵の意味がわからないハンプティ・ダンプティが「それはどういう意味だ?」 とたずねてもおかしくない。相手は「それは密教における“魔”を刺し殺す法具を意味します」と説明するだろう。また例えばある人について誰かが「名前は阿闍梨(アジャリ)です」と答えたら阿闍梨の意味がわからない者が「それはどういう意味だ?」 とたずねても当然だろう。相手は「それは弟子たちの規範となり法を教授する師匠を意味します」と答えるだろう。これと同じようにハンプティ・ダンプティは「アリス」という名前を固有名詞でなく一般名詞と考えたので「それはどういう意味だ?」とたずねたのである。