鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

鏡の傾きが少し変化すると鏡が映し出す背景が別のものになる:川のボートから店内へ(GLASS5-29)

2008-11-29 09:30:31 | Weblog
 オールの先が水にハマって引っかかりオールの柄がアリスに当たり彼女は弾き飛ばされる。編物をしている羊が「お前はカニをつかまえた!」と言う。
 PS1:オールを漕いだとき水に深く入って引っかかってしまうことは漕艇用語で「カニをつかまえる catch a crab 」と呼ばれる(GLASS5-23参照)。すでに見たようにアリスはこの意味を知らない。だから彼女が言う。

 「カニなんて見えなかったわ!」とアリスが暗い水の中を覗きこむ。羊は嘲るようにただ笑っている。アリスが「ここにはカニがたくさんいるの?」とたずねる。「カニだって何だってみんなあるよ」と羊が答える。そして「たくさんあるからお前が決めさえすればいいんだよ。さてお前は何を買いたいのかい?」とたずねた。
 PS2:不思議な羊の発言である。①アリスは水の中について質問している。そこにはカニはいないしまして水の中に何だってあるなんておかしい。さらに②そこから選んで何かを買うとはどういうことなのか?水の中にあるとしたら採るのであって買うことはない。この謎はすぐ解ける。

 アリスは「買うですって!」と驚いて叫ぶ。と同時に怖くなる。というのはオール、ボート、川が一瞬にして消え彼女はまた小さな暗い店にいたからである。
 PS3:まるで魔術である。アリスが怖いと思ったのも当然だろう。鏡の国は不思議である。しかし考えてみればこれは、人が鏡の前に立つとき鏡の傾きが少し変化しただけで鏡が映し出す背景が突然別のものに変わるようなものかもしれない。