鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

夢の灯心草 dream-rushes が雪のように溶け去る(GLASS5-28)

2008-11-24 13:00:27 | Weblog
 ボートの元の位置に戻りアリスが嬉々として新たな宝物の灯心草を並べる。実は灯心草はアリスが摘んだその瞬間から色褪せ香りと美しさを失い始めていた。しかし彼女は気づかない。

 PS1:どうして摘んだその瞬間から灯心草はいわば滅んでいくのか。理由がまだ明らかでない。(第1の問い)
 PS2:アリスが灯心草の変化になぜ気づかないのかも不明。(第2の問い)

 現実の灯心草 real rushes だってほんのつかの間の命に過ぎない。ましてここにあるのは夢の灯心草 dream-rushes である。それらは雪のようにアリスの足元で溶けてしまう。

 PS3:第1の問いへの答え。現実世界でさえ永遠でなく、まして鏡の国はその現実の影つまり夢に過ぎない。だから夢の灯心草は摘んだその瞬間から滅んでいく。永遠の世界が神のものなら現実世界は神の似姿、さらに鏡の国はその反映・影・夢に過ぎない。はかない悲しい世界。

 しかしアリスは夢の灯心草が溶け去ることに気づかない。と言うのもアリスにとっては鏡の国には他にも奇妙な出来事が山ほどあったからである。
 
 PS4:これが第2の問いへの答え。アリスは好奇心が旺盛。彼女は反映・影・夢が滅びることに興味はなくその奇妙な形象にのみ惹かれるのである。