鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

鏡の国では灯心草が遠のくor現実世界では欲望の充足が新たな欲望を生み出す(GLASS5-27)

2008-11-18 22:04:44 | Weblog
 アリスはボートを漕ぐのをやめる。ボートが流れていき灯心草の間へと進む。アリスは袖をまくり上げ腕を水に入れ灯心草を水中で折り取る。このとき彼女はボートの片側にかがみこみ髪の先が水につかる。彼女はキラキラと熱中した眼でいい香りの灯心草の束を次々掴み取る。
 「あそこに何て素敵な灯心草!でも手が届かない!」とアリスが思う。しかも腹だたしくみえるのは(まるで“わざとみたいだわ”とアリスが思うが)彼女がたくさん摘んだと思ってもより一層きれいなのがいつも手の届かないところにある。「一番素敵なのがいつも遠くにあるんだわ!」と終にアリスが言う。どんどん遠のく灯心草の頑固さに彼女はため息をつく。

 PS:鏡の国の灯心草は不思議である。これはしかし現実世界での人間の欲望の不思議さかもしれない。欲望の対象を手に入れたと思ったときすでにもう新たな欲望の対象が再び生まれ出ている。