むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

シオン:紫苑(元祖忘れな草)

2016-10-13 10:48:48 | 植物観察記録

いつもの散歩道の農家の庭先にシオン:紫苑(キク科シオン属)が咲いてます。
本州中国地方や九州にまれに野生があるそうですが、庭に植えられることが多い高さ2mにもなる大型の多年草です。平安時代から観賞用に、また薬用植物として栽培されてきたといわれます。
茎、葉ともにざらつきまばらに粗毛があります。花は8~9、頭花は直径3~3.5cmで舌状花は一列で淡青紫色です。
紫苑は中国名の音読みからきており、学名はAster tataricus で“韃靼の星”という意味です。日本では“思い草”のほか、鬼の醜草(しこぐさ)、醜鬼(しおに)という少し怖い異名があります。
今昔物語集に“兄弟2人、萱草(忘れ草)、紫苑を植ゑし語”という話があり、昔父親を亡くした兄弟がいて、兄は父親を忘れようとして萱草(忘れ草)今のヤブカンゾウまたはノカンゾウ(ユリ科ワスレグサ属)を植え、('06年8月10日記事)弟はそれを見た人の心にあるものを決して忘れないという紫苑(思い草)を植えました。
父の墓を守る鬼は弟の孝心に感じ入り、明日起こることを前日に夢で知らせたとあります。このため物事を予見できる弟は危険を避け、チャンスを必ずものにすることで裕福になったというのですが、親を亡くしていく年も経て、いつまでも嘆いてばかりおられないと考えた兄と、いつまでたってもめめしく悲しむ弟との生き方が、それほど善悪の差があるのか、少し問題がありそうな説話です。

ウメバチソウ:梅鉢草(雄蕊は1日1本開く) 

2016-10-11 12:58:26 | 植物観察記録

雄しべはまだ開いてないが、多数ある仮雄しべはすでに開いているcenter>
秋の鉢伏山スキー場に珍しいウメバチソウ:梅鉢草(ニシキギ科ウメバチソウ属)の群落があり、可憐な純白の花をつけていました。
日本各地、シベリア、中国、ヒマラヤからヨーロッパなどの暖帯~寒帯に広く分布し、丘陵から高山帯の日当たりのよい湿地に生える多年草で、根生葉は長い柄があり長さ幅とも2~4cmの広卵形、花は夏から初秋、1茎に1茎葉1花で、高さ10~40cmの花茎の頂きに直径2~2.5cmの白い花を1個つけます。
和名の梅鉢草はこの純白の5弁の花の形が梅鉢紋に似ているところから来ています。
雄性先熟ですが、 面白いのは雄しべで、5個の雄しべは1日に1本ずつ伸びて花粉をだし、花粉を出さない仮雄蕊5個は先が糸状に12~22裂し先端に小さい球状の黄色い腺体がつきます。
子房上位で雌しべの柱頭は4裂します。

2本目の雄しべが伸びた。古い雄蕊の葯はすぐに落ちるらしい


5本揃った雄しべと、まだ雄しべが開かない花


花が散って果実に(奥の二つ)、5本の花糸が残る


腺体目当て?で訪花したナミハナアブ。アリも来ていた

ウメバチソウの群落は広い鉢伏スキー場に点在し、何やら場違いの感じがしましたが、よく見るとスキー場一帯は草の間に苔が生えており、まさに生育地とされる日当たりのよい湿地にぴったりはまる場所でした。
ウメバチソウは以前のユキノシタ科からAPGではニシキギ科に変わっています。

コツブギク:小粒菊(気遣いの名前?)

2016-10-10 07:09:19 | 植物観察記録

休耕田の草むらの中にコツブギク:小粒菊(キク科コゴメギク属)が小さな花をつけていました。
熱帯アメリカ原産の一年草で、寒帯~熱帯に分布し、世界的にみられる農耕地雑草です。
ハキダメギク(‘05年8月8日記事) によく似ていますが、一般にコゴメギクの方が痩せ型で茎が伸びていることが多く、葉は小さく、鋸歯が低くなっています。ルーペで詳しくみるとコゴメギクには舌状花には冠毛がありません。
日本ではハキダメギクの方がよく知られていますが、世界的にはコゴメギクの方が広く分布しているといいます。
ハキダメギクという可哀想な名前は、牧野富太郎が、東大の付属植物園である通称小石川植物園の裏手にあった掃き溜めに生えた見られぬ植物を見つけてこの名をつけたという有名な話があります。このハキダメギクによく似たコツブギクの名をつけたのは誰かわかりませんが、ハキダメギクを意識して、コツブという可愛い名で気を遣ったということでしょうか


ヒメシロネ:姫白根(小形のシロネ)

2016-10-09 06:18:36 | 植物観察記録

三田市郊外のため池の土手にヒメシロネ:姫白根(シソ科シロネ属)が花をつけていました。
北海道~九州の山野の湿地に生える多年草で、太くて白い根があるのでこの名があるシロネ属ですが、属を代表するシロネは、茎が太く、葉の長さ6~13㎝、高さが1m以上にもなります。ヒメシロネは名のとおり全体に小ぶりで、高さは30~70㎝、葉は細くて幅0.5~1.5㎝長さ4~8㎝と縁に鋭い鋸歯があり、細長く白い地下茎をひきます。
花はシロネに似て、萼の裂片は棘状で鋭くとがります。
よく似た大きさのコシロネは、ヒメシロネに比べ、茎はあまり枝分かれせず、葉巾1~2cmと少し広く、縁に粗い鋸歯があることなどで区別されます。

ヤマノイモ:山の芋(長雨に慌てた?むかご) 

2016-10-08 16:21:02 | 植物観察記録

猛暑の夏が終わったあとは、長雨が続いたこの秋、野山を歩くといろいろな異変も見られました。
ハンドルネームに使っているだけに、ヤマノイモ(ヤマノイモ科ヤマノイモ属)が“むかご”をつけているのを見るとやはり気になります。
むかごは、珠芽といわれオニユリやシュウカイドウなどにも付きますが、ふつうむかごといえば、ヤマノイモの葉の付け根に生じる小さい珠を指します。
いまでは、むかご自体を知る人も、ある程度年配でもないと少ないようですが、零余子と書いてむかごと読める人はさらに少ないと思います。「零」はしずくまたはきょらかな玉の意で、動詞としては落ちる、こぼれるとなり、すぐ零れ落ちるむかごを表しています。
すぐ零れ落ちるというそのむかごが、長雨で零れ落ちる前につるについたまま、小さな芽と根を出していました。
むかごを割ると粘り気があり、すでにしてしっかりヤマノイモ:自然薯(ヤマノイモ科)の匂いがします。
ヤマノイモは、地中に大きな根があり食用にされます。これが自然薯で、太るのに5年ぐらいかかるといわれ、精のつく食べ物として、その風味は食通にはこたえられないものになっています。
ヤマノイモは、むかご、種子、地中の芋の三本立てで子孫を増やします。こんなところが精のつく食べ物の代表とされるひとつの理由なのかもしれません。