むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

セイヨウニワトコ(ヨーロッパアルプス山麓に咲く) 

2013-07-23 12:21:11 | 日記
7月のヨーロッパアルプス山麓の山野にも町にも民家にもセイヨウニワトコ:西洋接骨木(スイカズラ科ニワトコ属が白い花をつけていました。
ニワトコは日本では庭に植えられることもなくあまり人に知られていませんが、ヨーロッパやイギリスでは春を告げる木の花としてだけではなく、人々の暮らしと関わり合いをもっていることで、ごく身近な存在となっています。
セイヨウニワトコの学名Sambucus nigraのSambucus はラテン語で、ラッパの一種の楽器がこの木で造られたことに由来します。英名のエルダーは古語のエルド(炎)に由来し、髄を抜いた中空の枝が火起こしに使われたことを物語ります。またこれで空気鉄砲(エルダーガン)を作ることも古くから子供たちに親しまれていたようです。
魔よけの木として家の近くに植える習慣があったり、木を切ると縁起が悪いといわれました。また様々な薬効に富む木としても尊ばれており、花でつくった化粧水はシミやしわを防ぐといわれ、果実を醗酵させたワインはリウマチや風邪、ぜんそくにお薬になりました。
余談ですが、じつは、宝塚歌劇のシンボル的な歌の“すみれの花咲く頃”は、もともとは、昭和4年ウイーンでつくられた“WENN DER WEISSE FLIEDER WIEDER BLUHT”(白いニワトコの花が今年も咲いた?)という歌で、これが翌年フランス語になったとき“QUAND REFLEURIRONT LES LILAS BLANCS”(リラの花咲くころ)でリラになり、さらに当時パリ留学中の白井鐵造が、宝塚歌劇で帰朝第1作のレビューで披露した時にスミレにしたという裏話があります。
独語辞書には、SPANISCHER fLIEDERというのがあり、ライラック(リラ、ムラサキハシドイ)となっています。最初の歌詞のfLIEDERが、ニワトコではなく、リラのつもりであったかどうかはわかりません
♪春 すみれ咲き 春を告げる 人なぜみな 春をあこがれ待つ・・・♪、すみれなればこそ宝塚の代表的な歌となったわけで、これがニワトコでは、これほど愛唱されることもなかったでしょうから、白井鐵造のセンスはさすがというべきでしょう。
ちなみに和名のニワトコは「ミヤツコギ」(庭に植える木)という古語に由来し、漢名の接骨木は、折れた骨がつながる薬に使われたことを表しています。
今でこそすたれていますが、日本でもニワトコを農耕神事として若枝を水田に鋤き込んだことから、ナワシロタズ、クサジキの別名もあります。
このように早春いち早く花をつけるニワトコは、洋の東西を問わず、人々にとって大事な木だったのです。
現地のガイドさんに“ニワトコの花が再び咲いた“(独)→リラの葉案咲く頃“(仏)→“スミレの花咲く頃”(日)の変遷を話したら、「この話いただく」と喜んでいました。

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