肩窄め梟
9時半頃の環状線はピークは過ぎているが、そこそこの混みよう。
朝から天王寺に向かうため京橋で乗換えた。
来た電車に空席は無く、ゆったり吊り革に手を掛け外を眺めていた。
動き始めて間なしに、「どうぞ」と声を掛けられる。
席を立ちあがった若者は、一人で座っていた高校生で、
こちらとしては、初めての年寄り扱いに、一瞬「どうしよう」と思いが宙を舞う。
よく見れば中背の彼は、悪そうでも賢そうでもない普通の学生服姿で、
どうも意を決して立ち上がったようにも見えた。
こう言う時は、好意を無にしてはならないと話しに聞いていたり、
荷物を持たない身軽なこの時、その一瞬の間があった。でも、
「悪いね、ありがとう」と気分よく座る。
大きいカバンと、ラケットが3本は入るほどのPrinceの大きいバッグを掛けていた彼は、
三つ目の玉造で降りていった。
若い高校生から見て、どれだけの年寄りに見えてるんだろう。
そんな心算など何もなかったけれど、若者の前に立ったことが招いたことなのか。
初めての経験と不意に向かい合い戸惑った。と合わせて、
その後さわやかな気分で座っていた。