すまし梟
面白い本に最近行き当たっていなかった。
そんな中、これはと言う本に久しぶりに合った。
本好きの方から、今年頂いた残暑見舞いの中で推薦されていた、「大地の咆哮」である。
この本は、中国、台湾の近代史を学ぶのに最高の本である。
著者は、元上海総領事の杉本信行氏。2004年春の領事館員機密漏洩自殺事件の上司である。
我々の年代は、学校の歴史教育で近代史を殆どと言っていい程学んでいないように思い、
特に中国、台湾、韓国等については何も教えられていないに等しい。
最高の本と言うわけは、著者の経歴にある。
昭和24年生まれ、昭和48('73)年京大法卒、同年外務省入省、74年から中国語研修2期生で北京に入るが、
本人の中国コース「チャイナスクール」入りは、入省間なしから決められていたらしい。
72年の日中国交正常化、78年の小平の政策転換、改革・開放政策開始等の年代から現在までの間、
文革後の長い混乱、79年JICAの管轄部門で対中ODA・円借款をスタート、83年格別親日派の胡耀邦来日、
85年同氏失墜、89年の天安門事件、92年の法輪功事件等々を自ら体験してきた。
日中間の戦後処理、尖閣諸島領土問題、靖国問題、中央政府と地方政府の関係、水不足問題、台湾問題等、
中国をどう認識すべきかを考えるとき、この本は全く適切な本である。
氏は04年から末期がんで現在闘病中であるが、その間06年5月にかけてこの本は執筆されている。
一読に値するドラマティックな本である。
ところで、図書館で8月に予約、8人待ちであった。手にできたのは10月中頃である。
一人2週間貸し出しとして、これだけの本が2冊しか購入されていないと推測される。
50万市民を要する町の図書館として、これでは余りに寂しいことのように思う。