②韓国、中国の「抗日行事参加」日米との溝を深めて大失敗
勝又壽良の経済時評
週刊東洋経済元編集長の勝又壽良
2015-09-08 03:47:45
韓国、中国の「抗日行事参加」日米との溝を深めて大失敗
中国の本音を見誤るな
習氏の野望が明らかに
戦後70年、中国は日本のファシズムを打ち破った記念と称して、大々的な軍事パレードまでやって見せた。「中国の実力は70年前と違うんだ」。
それを世界に向けて言いたかったのであろう。
21世紀の平和希求の時代にあって、ミサイルや戦車、戦闘機を連ねた軍事パレードにどれだけの意味があるのか。
「大言壮語」(ほら吹き)を生き甲斐にする中国共産党にとっては、死活的な役割を担っているに違いない。
科学技術がダメだから、軍事力で存在感をアッピールしたい。哀しいまでの「非文明的ショウ」である。
韓国の朴大統領が、この前世紀的な遺物の行事に参加した。
西側の自由諸国の首脳はすべて欠席したなかでの出席である。
韓国の「二股外交」をはしなくも露呈したもの。
一体、韓国は中国の「抗日行事」の狙いをどこまで真面目に検討したのか。
多分、日本への嫌がらせと中国へのへつらいが理由と見られる。
同盟国の米国からは、婉曲的ながら欠席するように言われてきた。
それを敢然と蹴飛ばして出席したのだ。
あたかも、「独立国の外交はかくあるべし」と言った高揚した気持ちでいるのだろう。だが、安全保障は米国依存である。
朝鮮戦争で韓国を侵略した当事国の一つは中国である。
その侵略国家の中国が主催する軍事パレードに参加した。
感情的にも論理的にも、説明のつかない行動である。
今回の軍事パレードの本当の狙いは、日本を標的にしたものだ。
最近、中国政府は、特定国を想定した軍事パレードでないと弁解している。
それは真っ赤な嘘である。次の記事が、それを明快に証明している。
中国の本音を見誤るな
中国共産党機関紙『人民日報』のウィーチャット(ソーシャルアプリ)オフィシャルアカウントで今年1月27日、「なぜ今年閲兵式を開催するのか」と題する記事を掲載。
本音をこう漏らしている。『大紀元』(1月27日付)が報じた。
① 「閲兵式を開催する目的の一つは、『日本を震え上がらせるためだ』と日本を強く意識した文言が並んでいる。
『米のアジア回帰の戦略に後押しされ、日本は釣魚島(尖閣諸島の中国名)を国有化し、歴史を否定するなど再び軍国主義に走る兆しを見せている』と日本を糾弾。
さらに、『猖獗(しょうけつ:悪い事の勢いが盛んになること)する日本に、
アメリカは黙認と支持の態度を見せている』、
『アメリカの支持を受け、日本は集団的自衛権を解禁し、
このままだと改憲して国家の正常化を図るに違いない』とアメリカに対する敵意もあらわにした。
また、『中国の戦後秩序が中国の核心的利益で、それを変えようとする者は中国の敵になり、中国からの強烈な反撃を受けなければならない』と日本批判をヒートアップさせている」。
今年1月時点では、中国政府も経済がここまで悪化して追い込まれるとの予想はなかった。
最近は、逆転して苦境に立たされている。
日本へも正式招待状を出すなどカムフラージュしている。
中国政府の本音は、日本を懲らしめるという軍備の誇示にあった。
日本が、スルッと体をかわして欠席したから、「拍子抜け」し怒りに身を任せた言動をしている。
天皇の戦争責任追及発言がそれだ。
日本は、自らに刃を向けた軍事パレードを「能天気」に見るほど愚かでない。
断って当然である。
閲兵式を開催する目的の一つは、「日本を震え上がらせるためだ」と日本を強く意識した文言が並んでいるという。
清国の外務大臣、李鴻章もこれと同じ感覚であった。
英国から強力最新鋭艦4隻を購入して、日本へ軍事的な圧力をかけてきたのだ。
朝鮮半島の政治情勢を清国支配の下に有利に進める狙いである。
日本は、これに危機感を持って軍備増強に入った、という背景がある。
当時の日本は、中国に軍事的脅威を感じていた。
現在も同様な状況になっている。
歴史は繰り返すというが、戦争だけは避けなければならない。
中国の挑発に乗ってはならない。
中国は、自国の権益を守るためには、戦争さえ辞さない。
まさに「武断外交」を前面に出している。
その点では、極めて軍事的に危険な国家と成り下がっている。
「平和的台頭論」とは真逆の国家になっている。
つまり、「中国の戦後秩序が中国の核心的利益で、それを変えようとする者は中国の敵になり、中国からの強烈な反撃を受けなければならない」と啖呵を切っているのだ。
こういう危険な相手と対応するには、強固な日米同盟を基盤にして、周辺国が同一歩調を取ることだろう。
韓国は、日米韓の三国関係を裏切って「抜け駆け戦略」を取った。
今回の「抗日軍事パレード」に出席するとは、こういう意味である。
ところが、韓国メディアは、その認識がゼロであるから驚くのだ。
8月中旬、北朝鮮が韓国に仕掛けてきた軍事的な挑発行動は、北朝鮮の「謝罪」という形で収束した。
その裏には。中国による北朝鮮への圧力が功を奏したと見ている。
ここから、韓国メディアは急速に中国シフトの論調に変わった。
韓国メディアは、はっきり言って目先のことで簡単に判断の軸を変えてしまのだ。長期的な視点に欠けるのである。