① 韓国、「企業格付け」投機的水準へ引き下げ「大倒産時代」来る
勝又壽良の経済時評
週刊東洋経済元編集長の勝又壽良
2015-09-24 10:19
S&Pが大ナタへ
暗い現代自の未来
朴大統領は、天安門で満足げに中国軍事パレードを観閲していた裏で、韓国経済に異変が起こっている。
韓国企業が、最大の倒産危機を迎えているからだ。
「経済音痴」の大統領には、何の痛痒も感じないかも知れないが、韓国国民の生活に直結する危機の到来である。
韓国ではこれまで、自国経済の不調の理由を「円安=ウォン高」のせいにしてきた。
だが、問題はそんなところにあるのでない。
積年の放漫経営のツケが回っている。
ウォンの通貨危機が噂される中で、文字通り「絶体絶命」の危機に直面した。
もはや、「反日」などと言っていられない局面にある。
この「膿」を嗅ぎつけた韓国の証券市場は低空飛行を続けている。
中国発の世界株価暴落の影響だけでなく、韓国経済そのものが「低評価」されている結果だ。
「韓国株式市場は『低評価』され、極端な水準まで追いやられた。
ユアンタ証券の分析によれば、韓国の株式市場の株価純資産倍率(PBR)は0.83倍で、世界46カ国中44位である。
ギリシャ(0.50倍)とロシア(0.37倍)だけが韓国を下回っているだけだ。
株価収益比率(PER)基準の順位も8.93倍でロシア(4.14倍)・トルコ(8.46倍)・ギリシャ(8.58倍)をかろうじて上回った43位に過ぎない」(『韓国経済新聞』(9月9日付)。
韓国の株価は、ロシアやギリシャを辛うじて上回る程度の低評価である。
世界46カ国中、株価純資産倍率が44位、株価収益率は43位という惨憺たる結果であるからだ。
これを見ても分かるとおり、韓国経済が極端な不振状態に落ちこんでいる。
朴大統領は、こうした危機を放置して具体策を講じないのは、経済問題にもともと関心が薄い結果であろう。
それよりも派手な外交問題で立ち回る。
それが、国民の支持率を上げられるという戦略だろうか。
S&Pが大ナタへ
『韓国経済新聞』(9月11日付)は、次のよう伝えた。
① 「国際信用格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は9月10日、
韓国企業の信用格付け平均値が、先月末に「BBB-」(10番目)に近い水準まで下落したと発表した。
これは、2009年に『BBB+』(投資格付け10段階中の8番目)だったグローバル信用格付けがある38社の大企業を評価した結果だ。
5年間で投機的格付け(BB+以下)の入り口まで2段階も下がった。
S&P側は、『主要企業の売り上げが減っている現象を深刻に見守っている』として、
『これまで懸念していた中国リスクが現実化する中、
生産性向上のための労働生産性の改善は足踏み状態なので、
韓国企業が四面楚歌の危機に陥っている』と評価した。
S&Pによれば、国内資産総額の上位150社の企業の売り上げは、昨年から減少傾向に転じた」。
S&Pが、衝撃的な格付け結果を発表した。
これは、2009年に「BBB+」(投資格付け10段階中の8番目)だったグローバル信用格付けを持つ大企業38社が、8月末に「BBB-」(10番目)に近い水準まで下落したもの。
韓国大企業38社の格付けが、5年間でこれだけ下がり、
今や投機的格付け(BB+以下)の入り口まで2段階も下がった理由は何かだ。
これは、私がこのブログで繰り返し指摘してきたように、過去の「円高=ウォン安」で惰眠を貪ってきたことの反映であろう。
合理化努力を怠ったのだ。
日本企業は、1971年以来の恒常的な円高に直面してきた。
これが、韓国企業に「ウォン安」をもたらし、「棚からボタ餅」の利益をもたらした。
このほか、日本企業の新製品を分解して、適当に新機能を付加して製造してきた安易さも見逃せない。
サムスンや現代自は、日本に研究所を持った狙いは、日本の新製品をいち早く模倣することにあった。
韓国企業の「小判鮫」商法が、ついに破局を迎えた。
自らが、「イノベーション」の努力をしないことが、現在の「危機」に繋がったと言える。
自動車に例を取れば、世界の次世代カーは「全自動運転車」とされている。
この面で、最先端を走るのが日本車である。
韓国では、「全自動運転車」に不可欠な「システム半導体」の研究実績が乏しく、日本に大きく出遅れている。
「全自動運転車」開発で世界の先端を行くグーグルは、日本に研究所を持っている。製造面では、日本のカー・メーカーと協力したい意向を示した。
グーグル自体は、製造面にまで進出する意図はないのだ。
多分、日本のカー・メーカーと製造面で合弁形式を取るのだろう。
このように、現代自は次世代カーで日本車に引き離されている。
お先真っ暗といっても良いのだ。
② 「営業利益率(中間値)は、2010年の7.4%から昨年は3.9%に低下した。
日本企業の売り上げが増え続けて6%前後の営業利益率を上げていることと比較すると、競争力がかなり弱くなったという評価だ。
韓国企業の負債が増えている。
資産総額上位150社の企業(サムスン電子と現代自動車を除く)の純借入金は、昨年末現在で356兆ウォンに増えている。
2010年(249兆ウォン)に比べ43%も急増した規模だ。
営業実績の悪化で足りない資金を借金で充て続けた結果だ。
純借入金は全体借入金から現金性資産を引いた数値で、実質的な財務負担を示す」
韓国企業の営業利益率は、2010年の7.4%から14年には3.9%へ低下した。
日本企業は6%前後へと上昇している。
日本は、今年から始まった「コーポレート・ガバナンス」で、自己資本利益率の上昇が大きな課題になっている。
高度経済成長時代の日本企業は、利益よりもマーケットシェア争いをした。
技術開発を競い新製品発売で鎬を削るという前向きの競争を演じた。
日本企業では「過剰開発」の弊害が、利益率の低い経営になれさせてしまい、不況抵抗力を失わせた。
韓国企業は、技術開発を伴わない上辺だけの競争を行ってきた。
日本企業が新技術のガードを固くして、技術漏洩に神経を払うようになってからは、急速に競争力を失っている。
その上、円安=ウォン高に転じたので、韓国企業は「八方塞がり」状態に追い込まれている。
これまで、日本から有形無形の利益を受けてきたが、それを正確に認識せず、日韓併合時代に被ったマイナス面だけを強調している。
日本と政治的な対立を繰り返してきた。
これが、韓国経済に大きな損失を招いている。現在、韓国企業が苦境を招いた理由の一つであろう。
韓国の人口は5100万人である。
人口規模から言えば「小国」である。
「小国」の韓国が、急速な経済成長を遂げた後、
現在のように「スランプ」に陥った背景には、
次のような「小国」特有の事情がある。
「小国」は、経済的な後発国としての利益(技術と資本)を享受できる。
これを享受し尽くした後、「小国」ゆえに労働力不足になる段階も早く、人件費アップを招いた。
この結果、技術と資本が韓国よりも後発国へと流出していく運命にある。
韓国国内の空洞化現象の進行である。
要約すれば、韓国は日本をバックにして短期間に「小国」ゆえのメリットを発揮した。
その後は、「小国」のもたらすデメリットが全面化している。
この現実を認識すれば、韓国産業の構築をどうするかが問われる。
もはや、従来方式での製造業中心の産業構造を模索する無益を知るべきであろう。
サービス化経済への転換が必要である。
かつては、
アジアの「金融ハブ化構想」もあったが、「イノベーション」能力で追いつかずに破綻した。