韓国、「円安恐怖症」過去の教訓生かさず狼狽「慢性的」内需不足
2015-06
勝又壽良の経済時評
週刊東洋経済元編集長の勝又壽良
円安は安倍首相の計略だ
FTAで中国に騙される?
「植民地根性」と言ったら、また大変なお叱りを受けるだろう。
韓国は、いつもどこかの国に頼っていたい。
そういう甘えが見られる。自律心が足りないのだ。
経済面で見ると、円安局面になって途端に大慌てである。
「円安は近隣窮乏化政策である。
安倍政権の韓国いじめである」。
こういった議論が憶面もなく飛び出してくるお国柄である。
要するに、甘えが充満している。
日本は1971年以降から、一貫した「円高局面」にあった。
韓国はそのお陰で、「ウォン安」が当然という慢性的な甘えが続いてきた。
少しでも円高に振れると大騒ぎする。
韓国の騒ぎ方は、こんな調子であった。
今回の円安は2012年秋から始まっている。
最近は1ドル=120円台前半に定着しており、ウォン高が急速に進んでいる。
100円=890ウォンという相場が現れている。
韓国の輸出を脅かすと必死の形相である。
日本では絶えず円高に直面してきた。
1980年代後半から、円高が日本経済を潤すように、内需を重視する政策が取られてきた。
韓国では、内需重視というかけ声はかけても実行されず、様子見で終わってきた。
そうこうしている間に、「ウォン安相場」へ局面転換する繰り返しである。
今また、内需充実が叫ばれているが、可処分所得を増やす政策よりも、家計が借入金を増やす「逆立ち」した政策を行っている。
どこかがおかしいのだ。抜本的な対策を打たない「その日暮らし」である。
今日の韓国テーマは、「その日暮らし」の政策がいかに韓国の経済を弱体化させているか。
それについて、二、三の実例を挙げて「反省」を迫りたい。
日本から見ると、よくもこんな政策が許されているものだ、と驚かされる。
円安は安倍首相の計略だ
『朝鮮日報』(5月26日付け)は、次のように報じた。
① 「大韓商工会議所は、日本と競合する韓国の輸出企業約300社を対象にした調査の結果を発表した。
これによると、円安が耐え得る水準を超えたとの回答が多数を占めた。
調査対象企業のうち55.7%が円安により輸出に被害を受けていると回答した。
回答した企業が耐えられるウォンの対円レートは平均100円=924ウォンと集計されたが、
先週末のレートは100円=903ウォンまでウォン高が進んでいる。
競合する日本製品の価格が10%引き下げられた場合、
平均で輸出量が11.7%減少すると集計された。
特に食品・飲料で平均18.7%と最も大きかった。
ある乳製品輸出企業は、『米国で日本のヤクルトとの競争で押されている上、日本でも競争が厳しくなり、輸出量は3分の1になった』と厳しい現状を説明した」。
この記事のなかに、「円安で被害を受けた」という表現がある。
先ず、こういった認識がおかしいのだ。
グローバル経済では為替相場は変動して止まないものである。
韓国企業には、その認識が欠如している。
「被害」という言葉が出てくること自体、日本への甘えが感じられる。
日本はいつも「円高」であるべきだ。そういう暗黙の前提が滲んでいる。
日本企業は、度重なる円高に追われるように合理化でコストダウンを続けてきた。
それも自ずと限界がある。
こうなると、韓国では「日本企業の競争力が低下した。
日本経済は衰退する」。こう言って囃し立て、悦に入っていたのである。
韓国企業は、日本企業の置かれている状況への理解はゼロである。
「憎い日本企業が息切れして、いい気味である」。
こんな感情論に支配されてきたから、円安対策など何らしてこなかったのだ。
円高への甘えと慢心が、見事に韓国企業へ逆襲している。
今度は、日本側が、「いい気味だ」とお返ししたいところ。だが、それはぐっと飲み込んでおこう。
② 「企業の70%は、円安リスクに対して対策を用意していないことも分かった。
大韓商工会議所の関係者は、
『アベノミクス初期から懸念されていた近隣窮乏化政策(自国の経済状態を改善するため他国の経済を悪化させるような政策を取ること)が現実化している』と指摘。
その上で、『円高時代の日本企業のようにウォン高時代を切り抜けるため、事業構造の効率化や製品の付加価値引き上げにより競争力を押し上げるべき』と指摘した」。
驚くなかれ、韓国の輸出企業の70%は、円安リスク対策をしていなかった、というのだ。
前のパラグラフで指摘したように「円高への甘えと慢心」がそうさせたのであろう。
換言すれば、韓国企業は傾向的な円高=ウォン安の相場に救われてきたのである。
これでは、為替相場のヘッジをするはずもない。
合理化努力によるコスト削減もするはずがない。
考えてみれば、こうした韓国企業に、日本企業はみすみす市場を奪われてきたのだ。
このように考えると、韓国企業が円安=ウォン高局面において為す術はないわけである。
大韓商工会議所(注:日本商工会議所に当たる)の関係者は、
円安を「近隣窮乏化政策」と認識している。
これは、意図的に為替相場の切り下げを行い、自国輸出を増やす行為である。
アベノミクスは、為替相場には何ら関与していない。
ただ、マクロ経済政策で貨幣数量の増加を促進させるという「異次元金融緩和」政策を取っている。
これは、これまで米国が採用した政策であり、日本はその余波を受けて「異常円高」に直面した。
だが、日本からは「近隣窮乏化政策」などと苦情を言い立てることはなかった。
韓国の日本への甘えがいかに大きいかを如実に現して興味深いのだ。
日本には「保護して貰うのが当然」。そういった植民地意識が続いているとしか言いようがない。
今頃になって、韓国は「円高時代の日本企業のように、
ウォン高時代を切り抜けるため、事業構造の効率化や製品の付加価値引き上げる」と対策を言い始めている。
日本は1971年から、こうした状況に取り囲まれてきた。
韓国が直面する現在の経済危機は、これまでの生温い「温室経営」がもたらした災いであることを証明する。
この過程で、日本企業がどれだけ苦しんできたか。
韓国企業は追体験するはずだ。
これによって、軽々に「反日」などと言い募ることも少なくなろう。
中韓のFTA(自由貿易協定)も、韓国政府の思慮の足りなさを示している例だ。
昨年11月、徹夜までして協定文をつくり「自画自賛」したもの。
それが一転、協定内容が明らかになると共に、「熱病」は一気に引いてしまった。
韓国はそれまで、日本を出し抜いて、先に中国とFTAを結んで意気揚々としていた。
中国は、日韓の政治的対立を利用したもので、あたかも韓国が日本より有利なFTAであるかのごとき幻想を与えたのだ。
まんまと、中国にしてやられたというのが正しい表現であろう。
中国の外交巧者ぶりが、遺憾なく発揮された場面である。
私は中韓FTAについて、このブログで何回か取り上げている。
当初から、韓国が中国によって手玉に取られたFTAである、と。
中国は実損を受けないように、主要工業品の関税引き下げ時期を大幅にずらせている。
この間に競争力をつけて、韓国製品と互角の競争を挑む戦略であった。
その最適な例が自動車である。
韓国は中国の目くらましにあったと言うほかない。
韓国と日本を天秤にかけるような陽動作戦を採ったのだ。