TPP:朴槿恵政権、日本の参加に危機感
2013/09/09
パク・スチャン記者
朝鮮日報日本語版
韓国政府が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に参加する方向性を固めた背景には、米中を中心に貿易秩序が再編される世界経済の潮流を踏まえた戦略的判断が根底にある。
アジアを舞台に米中が安全保障、経済問題で衝突する状況で、中国とは韓中自由貿易協定(FTA)を結び、日米とはTPPを結ぶことでバランスを取る狙いがあるとの分析も聞かれる。
■日本のTPP参加でムード一変
李明博(イ・ミョンバク)政権もTPP参加を検討したが、当時は「その時期ではない」との意見が大勢だった。
韓国政府関係者は「韓米FTAを結んだ状態で、さらに米国主導のTPPに参加しても実益がないとの判断が優勢だった」と説明した。
TPP参加国には農産物輸出国が多く、農産物市場の追加開放に国内から大きな反発が出るとの判断も働いた。
米国主導のTPPについて、中国が拒否感を示してきたことも一因だった。
韓国政府は昨年末、TPPに対応し、東南アジア諸国連合(ASEAN)が主導して中国が支援する域内包括的経済パートナーシップ協定(RCEP)に参加することを決めた。
しかし、朴槿恵(パク・クンヘ)政権発足後、経済・通商関係官庁のムードが微妙に変化した。
大きな変化は今年3月、日本がTPP参加を公式に表明してから起きた。
韓国貿易協会のパク・チョンイル通商研究室長は「日本がTPPに加入することで、FTA競争で一気に韓国に追い付き、さらにTPP参加国のうち、韓国とFTAを結んでいないメキシコ、カナダなど4カ国との間で、日本が韓国よりも競争力を高めるとの懸念が生じた」と述べた。
日米がTPPを通じ、技術標準などさまざまな国際規範をつくっていく可能性も否定できない。
TPPを「中国包囲網」と認識してきた中国が自国の参加可能性に含みを残していることも韓国政府の判断の変化に影響を与えた。
中国商務省報道官は今年5月30日、中国がTPPに参加する可能性について「参加によるメリットとデメリットや可能性を分析している」と述べた。翌月には中国外務省も「TPP交渉に関心を持っている」と表明した。
韓国政府高官は「タイミングの問題だけで、TPPに参加すべきだという原則は既に固まった状況だ」と述べた。貿易協会なども「最大限早く参加すべきだ」との立場だ。
■韓中日FTA、RCEPなど骨抜きに
韓国がTPP参加を公式宣言した場合、東アジア経済だけでなく、政治・外交面で波紋が予想される。
まず韓国がオバマ政権の「東アジア重視政策」の経済バージョンともいえるTPPに参加することで、中国との関係が悪化する懸念だ。
対外経済政策研究院のキム・ヨングィ地域通商チーム長は「最近中国はTPPに対し態度変化を見せているものの、韓国がTPPに参加すれば、中国主導の東アジア経済統合協議が困難になるとの懸念を抱いている。
TPP参加に先立ち、中国と具体的協議を行う必要がある」と指摘した。
韓国のTPP参加で孤立する危機を感じた中国が韓中FTA交渉を急ぐとの見方もある。現在関係が冷え込んでいる日本とは、TPPをきっかけに協力が強化されるとの見方もある。
韓中日FTAやRCEPなど韓国が参加する地域レベルの多国間FTAは、勢いを失うとの予想が聞かれる。
韓中日FTAは各国間で意見の隔たりが大きく、TPP参加を表明した日本が積極的に韓中日FTAを目指す可能性は低い。
米国主導のTPPと異なり、RCEPは中心国がなく、参加国の相当数がTPPにも加わっているか、参加を検討している状態だ。
韓国がTPPに参加するためには、米国だけでなく、既に交渉に参加している国々の同意が必要だ。
米政府は通商代表部(USTR)の関係者を通じ、韓国もTPPに参加可能だとの立場を明らかにしているが、韓国政府関係者によると、公式な外交ルートを通じて韓国にTPP参加を求めてきたことはないという。
貿易協会のパク通商研究室長は「現在TPP交渉では米国と東南アジア各国に意見の隔たりがあるため、米国がFTA分野で経験のある韓国をパートナーとして迎え、各国に対する説得に乗り出す可能性もある」と指摘した。