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韓国の外貨準備、張り子の虎の注意信号 日経 2013/9/1

2013年09月02日 16時34分31秒 | Weblog

韓国の外貨準備、張り子の虎の注意信号

編集委員・滝田洋一
日経
2013/9/1

新興国が外貨資金の流出に見舞われている。ブラジル、インドネシア、直近ではインドと、次々と危ない国が取りざたされている。
市場では経常赤字や外貨準備の水準にばかり注目が集まる。だが外貨準備を語るなら、量ばかりでなく質にも目を凝らす必要があろう。

国際通貨基金が8月初めに発表した外貨準備の基準値をめぐる分析が、月末になって韓国内で騒ぎの種になっている。

IMFの物差しによれば、韓国の水準はインドやインドネシアに劣るというのだ。


実はそんなことを気にする前に、かの国が胸に手を当てるべき問題がある。

外貨準備の中身だ。外貨の資金繰りに不安があるなら、大半を流動性部分で運用していると思いきや、さにあらず。

韓国銀行が今年3月に発表した「2012年版年次報告」によれば、外貨準備は3つの部分に分けられる。

米政府短期証券などいつでも換金できる「流動性部分」、運用収益を狙い中長期債などで保有している「投資部分」、政府系ファンド(SWF)などに運用を任せている「外部管理部分」――である。

流動性部分は外貨準備全体の4%に満たない。

80%近くを占めるのは投資部分なのである。200億ドルの運用規模を持つ韓国投資公社などに運用を任せている外部管理部分も着実に拡大し、今や16%台になっている。
外貨準備を中長期債で運用しているといっても、日本の感覚からすれば、米国の中期国債(ノート)や長期国債(ボンド)だろうと思うかもしれない。

確かにそれらもあるが、外貨準備に占める国債の比率は4割に満たない。
政府機関債を2割強、社債と資産担保証券を合わせて約3割も保有している。

株式の保有も6%台に乗せている。政府機関債には、ファニーメイ、フレディマックなど米住宅金融公社の債券が少なくあるまい。

ABSがリーマン・ショックで大きな痛手を被ったことも記憶に新しい。

社債や株式は民間の信用リスクを肩代わりしている。社債のなかには、韓国の民間銀行が発行した債券(キムチ・ボンド)を外貨準備で購入し、資金繰りを助けている分も含まれていよう。

こうした運用構成では、国全体が資金繰りに窮する事態に直面しても、保有資産を売るに売れまい。

韓国経済が海外からの短期資金に頼る体質は変わらない。国際金融危機を迎えるたびに、韓国の外貨事情はひっ迫してきた。

08年のリーマン・ショックや11年の欧州金融危機に際して日本の当局に駆け込み、日韓の通貨スワップ(融通)が拡大されてきたのだが、
それも今は昔。日韓の政治的な緊張が高まり、期限の到来したスワップは更新されず消滅している。


手元不如意な韓国が駆け込んだのは中国の懐だ。中韓は3600億元規模のスワップを結んでいる。

中国にすり寄るかのように、韓国の外貨準備で中国の国債や人民銀行(中央銀行)債を最大200億元を3億ドル相当の投資限度内で購入することにした。

中韓スワップも一皮むけば、韓国にとって肝心のドルの資金繰りには役立たない。スワップがと韓国ウォンの融通だからだ。

人民元は純然たるハードカレンシー(交換可能通貨)ではない。元を中国から融通してもらったところで、いざという際にドルが手に入るはずもない。


そうした事態は韓国のためにもなるまいと、日本の通貨当局者は気をもんでいる。

でも今の韓国内では、日本と冷静な話し合いの場を設けようなどと言い出せるべくもない。

幸い韓国は経常収支が黒字なので、国際金融市場で標的になる事態は免れている。それにしても韓国の新興国危機の波及には、今から身構えておくべきだろう。