平成太平記

日常の出来事を書く

いよいよ鮮明化する“強い韓国経済”崩壊の足音

2013年03月21日 10時15分57秒 | Weblog

いよいよ鮮明化する“強い韓国経済”崩壊の足音
2013年3月19日
真壁昭夫[信州大学教授]
グローバル市場の雄を脅かす3つのリスクと視界不良

「韓国経済悲観論」に信憑性はあるかウォン高だけに止まらない3つの不安
最近、韓国経済に対する悲観的な見方が強くなっている。その背景には、足もとのウォン高による輸出の伸び悩みもあり、経済成長率が鈍化していることがある。

また、朴新政権の閣僚人事の遅れなど、政治面でも不透明な部分が増えている。そうした状況を反映して、国民の間にも政府の経済政策に対して不満が蓄積しており、従来の韓国の強さが徐々に後退している。

マクロベースの韓国経済を概括すると、主に3つの特徴を上げることができる。

1つは貿易依存度が高いことだ。資源に恵まれず、人口が相対的に少ない韓国は、どうしても貿易に頼る割合が高くなる。貿易依存度が高いと、海外経済の変動によって国内の経済活動が大きく影響を受けることになり、景気の変動の幅が大きくなり易い。

2つ目は、対外債務の割合が高いことだ。国内の資本の蓄積が相対的に低いため、海外からの投資資金に頼らざるを得ない。一般的に海外の投資資金は、経済状況が良好なときには流入額が増えるものの、逆に経済状況が悪化すると、すぐに海外に逃避する可能性が高い。そのため、どうしても経済活動のアップダウンが大きくなる。

そして3つ目は、経済に占める財閥系企業の割合が高いことだ。韓国では、伝統的に財閥が強い力を持っていた名残りがあり、政府もウォン安によって財閥系の輸出企業の業績改善を後押しする経済政策を採ってきた。


ところが、世界市場の競争の激化やウォン高の影響もあり、主要輸出企業の業績が伸び悩んでいる。加えて、政府による財閥系企業優先策に対する国民の不満も溜まっており、政情が不安定化することも懸念される。

政治・経済の両面において“強い韓国”のイメージが崩れつつあることは間違いない。各々のポイントについて、さらに詳しく内情を見て行こう

高過ぎる貿易依存度に逃げる投資資金韓国経済が寄って立つ「不安定な基盤」

まず貿易依存度とは、その国の経済がどれだけ貿易に頼っているかを示した割合だ。具体的には、輸出と輸入の金額を足してから、GDPで割った数値で表す。この貿易依存度が、韓国は100%を越えている。

わが国の貿易依存度が30%弱、中国でも50%程度であることを考えると、韓国の貿易依存度がいかに高いかがわかる。

わが国同様に資源に恵まれない韓国は、原材料やエネルギー資源を輸入せざるを得ない。また、人口が約5000万人程度であることを考えると、どうしても世界市場を目指して輸出攻勢をかけることが必要になる。

その意味では、貿易依存度が高いのは仕方のないことだ。
ただ、輸出依存度が高いと、海外要因によって国内景気が大きく影響されることが避けられない。

仮に相手国が禁輸措置を採れば、原材料の輸入はままならない。加えて、輸出対象国の経済が減速する局面では、輸出が伸び悩む可能性が高くなるため、貿易依存度が高いとその分だけ国内経済の振れ幅が大きくなる。

また、国内の資本の蓄積が相対的に小さいため、どうしても海外からの投資資金に頼らざるを得ない。

海外からの投資資金を確保するためには、企業の収益力強化が必要になる。収益力を上げることで、韓国企業が海外の投資家にとって魅力のある投資先になることが必須の条件になるからだ。

高い収益率を維持するためには、従業員の賃金はなるべく低く抑える方が有利になる。そのため、賃金水準は抑え気味になる可能性が高い。

海外の投資資金は気まぐれで、高い収益が見込めると流入資金が増えるものの、相応の収益が見込めないと見れば、一斉に海外に逃げ出してしまう。

実際、1997年のアジア通貨危機時や2008年のリーマンショック時は、多額の投資資金が韓国から海外に逃避し、韓国の経済状況を一段と悪化させたことは記憶に新しい。それだけ、景気の振れ幅が拡大されることになる。


財閥系に傾斜した政府の経済政策いよいよ増幅する韓国国民の不満

もう1つの韓国政府の明確な姿勢は、財閥系の有力企業を中心とする産業政策だ。韓国政府は、サムスンやLGなどの有力企業の輸出を振興させることで、海外から収益を獲得することを目指した。それによって、韓国経済全体のパイを拡大することを狙ったのである。

この政策は、相応の成果を上げることができた。IT関連や造船、鉄鋼などの分野では、一時期韓国企業はわが国企業を凌駕するまで事業を拡大することができた。そうして得られたパイを分配することで、多くの国民にメリットをもたらすことが可能になった。

ただ、そうした財閥系企業を優先する方針を採った結果、多くの分野で企業の寡占化が進んだ。10大財閥系企業の売り上げが、韓国のGDPの約7割を占めるような状態になってしまった。

有力企業の寡占状態が進むと、企業間の価格競争は低下し、製品やサービスの価格が相対的に高くなり易い。一部には、国内の販売価格が、輸出価格よりもかなり高いというケースもあるようだ。

また、政府がウォン安政策を採ったことは、輸出企業には大きな追い風となるが、一般庶民にとっては輸入物価の上昇というマイナスの要素をもたらすことになる。

海外からの投資資金を誘引するために賃金水準が相対的に低く維持されているなか、輸入品の価格が上がることは、一般家計にとって生活を苦しくする要因になる。

そうした経済状況に加え、北朝鮮との臨戦態勢というストレスや、わが国同様に加速する少子高齢化などの問題も抱えている。少子高齢化が進むと、社会保障制度を維持することが困難になる。

社会で次第に不透明感が漂い、将来に対する明確な希望を持つことが難しくなるだろう。それは、国民の政府に対する不満を増幅することになるはずだ。
技術力を磨いてライバルに打ち勝てるか?解決策を模索する朴新政権が抱える不安

足もとの韓国経済を厳しい状況に追い込むもう1つの要素がある。


それは、中国を中心とする新興国の経済成長、特に工業化の進展だ。

中国は、安価で豊富な労働力を武器に、世界市場へと着々と進出した。最初は雑貨や衣料などの分野が中心であったが、工業化の進捗に合わせて、次第にIT関連機器など技術集約性の高い分野へと進出した。

韓国企業は、安価な労働力を基礎として強い競争力を持っていたのだが、中国の賃金水準はさらに低く、価格競争力を維持することが難しくなった。結果として、日本企業を追い抜いた造船業などで、すでに中国企業の後塵を拝するまでに追い込まれている。

韓国企業は、日本企業が得意とする高価格帯のハイエンドの製品では、なかなか日本企業のブランド力に対抗することができず、一方で価格帯の低い分野では、中国などの新興国の製品群に追い上げられる格好になっている。

そうした状況を打破するためには、韓国企業が独自の技術を磨いて、ライバルがつくることのできない高付加価値の製品群を世に送り出すことが必要になる。IT関連分野におけるサムスンは、すでにアップルと並ぶ世界有数のメーカーにのし上がっており、強力なポジションを築きつつある。

しかし、そうしたケースはむしろ例外である。多くの韓国企業は、わが国などからの生産財や主要部品の輸入に依存している側面が大きく、独自の技術で高付加価値を創造できるところまでは至っていない。

問題は、そうした状況下、国民の政府に対する不満が蓄積して、政情が不安定になることが懸念されることだ。おそらく今後、社会の様々な部分で今までの歪みが顕在
化することだろう。

朴槿恵氏率いる新政権は、それらの問題に正面から取り組むと宣言しているものの、解決策を見出すことは口で言うほど容易ではない。

どこかの段階で、政治・経済が一段と不安定な状況に陥る可能性は高いと見る。それが時間をかけて起きるのであれば、相応の対応は可能だろう。しかし、短期間に起きるようだと、軋轢はかなり大きくなるかもしれない。