APAJ-Flash133: 〈永い戦争〉には〈永い平和運動〉を

2009-09-02 18:27:39 | 世界
ーー【APA‐Jフラッシュ No.133】ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〈永い戦争〉とは何かを理解し、平和活動は、労働・人権・人種・環境とくに
代替エネルギー問題に取り組む活動との連携が必要なことを理解せよ、地域の
草の根のニーズに集中し、ワシントンの派閥闘争に巻きこまれるな…etc.
一極から多極へと向かう世界における、米国の〈永い戦争〉戦略分析と、平和
運動論です。                       (M)
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〈永い戦争〉には〈永い平和運動〉を
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イラク、アフガニスタン、パキスタンおよびその周辺地域で同時進行している
武力衝突は、すべて、「危機の弧」において50年は続くとみられているペン
タゴン戦略の〈永い戦争〉に結びついている。この「危機の弧」は、石油資源
が存在し、西側がその支配下にパイプラインを建設しようと計画している土地
を横切っている。たまたまその土地はイスラム教徒の国々なのだ。〈永い戦争〉
という言葉は1990年代にジョン・アビザイド大将によって初めて用いられ
たものだが、それは現在、国防総省および「新アメリカ安全保障センター(C
NAS)」を中心とするシンクタンクの対反乱作戦専門家の今後の方針になっ
ているのである。

〈永い戦争〉には、〈永い平和運動〉が、これまでとは違う平和運動が必要に
なる。

イラク戦争反対運動の多くのベテラン活動家は、複数の戦争が続き、金融危機
や財政危機がおこり、オバマ時代が始まったことの意味がよく理解できない状
態で、いま何を考え、何をなすべきかに頭を悩ましている。このなかでとりう
る戦略のいくつかを以下に簡単に述べてみよう。

対反乱活動の起源はマレーシアとアルジェリアに遡るが、状況が特殊だったマ
レーシアを除いては、一度も成功したことががない。

対反乱作戦はアメリカ国内向けのものである。アメリカ人戦死者者を低く抑え、
ケーガンが書いているように、損害を「カメラから遮断しておく」ためのもの
だ。

イラクについては、相手政府がアメリカ軍撤退を吹聴してまわり、将来が全く
不確定な状況では、「勝利」とはとてもいえない。イラクへの兵力の「増派」
は、CNASとペトレアス大将が望んだように、イラク戦争を選挙の争点から
遠ざけておく役には立った。(彼らの言葉であって私のではない)。しかし対
反乱作戦は彼らの助けにはならない。彼らは、戦争に勝たなくても、西側に有
利な原油契約を結ばなくても、またイラク国内に信頼できる同盟者がいなくて
も、撤退するとすでに約束しているのである。

アフガニスタンでは、無人機による攻撃によって、保護されるべき市民が殺さ
れているという事実からして、対反乱作戦は矛盾をはらんでいる(だからデイ
ビッド・キルカレンは「プレデター(捕食者)」無人偵察機を使い続けること
に反対しているのだ)。2万1000人のアメリカ軍をさらに投入するという
ことは、目に見える形でアメリカ人の犠牲者を増やすことになる。アメリカ政
府と、アフガニスタン多数者の対米不信を代表するカルザイ大統領との関係は、
悪化の一途をたどっている。アメリカ軍がアフガニスタンの市民をアメリカ軍
から守れるわけがない! アメリカ対ヨーロッパ、NATO対〈上海協力機構〉
の溝は広がりはすれ、埋まることはないだろう。

パキスタンでは、アメリカ政府は、パキスタン軍を国内のタリバンと戦わせる
ことに成功したが、これはタリバンがパキスタン国内であまり支持されていな
いから可能だったという側面もある。しかもこの数週間だけで、血塗られた起
源をもつパキスタンの歴史の中でも最も多い200‐300万人という数の難
民が生み出された。南ワジリスタンではさらなる激動が予想される。一体これ
が「市民を守る」ことになるだろうか? これも対反乱作戦の抱える大きな矛
盾である。

私は出口戦略の必要に焦点を合わせたい。国防総省とCNASは「勝利」以下
では撤退はありえないとしているが、それは不可能というものだ。アメリカ進
歩センター(CAP)でさえ、アフガニスタンだけでも10~12年間は占領
を続ける必要があると提案している。犠牲者と必要経費を試算し、合計すると、
アメリカ人数千人の命と1兆ドルの財政支出ということになるだろう。そして
より多くのイスラム教徒を敵に回し、反米ナショナリズムや過激主義に走らせ
ることになる。またそうした国で、グアンタナモやバグラムのような野蛮極ま
りない強制収容所を運営することになるだろう。さらにアメリカ本国において
は、医療・教育・経済刺激などに資金を投入する夢が消し飛んでしまうだろう。
オバマ大統領は任期を通じて、戦争と占領の重荷を担うことになる。われわれ
はけっして、より安全になどならないだろう。

私の勧め:
─〈永い戦争〉について読み、研究すること。それは誇大妄想の産物ではなく、
国防総省の戦略なのである。

─〈永い戦争〉はイスラム教国に敵対するものであり、そして石油とパイプラ
インをめぐる戦争であることを理解すること。〈永い戦争〉はテロリズムを広
げる。

─人権のための連合および拷問に反対する連合との連携、とくに聖職者とのそ
れが必要なことを理解すること。

─米国内の財政支出の優先順位、特に労働と人種問題への優先支出を中心に活
動している団体との連携が必要であることを理解すること。

─代替エネルギーがなぜ平和活動にとって優先課題の一つであり、〈永い戦争〉
の前提を揺るがすものであるかを理解すること。

─アメリカ人の犠牲、増税、民間人の犠牲について、本当の数字を把握し、そ
の情報を継続的に広めること。

─マスコミに対して絶えず働きかけ、〈永い戦争〉への筋の通った批判、特に
この特殊作戦をますます秘匿しようとする動きへの批判を広く伝える必要を確
信させること。

─今後6カ月間、出口戦略を支持する132の下院票をさらに増やして戦争に
批判的な公聴会を開かせ、同時に、来年春までに、来るべき連邦議会選挙に向
けて、230票を獲得するよう準備を怠らないこと。

─大統領を個人攻撃しない。大統領は〈永い戦争〉と出口戦略策定の約束との
板挟みになっている。 そのかわり、 占領そのものを攻撃する。そしてそこに
〈永い戦争〉が大統領の重点国内政策や、大統領の地位そのものを危うくしか
ねないという議論を組み込むべきである。

─議員選挙区内で有権者の巨大な基盤を作り上げる。選挙区ごとに地域組織者
を雇い、コミュニティ組織化モデルにのっとって反戦キャンペーンを行う。あ
くまで草の根のニーズに集中することで、ワシントンの派閥闘争に巻き込まれ
ないようにする。

CNASは新しい「ベスト・アンド・ブライテスト(注)」式エリート集団だ。
ベトナム戦争時にこうしたエリート集団に何が起きたのかを思い出してほしい。

〈永い戦争〉は失敗する。なぜなら、アメリカは軍事的にも経済的にも限度を
超えて手を広げてしまったし、世界は一極から多極へと向かっているからだ。
世界は米国の〈永い戦争〉計画に加わらない。手を広げすぎたことは、国内問
題をますます悪化させ、開かれた社会に脅威を与え、やがては深刻な政治問題
へと発展するだろう。いつの時代にも帝国主義か、民主主義か、どちらかを選
ばなければならないのだ。

トム・ヘイドン
(元カリフォルニア州上院議員。60年代からの平和・人権・環境運動のリー
ダー)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

“ Best and Brightest ” はよりすぐりのエリートを集めて作ったベトナム戦争
期の大統領特別補佐官や閣僚集団。ジャーナリストのデーヴィッド・ハルバー
スタムは、この集団が、思いあがった誤った判断で、いかにアメリカをベトナ
ム戦争に引き込んでいったかを暴いた。「ベスト・アンド・ブライテスト」は
このノンフィクションの書名。
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出典: 世界反基地ネットワークMLより
翻訳協力:T. M. (APA‐J翻訳チーム)
翻訳チェック:笠原光 監修:APA‐Jデスクチーム
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3 コメント

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『原爆はなぜ落とされたのか』 (七生)
2009-09-02 19:41:43
日本人よ、何故 "Yes, we can." と言えるのだ!?

「原爆投下が終戦を早めた」という説は、
アメリカが原爆投下を正当化する為に、
今も言い張っているウソ話である。
「日本を降伏させるのに原爆投下は必要なかった」
という事実は、とっくに証明されているのだ。
それこそTBSの特番、
『"ヒロシマ"あの時、原爆投下は止められた』
でもやっていたほどの常識だ。
※(某キャスター氏のコメントは人間理解の浅薄さを証明する情けないものだったが。)
http://matodoga.blog24.fc2.com/blog-entry-195.html

「天皇の地位保全」の条項さえ出せば、
原爆を投下せずとも日本は降伏すると
米国務次官・グルーは何度も主張した。
しかし大統領トルーマンは、
ポツダム宣言の草案から
「天皇の地位保全」を認める条項を
あえて削除した。
トルーマンは原爆を投下するまで
日本を降伏させたくなかったのだ!

○莫大な費用をかけて作った原爆を、
 議会対策の為にも使わなければならなかった。
○ウラン濃縮型と、
 ルトニウム型の2種類の原爆を、
 黄色いサルの住む都市で実験使用して、
 その効果を確かめる必要があった。
○戦後の世界秩序を巡って、
 ソ連のスターリンに
 脅しをかけておく必要があった。

原爆投下は終戦を早める為に
実行されたのではない!
ルーズベルトの急死で、
たまたま大統領になってしまい、
「つぶれた田舎の雑貨屋のおやじ」と言われて
全米国民の溜息を浴びていた
ハリー・トルーマンは、
自分の強さを誇示する為に、
何が何でも虫けら同然の日本人の上に
原爆を落としたかったのだ。
トルーマンは原爆を2個落とし、
目的を達成したら、グルーの案に戻り、
「天皇の地位保全」を日本に伝えた。
結局はトルーマンの計画通りに進んだのだ。
グルーの努力は実を結ばなかった!

『原爆を投下するまで日本を降伏させるな』
(草思社)の著者、鳥居氏によれば、
ルーズベルトは、日本との戦争が長引けば
中国が内戦になる可能性が高まると考え、
ドイツを降伏させたあと、
一日も早く日本を降伏させるために、
グルーを起用した。
ルーズベルトは「天皇の地位保全」を主張する
グルーに希望を託したのだ。
ところがルーズベルトの急死、
トルーマンの大統領就任によって、
グルーの対日政策は無視される。
日本を降伏させるわけにはいかなかったからだ!
原爆を落とすために!
 
日本が主体の正しい歴史を知るには
小林よしのり『戦争論』全3巻がおすすめです。
返信する
馬鹿な小林よしのりに情報的価値は無い。 (小林よしのりは単に自称通り傲慢な馬鹿。)
2009-09-02 20:30:49
原爆投下の裏側だけはソノ通りだが、小林よしのりを持ち出したら単なる馬鹿右翼。
しかも、原爆投下の事情がどうでも、史上まだしも最も国際事情に詳しいであろう米国大統領と敵対する愚とは、何の関係も無いな。
自民党大敗で少しは馬鹿右翼も頭を冷やして、知恵をつける努力すればイイのに。
相変わらず頭に虫が涌いてる様だ。
返信する
エレメトリ! (永い戦争の理由は?)
2009-09-02 23:34:16
軍産エネルギー複合体が半永久的に血税投入を欲しているから。
金融危機を逆手に、軍産エネルギー複合体を解体すべき。
返信する

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