辻元清美の社民党離党 社民党的なものの見方の限界と愚かしさについて(その2)/東本高志(CML)

2010-08-01 18:18:07 | 社会
私は標題メールの「その1」で辻元清美氏の社民党離党劇に関して同氏の権力志向的思想の問題性
を指摘しました。しかし、その思想及び傾向は、ひとり辻元氏特有の思想というよりも、社民党という組
織全体が宿痾として長年抱えている負の体質と見るべきものでもあるように思います。同党は政治的
エスタブリッシュメントとしての現政権評価において自らの政党の理念との整合性との関わりで寛容す
ぎるところがあります。つまり、現政権の本質評価の分析が弱いということです。それは自らがそのエ
スタブリッシュメントの仲間内(連立政権与党)になることを志向する権力病思想から政党として抜け
出すことができえていないからだ、というのが私の見るところ、すなわち私の社民党評価です。

その政党としての権力病思想が革新・無党派市民からいかに忌避されるかは、「自衛隊合憲論」の党
是の変更を国会で表明した社会党・村山政権以後の社会党の解体、社民党の長期低落傾向がすで
に十二分すぎるほど証明しえていることですが、「その1」で既述したとおりいままた同党の理念、政策
と相容れないはずの「辺野古現行案」回帰という「公約違反の(沖縄県民に対する)裏切り行為」(琉球
新報社説、2010年6月1日付)に及んだ民主党連立内閣からの同党の離脱について未練を言い、ある
いは公然と異議を唱える同党重要幹部は少なくないのです。報道で確認できるだけでも又市征治副党
首、重野安正幹事長、阿部知子政審会長、近藤正道前参院議員などなど。辻元的権力志向の思想は
ひとり辻元氏特有のものというべきではなく、社民党という組織全体に及ぶ宿痾のような政治的病弊と
認定せざるをえないのです。

その宿痾ともいうべき政治的病弊にどれだけの同党国会議員がとらわれているか。そのことを一目で
眺望する意味を込めて社民党内きっての革新派リベラリストとして定評のある保坂展人前衆院議員は
この辻元的思想をどう見ているか、を一瞥してみます。同党きっての革新派リベラリストといってよい同
氏も社民党的な政治的宿痾の徒であることになんら変わりないことが以下確認できると思います。以下、
「辻元清美さんの離党表明について」という保坂展人のどこどこ日記ブログ(2010年7月27日付)をテク
ストにします。
http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/b52ee0686bdc7b9fa16f96cd08debfa8

保坂氏は「辻元清美さんの離党表明について」まず次のような理解を示します。

「『連立政権離脱』をめぐって『よくやった』『筋を通してよかった』という支持者の反応とは別に、『普天
間での意見の違いはあっても、政権内にいて協力してほしかった』『今後、野党として何をやっていくの
か』という声もあったことは、想像にかたくない。6月に彼女の選挙区で開かれた集会に私も比例区予
定候補として参加したが、5月下旬の社民党の連立政権離脱を『離脱すべし』『残るべし』との意見が
半々だった。」

「私は、候補者として選挙戦の只中にいたので、(略)街頭で『野党になった社民党はどうするのか』と
何回も聞かれた。また『民主党だけだと心もとないので、社民党が少人数でも居てくれた方がよかっ
たんだが』という意見もあった。昨年の小選挙区で11万余票を獲得した杉並区を中心として活動をし
ていたので、こうした声がかなり多く耳に入った。」

しかし、この保坂氏の認識には、普天間基地問題について「辺野古現行案」に回帰した民主党鳩山
政権(当時)の最終的政策決定が「『最低でも県外』と首相自ら公約しながら県民の心を8カ月間も
もてあそび、『辺野古現行案』に回帰するという公約違反の裏切り行為」(琉球新報社説、2010年6月
1日付)に対する憤りの視点、また批判的な視点は皆無です。同政権に対する批判的視点が身内か
らこみ上げてくる怒りとして少しでも存していたならば、どうしてこうした沖縄県民に対する非道徳行
為に及んだ民主党政権に「残るべし」という意見が半分あった、などと人ごとのように冷静客観的に
筆致することができるでしょう。というよりも、私は、演説会の会場で民主党政権に「残るべし」という
意見が参加者からあったとき、保坂氏は、「沖縄県民というわれわれの同胞を裏切った民主党政権
に残るなどという選択肢が社民党にどうしてあるでしょう」、とただちに参加者に誠意を持って反論、
あるいは説得するべきだったろうと思います。

また、保坂氏には、先の参院選の比例代表の政党得票率で沖縄県において社民党はダントツの第
1位(100人あたり22.68票の獲得。同党の全国平均の得票率は100人あたり3.84票)であったことの
意味が理解されていないように見えます。沖縄県民は「辺野古現行案」に回帰した民主党の対処方
針に反対して鳩山政権離脱を決定した社民党の筋を通した行動を評価したからこそ同党を沖縄県
でダントツの第1位に選んだのです。同党が「連立残留」の道を選んでいれば、沖縄県民の社民党
得票率第1位の評価もありえなかったでしょう。

さらに保坂氏は辻元氏の離党表明に理解を示す理由を次のように述べます。

「たしかに菅政権の『消費税』発言の迷走はひどかった。選挙中は、これを批判しないわけにはいか
なかった。ただし、選挙後に『完全野党路線』でいいのかは、もっと考える必要があった。労働者派
遣法をはじめ連立中に積み残した課題もある。もし、民主党が『新自由主義』『小泉路線』の色彩が
強いみんなの党と手を握ったら、派遣法改正が成立する可能性は皆無となる。」

保坂氏にとっては、いま民主党政権が提起している労働者派遣「改正」法案は、「労働者保護に値
する抜本改正にはなおほど遠く、法案策定の過程において、法改正を切実に望む派遣労働者の
声が十分に反映されていたのか疑問が残る」(日弁連会長声明、2010年4月14日付)法案であり、
仮に社民党が連立に残留する道を選び、民主党と組んで同法案を成立させたとしても、真の派遣
労働者保護に値しない問題性の多い悪法をさらにひとつ「成立」させたということにしかならないこ
とはまったく視野の外にあるようです。また、「『新自由主義』『小泉路線』の色彩が強いみんなの党
と手を握」る可能性がある、すなわち労働者の権利を擁護しようとしない民主党政権にとどまること
の革新政党としては自殺行為といえる非革新の行動の問題についても視野の外にあるようです。

上記は、要は社民党内きっての革新派リベラリストといわれる保坂氏においても、辻元氏の言う「政
権の外に出ると、あらゆる政策実現が遠のく(政権にいなければなにもできない)」式のスタブリッシ
ュメント志向、既存の政治体系のフレームを一歩も超えることができない思想から逃れえていないこ
とを端的に示しえているでしょう。つまりは保坂氏も多様な民意のありようを否定する2大政党制フレ
ームの虜囚になっていると評価せざるをえないのです。そうした2大政党制フレームの目を超えない
限り、保坂氏が「菅総理の「比例定数削減」への根本的疑問」(保坂展人のどこどこ日記 2010年7月
31日)をいくら言っても絵に描いたモチにしかならないでしょう(真に民主党政権の「国会議員定数削
減」の愚言に反対することはできないでしょう)。

こうした社民党内の状況下では同党は解体して総体として民主党へと合流するか、あるいは新社会
党的な勢力と民主党的な勢力の左右に再分裂するか、のどちらかの選択肢を早晩迫られることに
ならざるをえないでしょう(そうであって欲しくないのですが)。世の中がさらにさらに右傾化することに
私は危機感を募らせています。社民党が社民党らしく立ち直れることがありえるのか? 私は立ち直
って欲しいと思っています。

付記:
社民党が立ち直るためには、私も、同党が民主党政権の政策的限界性を直視し、共産、社民の「革
新統一戦線」の方向性を再度追究していくことにかかっている。それしかない、と思っています。


東本高志@大分
taka.h77@basil.ocn.ne.jp
http://blogs.yahoo.co.jp/higashimototakashi


辻元清美の社民党離党 社民党的なものの見方の限界と愚かしさについて/東本高志

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