野宿女性:浜松市役所に運ばれ死亡 「あと一歩」対応なく/毎日新聞

2008-01-17 22:34:29 | 社会
浜松市で昨年11月、空腹のホームレスの女性が市役所に運ばれ、福祉担当職員らが取り囲むなか心肺停止状態となり、翌日死亡した。敷地内の路上で寝かされ、市が与えた非常食も開封できないまま息絶えた。「すべきことはやった」と市は説明する。だが、なぜあと一歩踏み込めなかったのか。女性の死は重い問いを投げかけている。【井上英介】

 市によると、11月22日昼ごろ、以前から浜松駅周辺で野宿していた70歳の女性が駅地下街で弱っているのを警察官が見つけ、119番通報。救急隊は女性から「4日間食事していない。ご飯が食べたい」と聞き、病気の症状や外傷も見られないことから、中区社会福祉課のある市役所へ運んだ。

 女性は救急車から自力で降り、花壇に腰を下ろしたが、間もなくアスファルト上に身を横たえた。連絡を受けていた同課は、常備する非常用の乾燥米を渡した。食べるには袋を開け、熱湯を入れて20~30分、水では60~70分待つ必要がある。

 守衛が常時見守り、同課の職員や別の課の保健師らが様子を見に訪れた。市の高齢者施設への短期収容も検討されたが、担当課に難色を示され、対応方針を決めかねた。

 運ばれて1時間後、野宿者の支援団体のメンバーが偶然通りかかった。近寄って女性の体に触れ、呼び掛けたが、目を見開いたままほとんど無反応だったという。職員に119番通報を依頼したが、手遅れだった。メンバーは職員に頼まれ、救急搬送に付き添った。

 「職員が路上の女性を囲み、見下ろす異様な光景でした」とメンバーは振り返る。「保健師もいたのに私が来るまで誰も体に触れて容体を調べなかった。建物内に入れたり、せめて路上に毛布を敷く配慮もないのでしょうか」。女性に近寄った時、非常食は未開封のまま胸の上に置かれていたという。

 最初に病院ではなく市役所へ運んだことについて、市消防本部中消防署の青木紀一朗副署長は「業務規定に従って血圧や体温などを調べ、急患ではないと判断した。隊員によると女性は病院へ行きたくないそぶりを示した。搬送は純粋な行政サービスで、強制的に病院へ運ぶことはできない」と話す。

 市の一連の対応について、社会福祉部の野中敬専門官は「与えられた権限の範囲内ですべきことはやった。職員たちの目に衰弱している様子はなかった。容体急変は医師ではないので予想できない」と話す。

 死因は急性心不全だった。女性の死亡後、市民団体などから抗議された市は、内部調査を実施。中区社会福祉課の対応について「空腹を訴える女性に非常食を渡し、収容可能な福祉施設を検討した。2回目の救急車も要請した。職務逸脱や法的な義務を果たさなかった不作為は認められない」と結論付けた。

http://mainichi.jp/select/wadai/news/20080116k0000m040171000c.html

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ホームレス:法的支援を 初の全国組織結成--東淀川でシンポ /大阪
 弁護士、司法書士による「ホームレス法的支援者交流会」(代表・木原万樹子弁護士、後閑一博司法書士)が14日設立され、大阪市東淀川区の南方人権文化センターで記念シンポジウムが開かれた。各地で路上法律相談などに当たっている弁護士や司法書士が、差別や暴力の対象となりがちなホームレスの人々にこそ法的支援が必要と、初めて全国組織を結成した。

 会場には法律家のほか、NPOなど支援団体、医師、貧困問題に関心のある市民ら約150人が参加。大阪や京都、札幌、福岡など9都市での取り組みが報告された。

 ある司法書士は、路上生活をしている相談者が生活保護を申請し、数日後にアパート入居ができた成果を語り、「弁護士や司法書士が路上に出て行ったら必ず役に立つ。新しい人にぜひ参加してもらいたい」と呼びかけた。また、相談者に多重債務や薬物依存などがあると、解決や治療に結びつく前に連絡が取れなくなる場合があり、「法律家だけでなく、他の支援者との連携も欠かせない」との声が上がっていた。

 今後、同会は地方都市での法律相談活動の充実に取り組み、全国一斉の相談会やシンポジウム開催などを計画している。【松本博子】

毎日新聞 2008年1月15日

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深層・真相:資源ごみ持ち去りに罰金 ホームレスの困窮懸念 /熊本
 ◇支援の会センター開設へ

 今年、熊本市内のホームレスは冬の寒さ以上に、世間の冷たい風が身に染みそうだ。昨年10月、市条例で収入源だったごみ捨て場からの空き缶集めが禁じられ、今年4月からは違反に最高20万円の罰金が科される。民間支援団体は一層の困窮を懸念。来月にも支援センターを設立する準備を進めているが、資金確保など課題も多い。【山田宏太郎】

 ■収入半減

 「人目に付きやすい場所は避けているが、まだ空き缶は集めている。でも、罰則が始まると難しいだろうね」

 2年ほど熊本市の橋の下で暮らしている50代の男性は川面を見つめ不安気につぶやいた。対岸にも“仲間”の住み家が見える。「自分はミカンちぎりの手伝いなどの仕事もしているからまだいい。空き缶だけに頼っている人は深刻だ」と思いやった。

 熊本市の調べでは、市内のホームレスは92人(昨年1月現在)。NPO法人「熊本ホームレス自立支援の会」によると、これまでは空き缶集めで日に3000円ほどを稼ぐ人もいたが、今、多くの人が半分か、それ以下に収入が減っているという。

 ■すさむ心

 「最近は生活が苦しくなり、みんな精神的にも余裕がなくなっている感じだ。万引きや仲間同士でのけんかが増えている」。かつて自身も路上生活していた「支援の会」の男性会員(56)は心を痛める。

 男性は「バブル経済崩壊を境にホームレスの性質が変わった」と指摘する。

 以前は家族などとのかかわりを捨て自発的に路上生活を選ぶ人も目立った。しかし、バブル後は多重債務で取り立てから逃れるためなど“不況型”が大半という。「だれかが手助けし、立ち直るきっかけを与えるべきだ」と訴える。

 ■難しい就労支援

 条例施行に合わせて熊本市も就労支援などの対策に取り組んではいる。昨年8月、市役所内にホームレス相談窓口を開設。巡回指導員による就労支援も始めた。

 11月にはハローワークを通じ、北海道出身の40代の男性の就職が決まった。男性は熊本を離れる日、交通センターから「お世話になりました」と弾んだ声で市の担当者に電話してきた。

 だが、就職につながった例は窓口開設後、まだ4人に過ぎない。担当者も「50代以上となると働き口を見つけるのは難しい」と苦悩する。

 ■行政の責任

 支援の会は、おにぎり提供や炊き出し、軽作業の請負などで自立を手助けしてきた。嶋本勝博理事長(58)は「条例は生存権を保障した憲法に反する」と批判し、一層の支援を強化する考えを示している。その一つが「自立支援センター」の開設だ。

 センターは病気にかかった人などを一時保護するほか、就労や健康相談の窓口も設ける。支援者らと気軽にコミュニケーションできる場をつくることで孤立を防ぐこともできる。事務員にはホームレスを雇う方針だ。

 設置場所もほぼ決まっているが、問題は資金。「会費収入は年間90万円程度にすぎない。活動を理解してもらい支援者を増やすしかない」。嶋本理事長は表情を曇らせつつ、こう続けた。

 「熊本市には支援を要望している。でも、本来は行政がやるべきこと。『人間にやさしい行政』は市民にも支持されるはずだ」

毎日新聞 2008年1月8日


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