窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

中竹竜二監督2

2008年03月02日 | レビュー(本・映画等)
  今年の冬はどうにか風邪を引かずにすんだかなと思っていた矢先、先週の土曜日から一週間風邪を引いてしまいました。昨日太極拳に行き体調を整えたので、今日からは大丈夫だと思います。

  昨日はラグビー日本選手権の2回戦。第一試合の近鉄も健闘を見せましたが、早稲田もよくやったと思います。47対24と点差こそつきましたが、今シーズンのトップリーグは上位4チームが最後まで高いレベルで鎬を削っていたので社会人と学生の力量差はかなりあると見ていました。そういう中では最後まで今年のチームらしさ、部分的には十分トップ4にも通用するところを見させてもらえたので、本当に素晴らしい試合でした。それに何より3月までアカクロを見られた今シーズンは、学生の皆さんは大変だったでしょうが見物するだけの僕としてはラッキーな1年でした。

  中竹監督の言う「フォロワーシップが機能する組織」ということで言えば、五郎丸選手のような精神面においてもプレーにおいてもチームの支柱となった存在が抜ける来シーズンはさらに真価の問われるシーズになるであろうと思います。

  先週25日はその中竹監督の『監督に期待するな 早稲田ラグビー「フォロワーシップ」の勝利』が発売された日で、早速購入しました。あっという間に読めてしまう本なので、3回位繰り返して読みました。清宮前監督と対照的にマスコミへの露出も少なく、これまでたまに雑誌や書籍に寄稿される記事を除いて中竹監督の考えについて触れられる機会がなかったので、『オールアウト』から10年、主将だった時代から12年を経て中竹監督の考えにどういう変化が見られるのか、発売をずっと楽しみにしていました。

  結論から言うと、監督の基本的な考え方は『オールアウト』の時と基本的に変わっていないような気がします。恐らく現在の考えの基本形は主将になる以前から形成されていて、中竹組での実践やその後10年にわたるラグビー以外の世界での経験が付与されて今日の形になっているのではと勝手に想像しています。この本は「フォロワーシップの勝利」となっていますが、「フォロワーシップが機能する組織を作るためのリーダーシップのあり方」について早稲田の監督を務めたこの2年間を通して語っています。以前も述べたとおり、僕も感覚的には「フォロワーシップが機能する組織」というものを理想としているのですが、現実にはフォロワーを育てるために必要なリーダーとしての態度が不十分で、それ故に監督のこの2年間選手たちに対しどのように接してきたのか特に興味がありました。

・自分で考えようとしない(リーダーが与えてくれるのを待っている)
・自分の強みが分からない
・コミュニケーションが苦手(人に何か言われると被害者意識をもつ)
・自分のパフォーマンスではなく他人の失敗との比較で自分を評価してもらおうとする

  本の中では結構多くの企業で悩みとして抱えていそうな組織の問題点が次々と列挙されます。このような状態からフォロワーシップ、つまりリーダーが不在でも組織の構成員(フォロワー)が互いにリーダーシップを発揮すること、によって環境に適応できる組織を作るためにリーダーは何から始めるべきか。「情熱」、なかったら全ての話が不毛になってしまうのでこれはリーダーである以上所与としましょう。情熱の次に重要なのは、中竹監督が恐らく資質として備えているが故にあまり強調されていませんが、できていない僕から見ると何より「話を聞く態度」だと思います。さらに考えられる人を育てるために直ぐ先走って答えを言わない忍耐力をどれだけ持てるか。本文中にもある通り、「考える習慣のない学生たちが、自分たちで考えられるチームを作るには時間がかかりすぎる」、最初のシーズンの失敗はそれでもその年の内に結果を出さなければいけないという矛盾によるものだと思うのですが、そうでないならば時間のかかる作業であることを自覚して我慢することがリーダーに求められます。

  その前提に立って、第3に重要なのはリーダーもフォロワーも万能でなく、万能である必要もないことを自覚すること。様々な分野でリーダーシップの類型が試みられてきましたが、結局理想のリーダーシップというものが見つからないのは現実に万能なリーダーシップなどあり得ないということに他なりませんし、だからこそフォロワーシップが重要になってくるのだと思います。同様にフォロワーにも万能を求めてはいけない、その代わり個々の強みを生かした「スタイル」の確立が重要なのだと本文では述べています。その際に注意しなければならないのは、現実を直視し法外な理想を追いかけないことだそうです。

  フォロワー個々のスタイルを確立するための第一歩として各自に自分の強み(できれば弱みも)を考えさせる。ところがまず自分の長所を見つけ出すことが意外とできない。リーダーとしてはここでどれだけ忍耐強く考えさせられるかが大切でしょう。思わずアドバイスをしたくなりますが、それでは自分で考えるフォロワーが育たないと肝に銘じたいと思います。強みがまとまってきたなら、その強みを生かした独自のスタイルを考えさせる。それら個々のスタイルを組織として機能させるにはコミュニケーションが欠かせませんが、コミュニケーションが苦手というのは中々厄介です。リーダーとしては目的がブレないようにだけ気をつけて、これもコミュニケーションの繰り返しの中でコミュニケーションを育むしかないように思います。

  その他評価基準を明確にすること、リーダーのフォロワーだけでなく、そのフォロワーにもフォロワーがいて組織を構成するわけなのでフォロワーとしてケアするのは特定の幹部や幹部候補だけでなく全員でなければならないということ。この辺は『オールアウト』の中でも既に述べられています。できそうでなかなか手が回らないのが通常の組織の現実だと思うのですが、これができる中竹監督の手腕はやはり凄いものだと思います。

  最後にジャストとフェアーについても心に残りました。ジャストとはルールで正しい、正しくないということ、フェアーはその場にいる人間の行動がきれいか汚いかを指す、と本文では定義されていますが、これを企業に当てはめて言うならジャストはいわゆるコンプライアンスの問題、フェアーは社会道徳や企業の持つ理念や価値観と言えるでしょう。ジャストはどんな企業でもある程度明確になっていると思いますし、フェアーもあるとは思いますが、フェアーの方は漠然としがちなので、これをもっと組織が活動する動機として活かせるよう掘り下げていく必要があるように感じました。

  あくまで私事に準えての感想でほとんど自分に話しかけているようなものなのですが、結局フォロワーシップを発揮できる組織を作れるリーダーとしての資質の部分で自分にはこれだけ欠けている要素がある、本書から学べたのはまさにこの点において再認識したことです。これまで生きてきた迫力からして違うのでしょうが、改めてとても同い年とは思えない人です。

監督に期待するな 早稲田ラグビー「フォロワーシップ」の勝利
中竹 竜二
講談社

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  繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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