法律の周辺

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総連系歌劇団に対する施設の使用不許可について

2007-09-06 19:46:03 | Weblog
総連系歌劇団の使用不許可 岡山の施設,実行委反発 - さきがけ on the Web

 岡山シンフォニーホールは,岡山市の岡山シンフォニーホール条例に基づいて芸術鑑賞と文化活動の拠点として設置された施設。財団法人岡山シンフォニーホールは,岡山市から同ホールの指定管理者の指定を受け,管理運営にあたっている。「使用不許可は私人間の問題」で終わらせことはできない。

さて,記事にある仙台公演だが,仙台地裁は,7月24日,件の歌劇団による仙台市の市民会館使用許可取消処分の執行停止を求める仮処分の申立てにつき,使用不許可は,施設の管理上の支障が客観的な事実に照らして具体的・明白に予測される場合で,警察の警備などでも混乱を防止できないなどの特別な事情がある場合に限られるとし,取消処分の停止を決定した。仙台高裁もこの地裁決定を支持し,8月7日,仙台市の抗告を棄却している。
上記地裁の判断は,合同葬の用に供するための公共施設の使用不許可を違法とした事案に係る上尾市福祉会館事件最判の規範に拠っているようだ。以下に関係する箇所を掲げる。

 本件会館は,地方自治法二四四条にいう公の施設に当たるから,被上告人は,正当な理由がない限り,これを利用することを拒んではならず(同条二項),また,その利用について不当な差別的取扱いをしてはならない(同条三項)。本件条例は,同法二四四条の二第一項に基づき,公の施設である本件会館の設置及び管理について定めるものであり,本件条例六条一項各号は,その利用を拒否するために必要とされる右の正当な理由を具体化したものであると解される。
 そして,同法二四四条に定める普通地方公共団体の公の施設として,本件会館のような集会の用に供する施設が設けられている場合,住民等は,その施設の設置目的に反しない限りその利用を原則的に認められることになるので,管理者が正当な理由もないのにその利用を拒否するときは,憲法の保障する集会の自由の不当な制限につながるおそれがある。したがって,集会の用に供される公の施設の管理者は,当該公の施設の種類に応じ,また,その規模,構造,設備等を勘案し,公の施設としての使命を十分達成せしめるよう適正にその管理権を行使すべきである。
 以上のような視点からすると,本件条例六条一項一号は,「会館の管理上支障があると認められるとき」を本件会館の使用を許可しない事由として規定しているが,右規定は,会館の管理上支障が生ずるとの事態が,許可権者の主観により予測されるだけでなく,客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測される場合に初めて,本件会館の使用を許可しないことができることを定めたものと解すべきである。
 2 以上を前提として,本件不許可処分の適否について判断する。
 (一)本件不許可処分は,本件会館を本件合同葬のために利用させた場合には,上告人に反対する者らがこれを妨害するなどして混乱が生ずると懸念されることを一つの理由としてされたものであるというのである。しかしながら,前記の事実関係によれば,b館長が前記の新聞報道によりa部長の殺害事件がいわゆる内ゲバにより引き起こされた可能性が高いと考えることにはやむを得ない面があったとしても,そのこと以上に本件合同葬の際にまで上告人に反対する者らがこれを妨害するなどして混乱が生ずるおそれがあるとは考え難い状況にあったものといわざるを得ない。また,主催者が集会を平穏に行おうとしているのに,その集会の目的や主催者の思想,信条等に反対する者らが,これを実力で阻止し,妨害しようとして紛争を起こすおそれがあることを理由に公の施設の利用を拒むことができるのは,前示のような公の施設の利用関係の性質に照らせば,警察の警備等によってもなお混乱を防止することができないなど特別な事情がある場合に限られるものというべきである。ところが,前記の事実関係によっては,右のような特別な事情があるということはできない。なお,警察の警備等によりその他の施設の利用客に多少の不安が生ずることが会館の管理上支障が生ずるとの事態に当たるものでないことはいうまでもない。


朝日によれば,件の歌劇団の仙台公演は,右翼街宣車の周回等はあったようだが,約1200人の来場を得て,滞りなく実施されたようだ。
ただ,仙台市長の認識は異なるよう。河北新報が,市長の「混乱があったので次回公演は白紙」との談話を報じている。しかし,警官隊との睨み合いや多少の小競り合いがあったことをもって「混乱」と呼び,今後の使用許可を拒否できるとなれば,不当な勢力の思うつぼではなかろうか。残念な談話というほかない。
拉致憎しはわかるが,「総連系○○=悪」といった画一的な思考は困ったもの。


日本国憲法の関連条文

第二十一条  集会,結社及び言論,出版その他一切の表現の自由は,これを保障する。
2  検閲は,これをしてはならない。通信の秘密は,これを侵してはならない。

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