法律の周辺

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大法廷への回付について

2007-09-05 21:18:05 | Weblog
時事ドットコム 婚外子訴訟を大法廷回付=憲法判断の可能性-婚姻条件の国籍法規定・最高裁

 記事の「日本国籍を求めた2件の訴訟」の内のひとつが東京高判H18.2.28
原告(被控訴人)は,出生後に父から認知を受けたとして,選択的に,

(1) 国籍法第2条第1号に基づいて,出生時に遡って日本国籍を取得した
(2) 出生後の父の認知及び父母の婚姻を日本国籍取得の要件とする国籍法第3条第1項は違憲無効 → 父母の婚姻という要件を具備せずとも日本の国籍を取得した

と主張。国に対し日本国籍を有することの確認を求めていた。
(2)の憲法第14条違反をいう点については,次のとおり判示。「法第3条第1項の違憲無効を主張することは,法理論的に明らかな矛盾を含む主張」「それ自体が失当」と手厳しい。

 父又は母が日本人である子の日本国籍取得に関する法の構造は前記のとおりであって,その第2条第1号において,子が出生のときに父又は母が日本国民であるときに当該子を日本国民とすると規定しているが,その規定の趣旨からすると,出生時に子と法律上の親子関係がなかった父が子が出生した後に認知をしたとしても,当該子が日本の国籍を取得することにはならず,法第3条第1項において,父母の婚姻及び父による認知により嫡出子たる身分を取得した子が届出をした場合に初めて当該子が日本の国籍を取得することができることとされているところ,父の認知を受けたが父母が婚姻をしないため嫡出子たる身分を取得しない子が,同項により日本の国籍を取得することができる者に含まれていないことは,同項の文言及び趣旨に照らして明らかであるから,法において,出生した後に父から認知を受けたが,父母が婚姻をしないために嫡出子の身分を取得しない子が日本の国籍を取得する制度は規定されていないことは明らかといわざるを得ない。被控訴人は,出生後の父による認知を受けたが父母が婚姻をしないために嫡出子たる身分を取得しない子についても,日本の国籍を取得するべきである旨の主張を根拠として,法第3条第1項に規定する父母の婚姻及び父による認知という要件を具備した場合に当該子が日本の国籍を取得する制度を規定している同項が憲法に違反して無効である旨主張するが,上記のような国籍法の規定内容に照らすと,仮に同項の規定が無効であるとすれば,父母の婚姻及び父による認知要件を具備した子において日本の国籍を取得する規定の効力が失われるだけであって,そのことから,被控訴人の主張するような出生した後に父から認知を受けたが,父母が婚姻をしないために嫡出子たる身分を取得しない子が日本の国籍を取得する制度が創設されるわけではないことも明らかといわざるを得ない。しかも,被控訴人の主張するように,仮に法第3条第1項の規定が無効であるとなれば,同項所定の要件を具備する子が日本の国籍を取得することができるのに対して,出生した後に父から認知を受けたが,父母が婚姻をしないために嫡出子たる身分を取得しない子が日本の国籍を取得できないことが不合理であるとの主張を維持することができなくなることも明らかである(なぜならば,法第3条第1項の規定が無効であるならば,同項所定の要件を具備した子であっても日本の国籍を取得することができなくなるからである。)。そうすると,被控訴人が,出生した後に父から認知を受けたが,父母が婚姻をしないために嫡出子たる身分を取得しない子についても,日本の国籍を取得することができると解すべきであるとの主張を前提として,法第3条第1項の違憲無効を主張することは,法理論的に明らかな矛盾を含む主張であり,したがって,被控訴人の上記憲法違反の主張は,控訴人の立法不作為の責任を追及する趣旨のものにはなり得ても(なお,前記第二小法廷判決平成14年11月22日の事案と異なり,本件においては,被控訴人は国家賠償法に基づく損害賠償請求をしていない。),被控訴人の日本国籍を有することの確認を求める本件請求を認める根拠とはなり得ないといわなければならないから,それ自体が失当というほかない。

大法廷がどのような判断をするか注目したい。


日本国憲法の関連条文

第十条  日本国民たる要件は,法律でこれを定める。

第十四条  すべて国民は,法の下に平等であつて,人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において,差別されない。
2  華族その他の貴族の制度は,これを認めない。
3  栄誉,勲章その他の栄典の授与は,いかなる特権も伴はない。栄典の授与は,現にこれを有し,又は将来これを受ける者の一代に限り,その効力を有する。

国籍法の関連条文

(この法律の目的)
第一条  日本国民たる要件は,この法律の定めるところによる。

(出生による国籍の取得)
第二条  子は,次の場合には,日本国民とする。
一  出生の時に父又は母が日本国民であるとき。
二  出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。
三  日本で生まれた場合において,父母がともに知れないとき,又は国籍を有しないとき。

(準正による国籍の取得)
第三条  父母の婚姻及びその認知により嫡出子たる身分を取得した子で二十歳未満のもの(日本国民であつた者を除く。)は,認知をした父又は母が子の出生の時に日本国民であつた場合において,その父又は母が現に日本国民であるとき,又はその死亡の時に日本国民であつたときは,法務大臣に届け出ることによつて,日本の国籍を取得することができる。
2  前項の規定による届出をした者は,その届出の時に日本の国籍を取得する。

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