法律の周辺

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過少申告加算税を課されない「正当な理由」について

2006-10-24 21:44:35 | Weblog
asahi.com ストックオプション「加算税は違法」 最高裁判決

 事案は,一時所得として申告していた平成8年分ないし同10年分のストックオプションの権利行使利益を平成12年3月10日に給与所得にあたるとして増額更正されていたところ,5日後の同月15日に,再び平成11年分の同利益を一時所得として確定申告したというもの。
本最判,過少申告加算税が課されない国税通則法第65条第4項の「正当な理由」につき,次のように判示する。

 過少申告加算税は,過少申告による納税義務違反の事実があれば,原則としてその違反者に対して課されるものであり,これによって,当初から適正に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに,過少申告による納税義務違反の発生を防止し,適正な申告納税の実現を図り,もって納税の実を挙げようとする行政上の措置である。この趣旨に照らせば,過少申告があっても例外的に過少申告加算税が課されない場合として国税通則法65条4項が定めた「正当な理由があると認められる」場合とは,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,上記のような過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である(最高裁平成17年(行ヒ)第9号同18年4月20日第一小法廷判決・民集60巻4号1611頁,最高裁平成16年(行ヒ)第86号,第87号同18年4月25日第三小法廷判決・民集60巻4号1728頁参照)。

 東京国税局直税部長監修等による「回答事例による所得税質疑応答集」にストックオプションの権利行使益を一時所得ではなく給与所得とする記述が顕れたのは平成10年版が最初。この扱いが通達に明記されたのは平成14年6月24日付け改正において。最高裁で件の利益が給与所得であるとの判断が出されたのは平成17年1月25日第三小法廷判決。
なるほど,上記経緯からすれば,ペナルティーはきつい。

判例検索システム 平成18年10月24日 各所得税更正処分等取消請求事件


国税通則法の関連条文

(目的)
第一条  この法律は,国税についての基本的な事項及び共通的な事項を定め,税法の体系的な構成を整備し,かつ,国税に関する法律関係を明確にするとともに,税務行政の公正な運営を図り,もつて国民の納税義務の適正かつ円滑な履行に資することを目的とする。

(過少申告加算税)
第六十五条  期限内申告書(還付請求申告書を含む。第三項において同じ。)が提出された場合(期限後申告書が提出された場合において,次条第一項ただし書の規定の適用があるときを含む。)において,修正申告書の提出又は更正があつたときは,当該納税者に対し,その修正申告又は更正に基づき第三十五条第二項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額に百分の十の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。
2  前項の規定に該当する場合において,同項に規定する納付すべき税額(同項の修正申告又は更正前に当該修正申告又は更正に係る国税について修正申告書の提出又は更正があつたときは,その国税に係る累積増差税額を加算した金額)がその国税に係る期限内申告税額に相当する金額と五十万円とのいずれか多い金額を超えるときは,同項の過少申告加算税の額は,同項の規定にかかわらず,同項の規定により計算した金額に,当該超える部分に相当する税額(同項に規定する納付すべき税額が当該超える部分に相当する税額に満たないときは,当該納付すべき税額)に百分の五の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする。
3  前項において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。
一  累積増差税額 第一項の修正申告又は更正前にされたその国税についての修正申告書の提出又は更正に基づき第三十五条第二項の規定により納付すべき税額の合計額(当該国税について,当該納付すべき税額を減少させる更正又は更正に係る不服申立て若しくは訴えについての決定,裁決若しくは判決による原処分の異動があつたときはこれらにより減少した部分の税額に相当する金額を控除した金額とし,次項の規定の適用があつたときは同項の規定により控除すべきであつた金額を控除した金額とする。)
二  期限内申告税額 期限内申告書(次条第一項ただし書の規定の適用がある場合には,期限後申告書を含む。)の提出に基づき第三十五条第一項又は第二項の規定により納付すべき税額(これらの申告書に係る国税について,次に掲げる金額があるときは当該金額を加算した金額とし,所得税,法人税,相続税又は消費税に係るこれらの申告書に記載された還付金の額に相当する税額があるときは当該税額を控除した金額とする。)
イ 所得税法第九十五条 (外国税額控除)の規定による控除をされるべき金額,第一項の修正申告若しくは更正に係る同法第百二十条第一項第五号 (確定申告書の記載事項)(同法第百六十六条 (非居住者に対する準用)において準用する場合を含む。)に規定する源泉徴収税額に相当する金額,同法第百二十条第二項 (同法第百六十六条 において準用する場合を含む。)に規定する予納税額又は災害被害者に対する租税の減免,徴収猶予等に関する法律 (昭和二十二年法律第百七十五号)第二条 (所得税の軽減又は免除)の規定により軽減若しくは免除を受けた所得税の額
ロ 法人税法第二条第四十一号 (定義)に規定する中間納付額,同条第四十二号 に規定する清算中の予納額,同法第六十八条 (所得税額の控除)(同法第百四十四条 (外国法人に対する準用)において準用する場合を含む。),第六十九条(外国税額の控除),第八十一条の十四(連結事業年度における所得税額の控除),第八十一条の十五(連結事業年度における外国税額の控除),第八十二条の六(特定信託に係る所得税額の控除)(同法第百四十五条の六 (外国法人に対する準用)において準用する場合を含む。)若しくは第八十二条の七(特定信託に係る外国税額の控除)(同法第百四十五条の七 (外国法人に対する準用)において準用する場合を含む。)の規定による控除をされるべき金額,同法第九十条 (退職年金等積立金に係る中間申告による納付)(同法第百四十五条の十二 (外国法人に対する準用)において準用する場合を含む。)の規定により納付すべき法人税の額(その額につき修正申告書の提出又は更正があつた場合には,その申告又は更正後の法人税の額)又は同法第百条 (解散の場合の清算所得に対する法人税額からの所得税額の控除)の規定による控除をされるべき所得税の額
ハ 相続税法第二十条の二 (在外財産に対する相続税額の控除),第二十一条の八(在外財産に対する贈与税額の控除),第二十一条の十五第三項及び第二十一条の十六第四項(相続時精算課税に係る贈与税相当額の控除)の規定による控除をされるべき金額
ニ 消費税法第二条第一項第二十号 (定義)に規定する中間納付額
4  第一項又は第二項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となつた事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(還付金の額に相当する税額を含む。)の計算の基礎とされていなかつたことについて正当な理由があると認められるものがある場合には,これらの項に規定する納付すべき税額からその正当な理由があると認められる事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して,これらの項の規定を適用する。
5  第一項の規定は,修正申告書の提出があつた場合において,その提出が,その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは,適用しない。

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しつけのためにご飯を食べさせない親について

2006-10-24 19:51:08 | Weblog
asahi.com 死亡時,平均体重の半分 京都・長岡京の3歳児虐待事件

 児童虐待防止法第14条第1項は,「児童の親権を行う者は,児童のしつけに際して,その適切な行使に配慮しなければならない。」と規定する。
馬鹿みたいな規定だが,「しつけのために,ご飯を食べさせない」などという親がいる限り外せない。たとえ訓辞規定にしても。

 拓夢ちゃん,今頃,天国でお腹いっぱいご飯を食べているかな? 向こうは親切な大人がたくさんいるから大丈夫だね,きっと。合掌。

京都3歳餓死:通報5件,児相動かず 住民の声生かせず MSN毎日インタラクティブ


「児童虐待の防止等に関する法律」の関連条文

(親権の行使に関する配慮等)
第十四条  児童の親権を行う者は,児童のしつけに際して,その適切な行使に配慮しなければならない。
2  児童の親権を行う者は,児童虐待に係る暴行罪,傷害罪その他の犯罪について,当該児童の親権を行う者であることを理由として,その責めを免れることはない。

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