自閉症を理由に公判停止 全国で初めて Sankei Web
耳が聞こえず,言葉も話せない聴覚・言語の障害者の窃盗事件で,最決H7.2.28は,「刑訴法314条1項にいう『心神喪失の状態』とは,訴訟能力,すなわち,被告人としての重要な利害を弁別し,それに従って相当な防御をすることのできる能力を欠く状態をいうと解するのが相当である。」と判示する。
確かに,「放置されて一生刑事被告人のまま」は問題。ただ,手続打ち切りといった明文なき措置については,裁判所は極めて慎重だ。
この点については,前記最決の千種補足意見が参考になる。
仮に被告人に訴訟能力がないと認めて公判手続を停止した場合におけるその後の措置について付言すると,裁判所は,訴訟の主宰者として,被告人の訴訟能力の回復状況について,定期的に検察官に報告を求めるなどして,これを把握しておくべきである。そして,その後も訴訟能力が回復されないとき,裁判所としては,検察官の公訴取消しがない限りは公判手続を停止した状態を続けなければならないものではなく,被告人の状態等によっては,手続を最終的に打ち切ることができるものと考えられる。ただ,訴訟能力の回復可能性の判断は,時間をかけた経過観察が必要であるから,手続の最終的打切りについては,事柄の性質上も特に慎重を期すべきである。
刑事訴訟法の関連条文
第二百五十七条 公訴は,第一審の判決があるまでこれを取り消すことができる。
第三百十四条 被告人が心神喪失の状態に在るときは,検察官及び弁護人の意見を聴き,決定で,その状態の続いている間公判手続を停止しなければならない。但し,無罪,免訴,刑の免除又は公訴棄却の裁判をすべきことが明らかな場合には,被告人の出頭を待たないで,直ちにその裁判をすることができる。
2 被告人が病気のため出頭することができないときは,検察官及び弁護人の意見を聴き,決定で,出頭することができるまで公判手続を停止しなければならない。但し,第二百八十四条及び第二百八十五条の規定により代理人を出頭させた場合は,この限りでない。3 犯罪事実の存否の証明に欠くことのできない証人が病気のため公判期日に出頭することができないときは,公判期日外においてその取調をするのを適当と認める場合の外,決定で,出頭することができるまで公判手続を停止しなければならない。
4 前三項の規定により公判手続を停止するには,医師の意見を聴かなければならない。
第四百十九条 抗告は,特に即時抗告をすることができる旨の規定がある場合の外,裁判所のした決定に対してこれをすることができる。但し,この法律に特別の定のある場合は,この限りでない。
耳が聞こえず,言葉も話せない聴覚・言語の障害者の窃盗事件で,最決H7.2.28は,「刑訴法314条1項にいう『心神喪失の状態』とは,訴訟能力,すなわち,被告人としての重要な利害を弁別し,それに従って相当な防御をすることのできる能力を欠く状態をいうと解するのが相当である。」と判示する。
確かに,「放置されて一生刑事被告人のまま」は問題。ただ,手続打ち切りといった明文なき措置については,裁判所は極めて慎重だ。
この点については,前記最決の千種補足意見が参考になる。
仮に被告人に訴訟能力がないと認めて公判手続を停止した場合におけるその後の措置について付言すると,裁判所は,訴訟の主宰者として,被告人の訴訟能力の回復状況について,定期的に検察官に報告を求めるなどして,これを把握しておくべきである。そして,その後も訴訟能力が回復されないとき,裁判所としては,検察官の公訴取消しがない限りは公判手続を停止した状態を続けなければならないものではなく,被告人の状態等によっては,手続を最終的に打ち切ることができるものと考えられる。ただ,訴訟能力の回復可能性の判断は,時間をかけた経過観察が必要であるから,手続の最終的打切りについては,事柄の性質上も特に慎重を期すべきである。
刑事訴訟法の関連条文
第二百五十七条 公訴は,第一審の判決があるまでこれを取り消すことができる。
第三百十四条 被告人が心神喪失の状態に在るときは,検察官及び弁護人の意見を聴き,決定で,その状態の続いている間公判手続を停止しなければならない。但し,無罪,免訴,刑の免除又は公訴棄却の裁判をすべきことが明らかな場合には,被告人の出頭を待たないで,直ちにその裁判をすることができる。
2 被告人が病気のため出頭することができないときは,検察官及び弁護人の意見を聴き,決定で,出頭することができるまで公判手続を停止しなければならない。但し,第二百八十四条及び第二百八十五条の規定により代理人を出頭させた場合は,この限りでない。3 犯罪事実の存否の証明に欠くことのできない証人が病気のため公判期日に出頭することができないときは,公判期日外においてその取調をするのを適当と認める場合の外,決定で,出頭することができるまで公判手続を停止しなければならない。
4 前三項の規定により公判手続を停止するには,医師の意見を聴かなければならない。
第四百十九条 抗告は,特に即時抗告をすることができる旨の規定がある場合の外,裁判所のした決定に対してこれをすることができる。但し,この法律に特別の定のある場合は,この限りでない。