asahi.com 取材源の秘匿,記者の証言拒絶認める 最高裁
記事では特別抗告(民訴法第336条第1項)となっているが,許可抗告(同第337条)。
民事での報道機関の取材源秘匿については,高裁レベルで,島田事件に係る札幌高決S54.8.31があった。
言うまでもないが,この最決,取材源の秘匿がすべからく保護に値するとしたわけではない。判示は次のとおり。
「報道関係者の取材源は,一般に,それがみだりに開示されると,報道関係者と取材源となる者との間の信頼関係が損なわれ,将来にわたる自由で円滑な取材活動が妨げられることとなり,報道機関の業務に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になると解されるので,取材源の秘密は職業の秘密に当たるというべきである。そして,当該取材源の秘密が保護に値する秘密であるかどうかは,当該報道の内容,性質,その持つ社会的な意義 価値,当該取材の態様,将来における同種の取材活動が妨げられることによって生ずる不利益の内容,程度等と,当該民事事件の内容,性質,その持つ社会的な意義・価値,当該民事事件において当該証言を必要とする程度,代替証拠の有無等の諸事情を比較衡量して決すべきことになる。」
さらに,比較衡量にあたって考慮すべき点として,報道の自由の重要性に挨拶した後,次のように続ける。
「取材源の秘密は,取材の自由を確保するために必要なものとして,重要な社会的価値を有するというべきである。そうすると,当該報道が公共の利益に関するものであって,その取材の手段.方法が一般の刑罰法令に触れるとか,取材源となった者が取材源の秘密の開示を承諾しているなどの事情がなく,しかも,当該民事事件が社会的意義や影響のある重大な民事事件であるため,当該取材源の秘密の社会的価値を考慮してもなお公正な裁判を実現すべき必要性が高く,そのために当該証言を得ることが必要不可欠であるといった事情が認められない場合には,当該取材源の秘密は保護に値すると解すべきであり,証人は,原則として,当該取材源に係る証言を拒絶することができると解するのが相当である。」
判例検索システム 平成18年10月03日 証拠調べ共助事件における証人の証言拒絶についての決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
日本国憲法の関連条文
第二十一条 集会,結社及び言論,出版その他一切の表現の自由は,これを保障する。
2 検閲は,これをしてはならない。通信の秘密は,これを侵してはならない。
民事訴訟法の関連条文
(証人義務)
第百九十条 裁判所は,特別の定めがある場合を除き,何人でも証人として尋問することができる。
(証言拒絶権)
第百九十六条 証言が証人又は証人と次に掲げる関係を有する者が刑事訴追を受け,又は有罪判決を受けるおそれがある事項に関するときは,証人は,証言を拒むことができる。証言がこれらの者の名誉を害すべき事項に関するときも,同様とする。
一 配偶者,四親等内の血族若しくは三親等内の姻族の関係にあり,又はあったこと。
二 後見人と被後見人の関係にあること。
第百九十七条 次に掲げる場合には,証人は,証言を拒むことができる。
一 第百九十一条第一項の場合
二 医師,歯科医師,薬剤師,医薬品販売業者,助産師,弁護士(外国法事務弁護士を含む。),弁理士,弁護人,公証人,宗教,祈祷若しくは祭祀の職にある者又はこれらの職にあった者が職務上知り得た事実で黙秘すべきものについて尋問を受ける場合
三 技術又は職業の秘密に関する事項について尋問を受ける場合
2 前項の規定は,証人が黙秘の義務を免除された場合には,適用しない。
記事では特別抗告(民訴法第336条第1項)となっているが,許可抗告(同第337条)。
民事での報道機関の取材源秘匿については,高裁レベルで,島田事件に係る札幌高決S54.8.31があった。
言うまでもないが,この最決,取材源の秘匿がすべからく保護に値するとしたわけではない。判示は次のとおり。
「報道関係者の取材源は,一般に,それがみだりに開示されると,報道関係者と取材源となる者との間の信頼関係が損なわれ,将来にわたる自由で円滑な取材活動が妨げられることとなり,報道機関の業務に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になると解されるので,取材源の秘密は職業の秘密に当たるというべきである。そして,当該取材源の秘密が保護に値する秘密であるかどうかは,当該報道の内容,性質,その持つ社会的な意義 価値,当該取材の態様,将来における同種の取材活動が妨げられることによって生ずる不利益の内容,程度等と,当該民事事件の内容,性質,その持つ社会的な意義・価値,当該民事事件において当該証言を必要とする程度,代替証拠の有無等の諸事情を比較衡量して決すべきことになる。」
さらに,比較衡量にあたって考慮すべき点として,報道の自由の重要性に挨拶した後,次のように続ける。
「取材源の秘密は,取材の自由を確保するために必要なものとして,重要な社会的価値を有するというべきである。そうすると,当該報道が公共の利益に関するものであって,その取材の手段.方法が一般の刑罰法令に触れるとか,取材源となった者が取材源の秘密の開示を承諾しているなどの事情がなく,しかも,当該民事事件が社会的意義や影響のある重大な民事事件であるため,当該取材源の秘密の社会的価値を考慮してもなお公正な裁判を実現すべき必要性が高く,そのために当該証言を得ることが必要不可欠であるといった事情が認められない場合には,当該取材源の秘密は保護に値すると解すべきであり,証人は,原則として,当該取材源に係る証言を拒絶することができると解するのが相当である。」
判例検索システム 平成18年10月03日 証拠調べ共助事件における証人の証言拒絶についての決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
日本国憲法の関連条文
第二十一条 集会,結社及び言論,出版その他一切の表現の自由は,これを保障する。
2 検閲は,これをしてはならない。通信の秘密は,これを侵してはならない。
民事訴訟法の関連条文
(証人義務)
第百九十条 裁判所は,特別の定めがある場合を除き,何人でも証人として尋問することができる。
(証言拒絶権)
第百九十六条 証言が証人又は証人と次に掲げる関係を有する者が刑事訴追を受け,又は有罪判決を受けるおそれがある事項に関するときは,証人は,証言を拒むことができる。証言がこれらの者の名誉を害すべき事項に関するときも,同様とする。
一 配偶者,四親等内の血族若しくは三親等内の姻族の関係にあり,又はあったこと。
二 後見人と被後見人の関係にあること。
第百九十七条 次に掲げる場合には,証人は,証言を拒むことができる。
一 第百九十一条第一項の場合
二 医師,歯科医師,薬剤師,医薬品販売業者,助産師,弁護士(外国法事務弁護士を含む。),弁理士,弁護人,公証人,宗教,祈祷若しくは祭祀の職にある者又はこれらの職にあった者が職務上知り得た事実で黙秘すべきものについて尋問を受ける場合
三 技術又は職業の秘密に関する事項について尋問を受ける場合
2 前項の規定は,証人が黙秘の義務を免除された場合には,適用しない。