法律の周辺

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未分割の相続財産から生ずる賃料債権の帰属に関する最高裁判決について

2005-09-09 17:23:31 | Weblog
 「相続開始から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生ずる賃料債権は、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、この賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けない」とする破棄差戻判決

 下級審の判断は分かれていたといわれるが,「相続開始後に生じた法定果実は,遺産とは別に,各共同相続人がその法定相続分に応じて取得する」とする共有説が有力であったと思われる。
その意味では,最高裁の判断は予想の範囲内といったところか。

因みに,原審の判断は,次のとおり。

「遺産から生ずる法定果実は,それ自体は遺産ではないが,遺産の所有権が帰属する者にその果実を取得する権利も帰属するのであるから,遺産分割の効力が相続開始の時にさかのぼる以上,遺産分割によって特定の財産を取得した者は,相続開始後に当該財産から生ずる法定果実を取得することができる。そうすると,本件各不動産から生じた賃料債権は,相続開始の時にさかのぼって,本件遺産分割決定により本件各不動産を取得した各相続人にそれぞれ帰属するものとして,本件口座の残金を分配すべきである。」

一方,最高裁の判断は,次のとおり。

「遺産は,相続人が数人あるときは,相続開始から遺産分割までの間,共同相続人の共有に属するものであるから,この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は,遺産とは別個の財産というべきであって,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は,相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は,後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。」

 本判決で,一応決着が付いた形だが,相続開始から遺産分割までの間は共有→遺産とは別に各共同相続人が相続分に応じて確定的に取得,で原審の判断を論破できているかは疑問である。
いずれにせよ,相続財産の帰属と賃料債権の帰属は別,という判断を最高裁が示したことにより,相続財産をめぐる争いはこれまでとは違ったものになろう。ある意味,「相続財産を取得できれば,賃料債権も遡って取得できる」という思惑があるからこそ,高額の賃貸不動産をめぐる相続争いは長期化していたとも言えるからだ。

 それにしても,この事案。最初の「本件各不動産から生ずる賃料,管理費等について,遺産分割により本件各不動産の帰属が確定した時点で清算する」という合意は良かったが,双方が賃料債権の帰属について考えているところは全く違っていたわけだ。
詳細はハッキリしないが,「念には念を」「詰めるべきところは,キチンと詰める」は怠らないようにしたいものだ。

コメント
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