まなびの途中

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学んだことを書いてまいります。

重力があってこその、この肉体。

2007年01月12日 | 本・映画
ちょっとした興味で読み始めた本。
宇宙旅行に関して、お手軽体験が、お手軽な金額でできるようにはなったが、
本格的な宇宙旅行。
この本を読むと、まだまだ、先は長そうだと。

「宇宙飛行士は早く老ける?―重力と老化の意外な関係」 
 ジョーン・ヴァーニカス著 向井千秋/日本宇宙フォーラム監修 朝日新聞社

  過酷な訓練に耐えた宇宙飛行士が宇宙から戻ってくると、その肉体に年老いた
  人と同じような兆候がみられるのはなぜなのだろう。無重力状態で宇宙飛行士
  の肉体に起こる変化は、老化の症状とあまりにも似ている。
  立っていても座っていても、歩いたり走ったりしていても、私たちを地面に引
  きつけている重力は、私たちの骨や筋肉や身体の感覚をいつも刺激して、良い
  状態に保つ働きをしているらしい。だから重力の影響を受けない宇宙空間で
  は、宇宙飛行士は一時的に老化してしまうのだ。

途中、この本は、サプリメントの本かと思うくらい、
その手の情報が満載です。

それくらい、人間の体が、「化学反応」の塊だと言う事を、教えてくれる本、
でもありますが、
「重力」というものが、これほどまでに、人間が人間たる「形」なり、
「存在」に大きな影響を及ぼしているとは、思いもしませんでした。

宇宙飛行士が帰還。あらゆるチェックを受けるわけですが、
「骨」の重量が30%近くも減る。
それに応じて、筋肉の量も、毎週平均で1%前後減っていく。
つまり、重力の影響を受けない環境下では、
この当たり前だと思っていた、ボディーが、圧倒的な変貌を遂げてしまう。

こんな例が載っていましたが、
体を起こすと、当然血液は下に引っ張られます。
体のセンサーは、即座に「血液が不足」のシグナルを出し、血液の量を
体中の水分を使って、まさに水増しをするそうです。

一方、体を横たえると、重力がフリーになります。
当然、血流は、上半身に圧力がかかるわけです。逆立ちもそうですが。
すると、血液が増加したというシグナルは、水分の排出命令を出すそうです。

このことで、プールに入ると、尿意を催す、なんてことが、
化学的に理解できる。
よって、こと水泳選手であっても、どこかで必ず、重力を取り戻さなければ、
そのまま長時間遊泳していると、血流関係にトラブルが起こる可能性がある。

当たり前ですが、地上で、無重力状態のデータを集めることは至難の業です。
そこで、長時間、ベッドに、ただ横たわるだけ、というボランティアを集め、
できる限りのデータ収集。

ということは、ベッドに横たわっている病人も、ある意味、宇宙旅行者と
同じ変化が体に起こるという訳で、
実は、骨量の変化も、体液も、筋肉の質も、ホルモンバランスも、
おおよそ劇的に変化する。

だから、以前のように、療養目的で、ベッドで安静になんてことが長かったが、
これは人間として、長ければ長いほど、致命的な変化を伴う。
最近、治療後、手術後、すぐにリハビリを行うことを勧められているが、
この本を読む限り出において、非常に納得。

こういう「重力」に焦点をあて、肉体の成り立ちをみせてくれる本は初めて。
宇宙空間という、まったく別物の環境があってこその比較学なんだが、
にしても、重力があって初めて、音も、味覚も、反射能力も、いわゆる五感が
働くなんて、言われるまで、ちゃんと理解していませんでした。

ということは、スペースコロニーやら、宇宙空間での生活は、
「重力」の問題を片付けない限り、かなり難しいということ。
さらに言うと、1Gという環境下でなく、万が一、もっと軽い重力下で
子供を生んだ場合、育つかどうかということも含めて、
難問であるらしい。

次世代に始まるであろう、宇宙生活、なんて思っていたんだが、
これを読むと、まだまだ、遠い夢物語なんだなぁと、実感いたしました。
サプリ好きの方にとっても、読み応えあります。