50才から女優修行をしているYさんから「Aさんの芝居とBさんの芝居とCさんの芝居をハシゴして見に行きました」とのメールがある。Cさんは突然の代役だったみたいだから知らせてくれなくても仕方ないけど、AさんやBさんは以前なら自分の出演作品は必ず郵便で知らせてきたのに、今回は何故俺には知らせてこないのだろうと、ふと疑問に思う。うん?待てよ。そういえばAさんもBさんも今回だけでなく最近は知らせてくれないケースが増えてきた。彼女たちだけでない。俺の芝居に主演したプライベートでも親しい女優のDも出演作を教えてくれない。それでも何本か見に行ったのは、二人の間にいる女優のNから誘われたからだ。こんなことを書くと、いかにも俺が仲間外れにされて僻んでいるみたいだけど、どうやらみんな最近はスマホのラインとかで伝えてしまうので、一人一人にメールしたり郵便で知らせたりはしてないようなのだ。つまりまだスマホを持ってない俺は、仲間外れになってしまったと云うことか。便利な世の中になった。二年前に俺の芝居を上演した時は、たしか二百枚の案内状をだした。葉書だったけど、一枚一枚短いコメントを添え、住所シールを貼って出す大変さを思うと、ラインとかで一斉に送れてしまうことがどんなに便利なことか分かる。でも、その裏で俺みたいな人間はその網から外される。それはそれで知らされなかったのだから見に行かなくても非難されることはないから助かるのだけど、この「仲間ずれ感」はなんとなく納得できない。今日も寒い一日だった。ちょっと前なら熱燗で一杯いく処だが、最近一人でしみじみ飲む力が失われていて、ぶり大根と湯豆腐と塩辛というメニューだったのに熱燗をつけるのを忘れて白いご飯を頬張る。俺はどうかしてしまった。昨日いただいた早坂暁脚本集「必殺シリーズ」の中から「必殺仕掛け人/仕掛けに来て死んだ男」を読みながら早々にベッドに潜り込む。