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東京高検検事長の「定年延長」、その本当の狙い 露骨な介入で脅かされる検察の政治的中立性

2020-02-10 04:09:00 | 日記

東京高検検事長の「定年延長」、その本当の狙い 露骨な介入で脅かされる検察の政治的中立性

東京高検検事長の「定年延長」、その本当の狙い 露骨な介入で脅かされる検察の政治的中立性

東京高検検事長の「定年延長」、その本当の狙い

(東洋経済オンライン)

政府が黒川弘務・東京高検検事長(63)の定年を半年間延長すると決めたことが、永田町や霞が関に臆測を広げている。

黒川氏は、並み居る検察首脳の中でも「安倍晋三首相や菅義偉官房長官の覚えがめでたい人物」(司法関係者)とされ、「前例のない定年延長は、検事総長人事も絡めた官邸の介入」(閣僚経験者)と受け止められている。

誕生日の8日前に決まった定年延長

黒川氏の定年延長は1月31日の閣議で決まった。65歳が定年の検事総長を除き、一般の検察官の定年は63歳。このため2月8日に63歳となる黒川氏は、検事総長に昇格しない限り、誕生日に定年退官する予定だった。しかし、政府はその直前に「業務遂行上の必要性」(森雅子法相)を理由に過去に例のない定年延長に踏み切った。

政府側は「保釈中に逃亡した日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告の事件捜査継続を考慮して法務省が決めた措置」(官邸筋)と説明する。しかし、同事件の捜査は東京地検の担当で、「捜査実務では東京高検は関係がない」(司法関係者)。黒川氏の定年延長が決まったのは誕生日のわずか8日前。2019年度の補正予算が成立した直後だったが、政界では「次期検事総長に子飼いの黒川氏を充てて、検察全体ににらみを利かせるのが官邸の狙い」(立憲民主党幹部)との見方が広がっている。

黒川氏は有能な法務官僚として、政界と司法のパイプ役となる法務省官房長を約5年も務め、同省トップの事務次官を経て2019年1月に検察ナンバー2の東京高検検事長に就任した、文字どおりの検察エリートだ。

ただ、黒川氏には検事任官同期(1983年)の林真琴名古屋高検検事長(62)という「強力なライバル」(法務省幹部)が存在する。事務次官就任時にも「法務省側が推した林次官案を官邸が覆して黒川氏にした」(同)との噂も出た。

黒川氏は、検察首脳として安倍首相の意向を踏まえて共謀罪などの実現に奔走し、森友学園問題における財務省の公文書改ざん事件でも、佐川宣寿元国税庁長官ら関係者全員の不起訴処分を主導したとされる。このため、政界では「安倍政権のスキャンダルをもみ消す官邸の番人」などと呼ばれてきた。


東京高検検事長の「定年延長」、その本当の狙い 露骨な介入で脅かされる検察の政治的中立性

東京高検検事長の「定年延長」、その本当の狙い

(東洋経済オンライン)

政官界が注目する次期検事総長については、2019年暮れから水面下での人選が進んでいた。法務省が示した黒川、林両氏を軸とした複数の候補について、官邸側が黒川氏の起用を求めたことが、今回の「駆け込み人事」につながったとされる。

2018年夏に就任した稲田伸夫検事総長(63)は、慣例に従って2020年夏に約2年の任期で勇退するとみられている。その場合、序列から言えば検察ナンバー2となる東京高検検事長の黒川氏の昇格が順当だが、63歳定年によって「黒川氏は脱落し、(7月30日に63歳となる)林氏が滑り込みで検事総長に就任する」(法務省幹部)との見方が多かった。

同じタイミングでIR汚職捜査が終結

それだけに、あえて国家公務員法の定年延長の規定を援用した今回の定年延長措置が、「黒川検事総長実現のために官邸が使った裏技」(立憲民主幹部)との臆測につながった。もちろん、検事総長の人事は最終的に政府が決めるものだが、三権分立を堅持して法務・検察の政治的中立性を担保するために、これまでは「政界捜査を指揮できる検察トップの人事は、政治色を排除する聖域」(閣僚経験者)と位置づけられてきた。

このため、野党だけでなく与党内からも「官邸の露骨な人事介入とみられれば、政権への国民不信にもつながる」(自民長老)との声が出た。検察は2019年暮れにIR汚職事件で約10年ぶりに現職国会議員の逮捕に踏み切り、与党内でも「自民大物議員にも捜査の手が伸びて疑獄事件になるのでは」(公明幹部)との不安が広がっていた。

しかし、黒川氏の定年延長決定とタイミングを合わせたように、秋元司衆院議員(元内閣府IR担当副大臣、自民を離党)の収賄事件として捜査が事実上終結し、「事件の拡大を嫌がる官邸への忖度(そんたく)」(共産党幹部)との臆測を広げた。

2月3日から始まった2020年度予算案の審議でも、立憲民主など主要野党が「恣意的な人事」と追及した。これに対し、森雅子法相はゴーン被告脱走事件を念頭に「重大かつ複雑、困難な事件の捜査・公判に対応するため不可欠な措置」と説明。主要野党は「政権による違法、脱法行為にしかみえない」と攻勢を強めたが、森法相は「一般法の国家公務員法の適用で、違法ではない」と繰り返し強調し、首相も「法務省としての人事を閣議で決定したもの」と介入を否定して、論議は水掛け論に終わっている。


東京高検検事長の「定年延長」、その本当の狙い 露骨な介入で脅かされる検察の政治的中立性

東京高検検事長の「定年延長」、その本当の狙い

(東洋経済オンライン)

こうした状況について、弁護士出身の枝野幸男・立憲民主党代表は「何がなんでも(黒川氏を)検事総長にするためだとみんな思っている。首相を逮捕するかもしれない機関に官邸が介入するなんて、法治国家としての破壊行為だ」と批判をエスカレートさせた。しかし、政府側は「悪質なレッテル貼り。言わせておけばいい」(官邸筋)と冷笑するばかりだ。

ただ、司法専門家の間でも「今回の黒川氏の定年延長については、疑問点が多い」とする見方が少なくない。森法相らは「国家公務員法では、職務の特殊性や特別の事情から、退職により公務に支障がある場合、1年未満なら引き続き勤務させることができると定めている」と説明する。これに対し、専門家らは「検察庁法22条は『検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する』と定めており、検察官は勤務延長の対象外というのがこれまでの常識」と指摘する。

与党内から「いくら何でもやりすぎ」の声

さらに、定年延長の理由とされるゴーン被告脱走事件についても、「捜査の実務は東京地検の担当で、外国との交渉は法務省で行うので、東京高検が関与する余地はまったくない」(元東京地検特捜部の弁護士)と疑問視する声が支配的だ。

これまで安倍政権下では、小渕優子・元経済産業相の公選法・政治資金規正法違反事件や甘利明・元経済再生担当相(現自民党税調会長)の収賄疑惑などで、「有力政治家などはことごとく不起訴となってきた」(立憲民主党幹部)。だからこそ、与党内でも「いくら何でもやりすぎ」(自民長老)との声が出るのだ。

今回の経過を「官邸による恣意的人事との臆測が広がることで、警察も含めた司法全体に『政権の圧力』を感じさせるのが本当の狙い」(閣僚経験者)との見方も出ている。2019年10月、公選法違反疑惑などで菅原一秀・前経済産業相と河井克行・前法相が閣僚辞任に追い込まれ、それぞれに対する司法当局の捜査は現在も進行中だが、野党側は「今回の人事を受けて、現場の検察官が官邸に忖度して当該議員への捜査に手心を加える可能性も否定できない」(共産党幹部)と指摘する。

官邸サイドからは「半年後に黒川氏が検事総長にならなければ、人事介入疑惑は雲散霧消する。その時点で7月30日に63歳となる林氏も含めて退官させて、検事総長人事の若返りを図れば、国民の不信感も払拭できる」(政府筋)との声も漏れる。このため、与党内では「あえて官邸人事の威力を匂わせて霞が関官僚を萎縮させたうえで、結果的に肩透かしすることで国民の批判も封じる、という極めて巧妙な手法」(自民幹部)と解説する向きも少なくない。

著者:泉 宏



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