教育落書き帳

教育とは何か…子どもの視点を尊重し、親、伴走者、市民の立場から語ります。子どもを語ることは未来への信頼と希望を語ること。

《教育村》から避難する意味での《不登校》という現象

2013年04月14日 | 日本の教育
《教育村》から避難する意味での《不登校》という現象

▼福島の原発に批判的な人々はしばしば原発推進派の人達を一括りにして《原発村の人々》と称する。原発を推進することによって利益を得る集団に属する人達と言い換えてもいいかも知れない。そこに一定の決まり事がある訳ではないが、目には見えない、不文律があるのだと。

▼この《○○村》的思考は原発に限らない。日本の至るところにある。ごくありふれたーーそれが良いか悪いかは別にーー最も日本的な伝統的思考形態なのだ。例えば、学校内での決まり事、会社や仕事場でのルール、地域・町内会での決めごと、その土地独特の風土…等、枚挙にいとまがない。しかし、私達がそれを《○○村》と称する時、いい意味で使うことはまずない。そこにどんな批判が込められているのか?

▼日本人にとって《村》という存在との関係は複雑だ。悲喜愛憎こもごもである。現在、どの地方でも過疎化が進行して昔の面影はない。それには様々な理由が挙げられるが、その一つに--灯りにひかれた羽虫のように--若者達が都会のネオンに憧れ新しい生活を求めて《村》を捨て去った結果でもある。「なぜ若者達は《村》を嫌ったのか?」「いや、嫌ったのではなく追い出されたのだ」という人もいるだろうが、結論は同じようなものだろう。若者の居場所はそこになかったのだ。《○○村》という言い方には、そういう複雑な思いが秘められていて、単純ではない。

▼私達の関わっている不登校の問題もしかリである。それまでの学校的日常のあり方を《村》的と見るなら、不登校とはそこに居場所や自分らしい生き方を見出だせず、避難のため逃れた(はじき出された)子ども達なのである。それは単に学業が振るわなかったからというような単純な問題だけではない。しかし、原発推進派の人達から批判する人達に《原発病》という反論が返ってくることがあるように、もしかすると《○○村》の人達からは、自分達は精一杯一生懸命やっている、なぜ批判されるのかよく判らない、彼等は我が儘を言っている、くらいの認識でしか理解されないのかも知れない。

▼批判する人々には、そこでは生きていけないという思いがあるのに、《○○村》と批判される人達からは一向にその問題点が見えないということ、ここに互いに議論し理解し合うことの難しさがある。不登校に限って言えば、それを批判し合うことは実に不毛なのである。理解を得られないのに学校を批判しても消耗なのである。適正な理解を得るには《百年河清を待つ》覚悟が必要だ。だが、実際には不可能なこと。子どもは日々変化している。論争にエネルギーを費やするよりは自分に合った居場所や勉学・活動の場所を探す方がずっと得策なのだ。

▼ところが、ここにも困難がある。親御さんは不登校の我が子にどのように関わるか?親御さんが子どもの味方であるか学校的論理の代弁者であるかで、子どもの位置付けは180度変わる。親御さんが学校神話にはまっている場合には辛いプレッシャーが次々と子どもにふりかかる。結果、益々立ち直れなくなる。だから、不登校支援の場合には、まずは親御さんの理解を得て、子どものサポーターになってもらうことが何よりも大事なことになる。この要件が満たされているならば、最終的にはその子は必ず救われると断言してもいい。

▼だから、私達はフリースクールの場において日々不登校の子ども達と接するのは勿論、親御さんとの会合(教育広場&親の会)も毎月開いている。この両輪がうまく噛み合った時、たとえその子が今どういう状況にあろうとも、家庭内で親子の良好な状態が保たれ、その後の子どもの心身状態に不安を持つことはなくなる。そういう家庭の状態がバックにあるならば、フリースクールでの日々の活動は、同質性を前提とする学校では中々認められない様々な個性のある仲間と触れ合え、各々が個として認められる体験を持つことは、その後の子どもの感性に実り豊かな心を醸成することになるだろう。

▼ことさらに不登校を誇示する必要はないし、また自己卑下することも無用のことである。それこそが自分らしい生き方であると理解し、それができる今の幸せな状態を噛み締め、それを応援してくれた親御さん等に対しても感謝の気持ちを持てるようになるといい。そういう思いが確かになるならば、安定した気持ちで自分の未来へ挑戦する気持ちも湧いてくるはずである。《情けは人のためならず》である。その時、「不登校も過ぎてみれば貴重な体験だった」と思うはずである。

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