新しい戦争、New warfareは、国とテロ組織が戦うことを示す戦争の呼称であるとし、テロ組織という非国家主体を相手とするテロ戦争である。そのはじまりは、事件にあった。1993年2月26日、世界貿易センタービル爆破事件 2001年9月11日、アメリカ同時多発テロ事件
テロ戦争としてテロの呼び名がわたしたちの日常に使われるようになった。飛行機の爆弾テロが、また、ニュースになる。これは未遂のようだが、テロの恐怖は測り知れない。朝日新聞デジタルにニュースの本棚で、テロルの言葉を取り上げた。政治的暴力に焦点を当てる。言葉の意味をテロリズムから説き起こす。
「テロ」とは何か 一方的断罪から目覚めて 黒木英充
2015年12月20日05時00分
> 言葉の意味は時代により変化するとはいえ、「テロリズム」の変貌(へんぼう)ぶりは突出している。9・11事件の余燼(よじん)くすぶるなか、カナダの国際政治学者ジョナサン・バーカーが『テロリズム』でまず強調したのも、18世紀末の革命直後のフランス政府による、ギロチンを使った反体制派殺戮(さつりく)(2年間で4万人ともいわれる)がこの語の始まりという事実だ。そもそもテロは国家が行っていたが、いつのまにか非国家組織が行う無差別大量殺人となり、さらにはイスラム過激派が行うものと限定されつつある。たとえば、10月にドイツで、反イスラム・反移民の立場から女性市長候補者に刃物で切り付けた者は「テロリスト」とは呼ばれないのだ。
> フランスの現代イスラム学者ジル・ケペルによる『テロと殉教』は、イラク戦争後の中東において深まるイスラム主義的暴力と対テロ戦争の応酬を、二つの「大きな物語」のもたれ合いとして描き出す。侵略者相手の聖戦に命を捧げれば尊い殉教者になれるというイデオロギーと、戦争でテロリストを根絶すれば中東の民主化が実現できるという米国ネオコンのイデオロギーとの相互依存関係である。
> その結果は何か。アフガニスタン、イラク、シリアなどの国家システムの破壊と内戦であり、難民の大量流出である。問題は何一つ解決しないどころかますます深まっているのだ。国際政治学者・土佐弘之は『アナーキカル・ガヴァナンス』にて、テロをめぐる野蛮・文明論から帝国論や積極的介入論に至る現代思想の多数の成果をもとに、非対称的で絶対的な敵対関係と世界資本主義による格差拡大の動きとが絡まり合いつつ世界各地に浸透し、「世界内戦」の状況が出現していることを指摘する。これは第三次世界大戦の緩慢なる始まりかもしれない。
テロ戦争としてテロの呼び名がわたしたちの日常に使われるようになった。飛行機の爆弾テロが、また、ニュースになる。これは未遂のようだが、テロの恐怖は測り知れない。朝日新聞デジタルにニュースの本棚で、テロルの言葉を取り上げた。政治的暴力に焦点を当てる。言葉の意味をテロリズムから説き起こす。
「テロ」とは何か 一方的断罪から目覚めて 黒木英充
2015年12月20日05時00分
> 言葉の意味は時代により変化するとはいえ、「テロリズム」の変貌(へんぼう)ぶりは突出している。9・11事件の余燼(よじん)くすぶるなか、カナダの国際政治学者ジョナサン・バーカーが『テロリズム』でまず強調したのも、18世紀末の革命直後のフランス政府による、ギロチンを使った反体制派殺戮(さつりく)(2年間で4万人ともいわれる)がこの語の始まりという事実だ。そもそもテロは国家が行っていたが、いつのまにか非国家組織が行う無差別大量殺人となり、さらにはイスラム過激派が行うものと限定されつつある。たとえば、10月にドイツで、反イスラム・反移民の立場から女性市長候補者に刃物で切り付けた者は「テロリスト」とは呼ばれないのだ。
> フランスの現代イスラム学者ジル・ケペルによる『テロと殉教』は、イラク戦争後の中東において深まるイスラム主義的暴力と対テロ戦争の応酬を、二つの「大きな物語」のもたれ合いとして描き出す。侵略者相手の聖戦に命を捧げれば尊い殉教者になれるというイデオロギーと、戦争でテロリストを根絶すれば中東の民主化が実現できるという米国ネオコンのイデオロギーとの相互依存関係である。
> その結果は何か。アフガニスタン、イラク、シリアなどの国家システムの破壊と内戦であり、難民の大量流出である。問題は何一つ解決しないどころかますます深まっているのだ。国際政治学者・土佐弘之は『アナーキカル・ガヴァナンス』にて、テロをめぐる野蛮・文明論から帝国論や積極的介入論に至る現代思想の多数の成果をもとに、非対称的で絶対的な敵対関係と世界資本主義による格差拡大の動きとが絡まり合いつつ世界各地に浸透し、「世界内戦」の状況が出現していることを指摘する。これは第三次世界大戦の緩慢なる始まりかもしれない。