学習語彙であるから、覚えるということで言語習得の出発を学習者に説明する。はじめに、そのことから入門を記述する、というときに、使用頻度の高い語彙として基本語彙をまず方法に挙げるのは、その通りである。ところが、基本語彙には一方で、基礎語彙の捉え方もある。しかし、この入門書ではその説明が見えない。索引に求めても基礎語彙はないので、学習の基礎となることを捉えようとしないかに思える。これは教授法にもかかわることであるから、基礎という点では、学習者の習得方法にも重要であって、語彙習得には文法と形式があることを十分に知る必要がある。
すぐにわかることなのであるが、漢字語彙の習得にその表記のこと、動詞の活用変化のことなど、これは、ただ習得数の多さを言うだけなら、それまでのことで、日本人が日常生活と教育を経て2000文字の漢字習得をするのを、日本語学習者は短期集中ではわずか2年足らずで要求されていることや、また、語の形態変化で文法規則があるからその習得法があるということなどを考えずして、ただ変化形の習得法によって動詞活用全体に及ぶことを説明しないのは、語彙のとらえかたに、基礎的な過ちを生じさせる。
これを漢字の習得に当てはめて、学習者はブロックに分けて覚えることを思い合わせれば、その方法があることがわかる。語彙論に基本語彙があり、それを語学学習に生かすには、言語習得の基礎語彙と違いがあることを知らなければならない。学習には習得順序があるとすると、それを教育方法にして、漢字の説明、動詞の活用変化の規則性をもってステップアップが行われる。
なお、この入門書の第2分野、執筆を担当する小森和子氏は、研究社出版の事典、10表記・語彙を担当するが、その項目217ページでは、基礎語彙を上げている。基本語彙には基礎語彙を参照として、記述内容には、配慮がある。
研究社
日本語教育事典
日本語教育に関わる最先端の知見を結集!
著者 近藤安月子、小森和子〔編〕
刊行日 2012年7月23日