読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

「男」と言う漢字

2009-01-08 09:04:17 | 漢字

「男」と言う漢字の成り立ちについて今も小学校などでは田で力を出して働くので男であると言うように教えられているのだろうか。阿辻哲次氏は岩波ジュニア新書「漢字のはなし」の中で『「男」は田と力からなる会意の文字で、「田んぼで力仕事に従事する者」の意味を表しています。農作業をする者という意味から、やがて一般の男性を意味するようになったというわけです。』と書いている。これは中国紀元一世紀後漢の許慎の「説文解字」の解説そのままである。田は田畑の事で解るが、力は何故、腕力の力を意味するのだろう。抽象的で眼に見えない概念は象形の文字にはなりにくく力という部分は腕力の事ではなく田で使われる鍬の形を表したものであるとするのが白川静氏の岩波新書「漢字」である。「男」は田で働く農夫やそこで使われる農器具を管理する役職の名であると言う意見である。男を表す文字は「士」や「夫」である。爵位に「男爵」と言う位が有るが「男」が役職の名であった名残がここに有ると説明されるのである。許慎は甲骨文字や金文の存在を知らず彼の漢字の成り立ちについての理解は限界が有り、誤りも有る事は今ではよく知られているところである。