おじさまを転がせても、彼の母親に嫌われる港区女子。慶應一族から受けた、強烈な洗礼

2017年03月30日 | 芸能ニュース
おじさまを転がせても、彼の母親に嫌われる港区女子。慶應一族から受けた、強烈な洗礼
東京カレンダー 3/30(木) 5:20配信

港区女子。

それは“女”としての魅力を最大限に利用し、したたかに生きる女たち。

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一方、東京では高学歴やキャリアを武器に、自立して生きる女性たちは口を揃えてこう言う。

「私、港区女子になれない」

慶應義塾大学卒、大手広告代理店勤務の篠田涼子(29)もそのうちの一人。 彼女の目の前に、典型的な港区女子・香奈が現れる。

香奈は涼子の大学時代の元カレ・洋輔に接近。2年間不倫関係にあった倉田と別れ、すぐに洋輔の家で同棲を開始。

傷心の涼子に、大学の先輩・麻美が、IT企業を経営するイケメン・小林誠を紹介してくれたが、彼の意地悪な発言に涼子は憤慨。

その後、久しぶりにばったり香奈と遭遇。そこで香奈は涼子に、洋輔との結婚を匂わせ、涼子の心を再びかき乱すのだった。

おじさまを転がせても、彼の母親に嫌われる港区女子。慶應一族から受けた、強烈な洗礼
(写真:東京カレンダー)
港区女子が手に入れたい、強固な肩書
「ニューヨーク駐在が決まりそうなんだ。」

日付が変わる頃、めずらしく鼻歌を歌いながら上機嫌で帰宅した洋輔が、キッチンに立つ香奈に向かって大声を出した。

その声色には、隠し切れない喜びが滲んでいる。

洋輔は総合商社の財務部門におり、ニューヨークもしくはロンドン駐在の可能性がある、と以前から言っていた。そして、どちらかというと俺はニューヨークに行きたい、とも。

「すごい!希望通りニューヨークなんて、洋輔くんさすがね。」

飲んで帰ってくると日本茶を欲しがる洋輔に湯呑を差し出しながら、模範解答で応じる。尊敬をたたえた眼差しを送ることも、忘れない。

「香奈も一緒に行ってくれる?…ニューヨーク。」

隣に座った香奈を抱き寄せ、弾んだ声を出す洋輔の右胸に頭を預けながら、香奈は口元を緩ませた。

「もちろんよ。…嬉しい。」

既に化粧を落としている香奈があどけない笑顔で洋輔を見上げると、彼は満足そうに頷き、唇を近づけるのだった。

このタイミングで駐在の話が出るなんて、追い風だ。

来月、香奈は30歳の誕生日を迎える。きっと、そのタイミングでプロポーズされるに違いない。

男に頼り男の愛を利用して生きてきた香奈は何も持っていないが、洋輔と結婚すれば強固な肩書きが手に入る。

慶應卒商社マンの妻、という肩書きが。

その肩書きは香奈にとって、バーキン以上に魅力的だ。何も持たぬ30歳目前の女が手に入れるべきものは、好条件の男との結婚に違いないのだから。


慶應一族からの、強烈な洗礼
正式なプロポーズを心待ちにする香奈ではあったが、気がかりなことがあった。

まだ決定ではないニューヨーク行きを2人であれこれ妄想している時に、洋輔がぼそっと言ったひとことが気になっている。

「問題は、母親だな…。」

洋輔には、東大卒の父、そして洋輔と同じ慶應幼稚舎出身の母と2人の姉がいる。姉が2人もいる時点で気が重いのに、1人は報道記者、もうひとりは外資系投資ファンド勤務と揃いもそろってバリキャリなのだという。

男女の子を持つ母親は、息子の結婚相手を、必ず自分の娘と比較し、貶すものだ。

それに、篠田涼子をはじめ、香奈は高学歴女が苦手だ。というより、高学歴女たちが香奈を勝手に目の敵にするのだ。

「まずは食事会をセッティングするよ。」

憂鬱な気持ちが顔に出ていたのだろうか。洋輔は心配そうに顔を覗き込み「大丈夫だよ、俺に任せて」と言ってくれたが、香奈は嫌な予感しかしないのだった。

おじさまを転がせても、彼の母親に嫌われる港区女子。慶應一族から受けた、強烈な洗礼
(写真:東京カレンダー)
洋輔の両親が会食に指定したのは帝国ホテルの『なだ万』で、そのセレクトも香奈の気持ちをさらに憂鬱にさせた。

都内の一流ホテルは軒並み制覇し、ヒールを鳴らして大理石のロビーを闊歩してきた香奈ではあるが、帝国ホテルはやはりどこか、外資系ホテルとは一線を画す空気が漂っている。

決して口に出さずとも、選民意識の強い人々が集う場所―。

洋輔に続き個室に入ると、中には既にエルメスのカレを巻いた洋輔の母親と思われる女性、そしてその奥には父親であろうロマンスグレーの紳士が着席していた。

「問題は、母親だな…。」

洋輔の言葉を思い出し、香奈は身を固くする。年上の男なら掌で転がせる自信があるから、父親はなんとかなるだろう。しかし、年上の女には好かれた試しがない。

それでも香奈は、洋輔の母親に気に入られるべく、精一杯の気遣いをしてこの場にやってきた。

普段なら絶対に買わないコンサバなネイビーのワンピースを買いに走り、ピンクのバーキンは封印。フルラのバッグを渋々持ってくる可愛げも見せた。

「香奈です。初めまして。」

気に入られたい一心でよそゆきの声を出す香奈に、洋輔の母親は口角だけを上げて応える。

そして挨拶の言葉もそこそこに、会ってまだ5分も経っていないというのに、香奈の出自を問うのだった。

「香奈さん、学校はどちら?」


女は愛嬌さえあれば生きていける…?
「…大学、ですか?名古屋の…女子大です。」

いきなりのカウンターパンチに香奈が眩暈を覚えて茫然としていると、洋輔の母は美しいアーチを描く眉をぴくり、と動かし、躊躇なくこう続けた。

「あら…そうなの。洋輔、結婚を考えているわけじゃないわよね。」

その言い方は“結婚なんて、当然考えてないでしょう”、と言わんばかりで、香奈は絶句してしまう。

返す言葉が見つからず助けを求めて洋輔を盗み見たが、彼は否定も肯定もせずただ俯いているのだった。

―何が俺に任せろ、よ…。

香奈を愛していると、ニューヨークについてきて欲しいと言った洋輔。それなのに香奈が母親に侮辱されても、否定するどころかフォローする気配もないのか。

その様子にふつふつと怒りが湧いてきたが、ぐっとこらえる。そして、洋輔との結婚が幸せへの扉だと思い込もうとしていた自分の浅はかさに気づくのだった。

良家の子息だかなんだか知らないが、言いたいことも言えない男と生涯を伴にして、幸せになどなれるはずがない―。



出自確認が済んだ後の食事会は、香奈の存在を無視したまま進んでいった。

車寄せで両親を見送った後、洋輔は香奈にバツの悪そうな表情で「ごめん」と詫びたが、そんな言葉は香奈の心に何一つ響かない。

家に戻る気になれず、香奈は1人けやき坂のスターバックスに立ち寄ることにした。

おじさまを転がせても、彼の母親に嫌われる港区女子。慶應一族から受けた、強烈な洗礼
(写真:東京カレンダー)
―女は、愛嬌さえあれば生きていける。

香奈はずっとそう思って生きてきた。

しかし世の中には、学歴やキャリアのない女を見下し、「私たちは格上の女」と言わんばかりの優越を滲ませてくる人種が存在する。

格上だと思うなら余裕を持った態度で接すれば良いのに、持たざる者が自分たちのテリトリーに侵入しようとすると、あからさまに目くじらを立てるのだ。

悔しいが、香奈の味方だと思っていた洋輔がまったく頼りにならない以上、あの母親との戦いに勝ち目はないだろう。

苦々しい思いを苦いコーヒーで洗い流していると、普段全く使わないフルラのバッグから、LINEの着信音が鳴った。

スマホをタップし、トーク画面に表示された名前を確認して香奈は目を見開く。

“香奈、元気にしているのか?”

そこに表示されていた名前は、倉田だった。

香奈が倉田の家を飛び出してから、3か月が経つ。

倉田の愛を利用していたはずの自分が、実際はいいように利用されていたと悟った時の絶望や虚無は、まだ癒えていない。

しかしだからといって、香奈に対する愛がなかったわけではないのかもしれない。

時間が経って冷静になると、そんな風にも思うのだった。

倉田からの短い文面を眺めていると、不思議と固く冷たくなった心に体温が戻る気がする。香奈はしばらく逡巡し、そして、頭に浮かぶ文字をそのまま返信した。

“逢いたい”

私はただ、幸せを掴むため、自分の欲望に素直に生きているだけ。

幸せの扉の正門が開かないなら、裏口を探すまでだ。その生き方の、何が悪いと言うのだろう?


▶NEXT :4月6日木曜更新予定
洋輔に幻滅し、倉田の元に走る香奈。港区女子・香奈の、幸せはどこにある…?
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