ハーバード大が突き止めた「年をとるほど脳が活性化する条件」

2020年10月17日 | Science 科学
ハーバード大が突き止めた「年をとるほど脳が活性化する条件」

10/15(木) 11:16配信
106


プレジデントオンライン

写真・図版:プレジデントオンライン

脳には年をとっても衰えない底力があることが、さまざまな研究から明らかにされている。中には、年をとるほど向上する能力もあるという。諦めるのはまだ早い。知られざる脳の可能性の最新研究報告。

【この記事の画像を見る】

■言語力、空間推論力など、4種で高齢者が優る

 「年をとれば物覚えが悪くなり、頭の働きが鈍くなるのは仕方ない」という既成概念を覆し、人の脳には加齢に抗する底力があることが近年の脳研究で明らかになってきた。脳は高齢になっても可塑性(自分とその周辺の状況に応じて変化する能力)を維持し、誰もが加齢に従って認知力の低下を体験するとは限らない。逆に中年以降に高まる能力もあるということなのだ。

 研究者に加齢と脳の関係を再考させるきっかけとなったのは、約5000人を対象に加齢による脳の様々な変化を半世紀以上も追跡調査してきたワシントン大学の「シアトル縦断研究」。認知力を測る6種のテスト中4種で、高齢者の成績は20代よりも良かった。記憶力と認知のスピードには加齢に伴う低下が見られたが、言語力、空間推論力、単純計算力と抽象的推論力は向上していた。この研究は加齢による記憶力の低下には個人差が大きいことも明らかにした。被験者の15%は高齢になってからのほうが若いときより記憶力が優れていたのだ。

■40歳から69歳のパイロットの認知力を比較

 カルレ・イリノイ医大の研究でも意外な結果が出た。40歳から69歳のパイロットの認知力を比較したところ、新たなフライト・シミュレーターの操作法を習得する時間は高齢者のほうが長かったが、衝突回避の成功率は高齢者のほうが高かったのだ。

 fMRI(機能的磁気共鳴画像法)やSPECT(シンチグラフィー)といった造影診断法を利用しての研究も進み、脳には加齢に対抗するメカニズムがあることも証明された。トロント大学のシェリル・グレディー博士によれば、高齢者はひとつの作業の達成に向けて若年層が使わない脳の部位も活性化させている。

 例えば記憶処理を主に担う側頭葉内側部が加齢により不活性化するに伴い、高齢者は前頭前皮質腹内側部、前頭前皮質背外側部も記憶処理に動員し、注意力といった認知機能の補強に前頭葉と頭頂葉の両方を活用している。若年層は単純作業には左右の片側の脳しか使わないが、高齢者では左右の脳を活用する傾向が見られ、活用する部位が多いほど成果は良い。

 高齢者は若年層より物の見方が前向きになることも南カリフォルニア大学の研究が証明している。高齢になると情動反応を司る扁桃体がネガティブな刺激に反応しにくくなるのだ。また40歳を過ぎた頃からネガティブな記憶よりポジティブな記憶のほうが増え、その傾向は80代まで続く。つまり感情に左右されにくく、ストレスに強くなるということだ。

 グレディー博士によれば高齢者の「頭の使い方」が変化する理由のひとつは脳の一部の機能低下を補うということだが、それだけではないようで、同じ結論に達するのに様々な脳の部位を使うのでより深い洞察が伴い「知恵脳」になるとも考えられる。

 「ですから国や企業のリーダーには高齢者のほうがふさわしいともいえるのです。若い頃と変わらない『脳力』を持つ高齢者は少なくありません。脳には優れた可塑性があり脳の備蓄、維持、補償がうまくできていれば70代、80代になっても人は優れた脳力を保てます」と、グレディー博士。脳の備蓄とは知識や技能の蓄積を意味し、維持とは脳細胞の自己修復力を意味する。補償とは前述のように一部の機能低下を他の脳の機能で補うシステムのことだ。

■瞑想により活性化する、高齢者の脳の力

 脳の「備蓄」「維持」「補償」を助ける外的要因として研究者が奨励するのは健康な食生活、適度の運動、様々な活動による脳への刺激、積極的な社会参加だが、近年特に注目されてきたのは瞑想の効果だ。

 「加齢による脳の機能低下の多くは瞑想で防げる」とするのは24歳から77歳の100人を対象に加齢による灰白質(神経細胞の細胞体が密集する部分)の変化を調べたカリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究報告。全般的に加齢による灰白質の体積減少は見られたが、瞑想をした人は減少が抑えられ、体積が減少した部位も狭かった。

 さらにハーバード大学のサラ・ラザール博士によれば、瞑想には脳の劣化防止だけではなく実際に灰白質を増加させる効果もあるという。25歳から50歳の被験者を対象に8週間のマインドフルネス・トレーニングの前後の脳を調べたラザール博士の研究では、トレーニング後には海馬、後部帯状皮質、側頭頭頂接合部と小脳の灰白質の濃度増加が確認された。これらは学習および記憶処理、感情調節、自己言及性、および物の見方に関与する脳領域だ。

 マインドフルネス・トレーニングはストレス低減を主目的として考案されたプログラムで自分の体の感覚に意識を集中する「ボディスキャン」、ヨガと瞑想などを日課とする。「脳も筋肉と同じで鍛えればそれだけ育ちますが、脳を鍛えるには激しい運動をする必要はなく、頭を雑念から解放し休ませる瞑想やヨガ、気功などが効果的なのです」とラザール博士は語る。

 瞑想や祈りの最中の脳の変化を長年にわたって調べてきたトーマス・ジェファーソン大学のアンドリュー・ニューバーグ博士によれば、記憶力や認知力に関わる前頭葉を活性化させるには呼吸に意識を向けたり、一点を見つめたり、マントラや暗示の言葉を繰り返すなど、意識を集中させる瞑想を1回15分から1時間、一日に1、2回実践するとよいそうだ。

ジャーナリスト エリコ・ロウ 写真=Adobe Stock




y_k***** | 2日前

このような話題で思い浮かべるのは、
伊能忠敬です。
55歳から17年間かけて全国を測量し、
日本地図を完成させた偉業は、
本当に凄いことだと敬服しています。…

返信2

751
46

jas***** |1日前

伊能忠敬は若い頃から事業家として成功していたから・・
急に55歳で目覚めて開花したりしないって忘れがちだけど。
14
4
ava***** |1日前

コメ主さんと同様にこの手の話を聞くと伊能忠敬の事を真っ先に思い浮かべます。

知らない人が多けど、伊能忠敬は事業化としても成功したが、その前に子供の頃から天文学に興味があって50歳で隠居した後、日本で月のクレーター を見た麻田剛立(月の表のクレーター に名前がある日本人の2人のうちの1人)の弟子、高橋至時に弟子入り。

地球の大きさを知りたく江戸の中だけで計測するが誤差が大きくもっと広大な範囲を測量する必要性を実感。
ただ、当時は他藩の移動は御法度。
でも、ちょうどその時、幕府が日本地図の製作を行う話を高橋至時が聞いてそれを利用。

伊能忠敬にとって本当にやりたかったのは「日本地図の作成」よりも「地球の大きさを知る」こと。
それでも、あの地図のクオリティは本当に凄い!

興味を持って歳を取ると脳も活性化するんでしょうね。
15
0

コメントを書く

zho***** | 2日前

要するに年取った方が瞬発力は下がるが、時間的に余裕があれば洞察力は年寄りの方が優れている、ということかな。
 山本周五郎は自分は50過ぎてからようやく良い作品を書けるようになったと言ったのは経験豊かになっただけではないということか。

返信0

556
73

hap***** | 2日前

歳とるほど脳が活性化することがわかった事は嬉しい。
「脳を鍛えるには激しい運動をする必要はなく、頭を雑念から解放し休ませる瞑想やヨガ、気功などが効果的なのです」とあるが、"気功"ってどういう気功を意味しているのかな?気功には中国気功から日本独自の治療気功から多種多様だと思うが、ただ呼吸法のこと言っているのかな?
もう少し具体的な事例を挙げて配信してほしい。

返信1

325
64

atk***** | 2日前

何をするにも遅すぎるということはない。
ただ記事によると、皆がそうだとは限らない、とも言っている。
言えることは、年齢に関わらず自分の能力を過信も悲観もすべきではない、ってことだと思うな。

返信0

121
9

tt9***** | 2日前

現在84歳になるが、脳力の減退を自覚するのは、記憶力とかIT関連の機器類の扱い方が今ひとつ理解できない点だが、論理的な総合判断には全く衰えを感じない。この研究を見て、納得する思いだ。

返信4

135
15

yok***** | 2日前

筋肉と同じで、使わないと衰えるのは、当たり前だけどね、

定年で、のんびりしてれば、そりゃ機能低下するよな

動けるなら、仕事するのが、一番の活性化だと

思うけどね、新しい仕事に、挑戦するのが良いと思うよ

一から覚えないといけないからね

返信1

129
18

mal***** | 2日前

<高齢になると情動反応を司る扁桃体がネガティブな刺激に反応しにくくなる。またネガティブな記憶よりポジティブな記憶のほうが増える>

これアメリカの研究らしくポジティブにとらえられてるけど、これまさに今直面してる老人の問題だと思う。

つまり他者に対して同情心も罪悪感も湧きにくくなって、例えそういう感情を一瞬持ったとしても、その自分にとってネガティブな記憶はすぐ忘れちゃうということ。

だから、免許返納しないし、死亡事故起こしても平気な顔してられる。

老親を持っている人は皆、この「自分は絶対正しいポジティブ(?)思考問題」に多かれ少なかれ悩んでいて、経験上分かっているはず。

特に、免許返納の問題は法改正しないともう一刻の猶予もないよ。

返信4

194
45

tasogare-sr | 2日前

今までの世の中の在り方として、若い人の脳の処理スピードがもてはやされたんだろうね。でもそれならAIのほうが早いのかな。
年を取ってから伸びてくる脳力が最近注目されるようになったということでしょう。
働き方改革で70歳まで働こうって言ってるけど、ガタイのほうが元気なら何とかやれそうかな。スピードより納得感とか、満足感を大事にする世の中に変われば年寄りの働き場所も増えるだろう。

返信1

67
8

y_s***** | 1日前

若い頃から偏頭痛持ちで、たまに処方薬を貰いに行く何年かに一度「一応CT撮ってみよっか」となるんだけど、今年の3月に、7年振りに写真撮って貰ったら先生にビックリされた。どこにも萎縮がないし、密度も水分量も理想的!この歳(48ですw)で有り得ない!と。
7年前の写真は1箇所かすかぁ〜に萎縮はあるけど年齢相応だって言われたが、そんなのもみんな跡形もなくなっていた。

何が変わったかと言うと、5年前から始めたヨガだと思う。最初の3年は週に1回とたまにイベントに行ったり…から段々増えて、ここ2年は週5,6回は行ってる。ガンガン汗かいて筋肉使うクラスが好きなので、瞑想とか特に気にしてないけど、先生のリード通りにやったら、無意識に瞑想効果?は入っていると思う。
最後のしかばねのポーズで、大好きな海辺にブッ飛んでるのは普通、身体より中身がブワワ!とデカくなる感じ、とかもたまにあるよ。

返信0

37
3

kum***** | 2日前

狂ったコンピューターは正しい自己診断を下せない。

導き出した答えが間違っていると第3者が指摘しても、それを受け入れず自分が正しいと判断する。

インプット、アウトプットが正しく成されないのは自分が悪いのではなく、インターフェイス、外部ユニットが悪いと判断する。

活性化することと、正否の判断力が上がるかは別問題だと思います。



audi | 1日前

高齢者は長く生きている分、知識も経験もあり、若者と比較して日常生活、仕事上の困難に対しての処理能力は優れていると思う。
又、そういう場に出会っても慌ててしまう若者と違い、何とかなる筈と心を落ち着かせる事も可能。
パイロットも高齢者は今までの何千回というフライトからベストの対処方法を導き出す。実際にあった空でのアクシデントでも、フライト経験豊富な年配の機長が機転の利く判断で乗客の命を救っている。

返信0

5
0

ram***** | 2日前

そうですよね。歳をとった人のほうが物事の例を出して教えたりするのが上手だったり、作家さんはどんどん良いものができてくる。
歳をとったからといって諦めることは全く無く、むしろ学んだことの応用が得意になっていくので積極的にチャレンジしていくべきですね。
いい情報をありがとうございます。

返信1

18
3

eaj***** | 1日前

スポーツと同じ。
瞬発能力はやはり10代から20代がピーク。
あとは落ちるだけ。

だけど、日々訓練している人は衰えの速度は遅くなる。
また、日々訓練している人は引き出しも多くなる。

そのため、総合能力は40代以降と言われる。

日々訓練している人は90代でもきちんと思考能力が優れている人もいる。
中曽根さんは死ぬまで勉強してたらしいしね。

返信2

14
3

ちょっと一言 | 2日前

全体像が掴みにくいので違うかもしれないが・・・
抽象的認知や飛行機操縦みたいな「経験が重要になる話」で、「年を取るほど脳が活性化」というのは、ちょっと違う気がするなぁ。
自動車運転で、若い人はレーサーには向いているけど、御料車の運転手には向いていないような感じか。

返信1

20
7

k_t***** | 1日前

経験値みたいのが測定された感じなのかな、
機能が違うということは適性の違いとかも。
すると、意外に年功序列なんかも平均的に
見れば良いのかもね。

返信0

3
0

ボンバーマン | 2日前

小難しい事を書いているが、単純に長い人生でノウハウが貯まれば考え方が変わり、社会適応能力が高まるからでしょ。単純にクルマの運転は40~50代が一番事故率が低いのも運動神経ではなく、運転ノウハウと運動能力の総合力が優れているからでしょ。

返信0

11
2

veg***** | 2日前

氷河期世代40代をもはや手遅れとして敬遠してきた大企業や役所の人事の方々も考えを見直してくれるといいのだけど。

返信0

22
2

usa***** | 2日前

瞑想はいまや、私の日課。最高のこころの健康法です。「我」という牢獄から、ひととき解放されます。イチローさんをはじめ、多くの有名人が実践しておられます。なかでも仏教の創始者・ブッダは達人です。
6年間にわたる難行苦行の無意味さを知り、菩提寺の下で静座瞑想したブッダ。ついに、この世の真理である「無常」「無我」にめざめました。いわゆる「悟り」です。これも脳内の出来事には違いありません。脳科学で解明されつつあります。
深い瞑想の境地では、脳内の神経伝達物質であるセロトニンなどがたくさん分泌されることがわかっています(ちなみに菩提樹の実にはこの物質が大量に含まれています)。「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンは、こころを安定させ、ポジティブな気持ちにさせてくれます。
コロナ禍の現在、おびただしい”情報ウイルス”に毒されないように、瞑想というワクチンを打つことで反撃しています。

返信0

12
4

ptu***** | 1日前

夢のある話ではあるけど気休めでしょう。
その証拠に明らかに年寄より若者の方が活躍してる絶対数が多いし、身の周りを見ても年配者の仕事できないっぷり半端ない。
ふんぞり返って偉そうにしてるだけで革新的な案も出なければ体動かすでもない。
割合としてはとても低いレベルでごく稀に優秀な年配者がいる程度。

返信0

11
5

mis***** | 1日前

この記事もそうだが実用的な研究論文の
ほとんどがヨーロッパかアメリカの大学
だらけで、ノーベル賞が多いのは必然だなと思う。日本の大学も頑張れ。

返信0




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 河村幹事長が17日訪韓 関係... | トップ | 歌謡カラオケでギター連中の... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Science 科学」カテゴリの最新記事