世界経済の「新たな要」となった台湾の半導体大手TSMCが独り勝ちできる理由

2021年05月26日 | デマ吐きネット
世界経済の「新たな要」となった台湾の半導体大手TSMCが独り勝ちできる理由

5/10(月) 18:00配信
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クーリエ・ジャポン

台湾に本拠地を置く半導体製造企業TSMC(台湾積体電路製造)Photo: Costfoto / Barcroft Media / Getty Images

供給不足と熾烈な開発競争が続く半導体業界で独り勝ちしている企業がある──TSMC(台湾積体電路製造)だ。英紙「フィナンシャル・タイムズ」は、台湾にある同企業を徹底分析した長編記事を掲載した。

【画像】TSMCの半導体チップ工場内部
「魔法の半導体」で不動産価格も高騰

リー・ターセンは少年時代、見上げるようなサトウキビ畑を歩いて学校に通っていた。それから約40年。大人になった彼は不動産ブームに湧く故郷の善化で、その畑を売って生活している。

善化は台湾南部の町だ。さびれた田舎町だったが、世界最先端の半導体工場の建設が決まって以来、建設ラッシュが続く。

この町に、3nm(ナノメートル)プロセスの半導体チップ製造工場を建設しているのは、半導体受託生産の世界最大手、TSMC(台湾積体電路製造)だ。現在の最先端チップよりも動作速度が最大70%速く、消費電力も少ないとされる3nmチップは、スマートフォンからスーパーコンピュータまで、あらゆる用途への利用が期待されている。

「昨年は工場に隣接する農地の価格が3倍にはね上がった。当社は創立10年だが、昨年の取引高は過去最高だった」とリーは言う。不動産会社センチュリー21の現地支店を率いるリーは、新築のアパートやタウンハウスが次々とTSMCのエンジニアに売れていく様を目の当たりにしてきた。

しかしTSMCの新しい半導体製造工場、いわゆる「ファブ」は、台湾南部にとどまらず、世界全体に影響を及ぼす。半導体の世界では、ファブこそが宇宙の中心だ。

この新工場は、今のところTSMCと韓国のサムスン電子だけが使いこなせる3nmプロセス技術を使って、来年から量産を開始する。現在の最先端プロセスは5nmだ。チップに集積されるトランジスタが小さければ小さいほど消費電力は少なく、処理速度は速くなるため、新しい3nmチップは顧客に大きな優位性をもたらす。

リーによれば、新築のアパートやタウンハウスが次々とTSMCのエンジニアに売れるため、TSMCの善化工場の周辺では農地の価格がこの1年で3倍に跳ね上がったという。

米中の技術競争にも巻き込まれる

新工場の敷地面積は16万平方メートル、サッカー場22個分に相当する。そしてこの工場を運営するTSMCもまた、世界の半導体製造市場を支配する巨大企業だ。

これまでは知名度も低く、話題に上ることは少なかったが、最先端技術への巨額の投資と市場での影響力の増大が、この台湾企業を世界の表舞台へ引きずり出そうとしている。

世界規模で起きている半導体の不足は、日本や欧米諸国の自動車生産にブレーキをかけ、一部の企業を生産停止に追いやった。多くの国では、政治家が半導体製造の国内回帰を声高に主張し始めている。こうした状況の中で、にわかに関心を集めているのが世界の半導体製造市場を制する台湾のTSMCだ。

中国が長年、台湾侵攻をちらつかせていることからもわかるとおり、台湾は東アジア地域における米中の軍事対立の中心にあった。最近はこの2つの大国の技術競争にも巻き込まれている。

中国企業はTSMCと同等の製造能力を手に入れたがっているが、今のところ成功していない。米国企業も苦戦している。インテルは、同社のドル箱であるプロセッサの製造の一部を台湾企業であるTSMCに委託する予定だ。米国の国防総省は、兵器製造を外国企業に依存するリスクを回避するため、最先端チップの国産強化に投資するよう米国政府に静かに圧力をかけている。

こうしてTSMCは世間的な知名度の低さにもかかわらず、おそらくは世界で最も重要な企業となった。
半導体製造工場の勝利

TSMCの成功をうらやむ政府は多いだろうが、同社と同等の製造能力を実現するためには桁外れの投資が必要になる。また、TSMCと取引関係にある企業は、この台湾企業が伝統的なサプライヤーとは違うことに気づきはじめている。

「自動車メーカーは自分たちを世界の巨人だと考えているかもしれない」と、サプライチェーンコンサルティング会社セラフの創業者で最高経営責任者(CEO)のアンブローズ・コンロイは言う。

「しかし現状では、巨人は半導体メーカーであり、自動車メーカーの調達部門はアリにすぎない」
TSMCは長年、人目につかない存在だった。同社の製造する半導体はアップルやAMD、クアルコムといった大手ブランドの製品に組み込まれて販売されてきたからだ。しかし実際には、同社は世界の受託生産半導体チップ市場の半分以上を支配している。

しかも、プロセス技術ノードが更新されるたびにTSMCの市場支配は強まっていく。売上高ベースで見ると、同社の市場シェアは車載半導体の主流である28~65nmカテゴリーでは40~65%にすぎないが、最先端ノードでは90%に迫る。

「特に最先端チップでは、TSMCの独り勝ちが続いている。これはきわめてリスクの高い状況だ」と、米コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーのパートナー、ピーター・ハンブリーは言う。「20年前には20の半導体製造工場があったが、現在の最先端チップは台湾の特定のキャンパスでしか製造されていない」

プロセス技術ノードの開発は難易度が高く、製造設備の増強は多額の投資を必要とするため、他のチップメーカーは徐々に設計に比重を移し、製造部分はTSMCのような半導体製造専門の企業に委託するようになった。

最新の半導体製造装置の価格が高騰し始めると、さらに多くのチップメーカーが製造を外部に委託するようになり、TSMCのライバルだった半導体専門工場の多くが競争から脱落していった。

ファブレス企業の拠り所として

TSMCは今年の設備投資額を250億~280億ドル(約3兆円)と見積もっている。この莫大な金額は2020年の実績より63%以上多く、インテルとサムスンの両方をしのぐ。アナリストによれば、この設備投資額の少なくとも一部はインテルからの注文に対応するためのものだという。

米国の半導体製造大手のインテルは、2つの後継プロセス技術ノード(10nmと7nm)の立ち上げに苦労しており、必要量のチップを製造するために一部を外部に委託せざるを得なくなっている。

第2世代の製造技術への対応に苦戦するインテルを見て、あるアクティビスト投資家は昨年、他の多くのチップメーカーと同様に半導体製造から手を引き、「ファブレス」ビジネスモデルに転換するようインテルに要求した。

インテルのパット・ゲルシンガー新CEOはこのアイデアを退けた。同氏は3月23日、投資家とジャーナリスト向けのビデオメッセージの中で、「7nmの開発に対する自信を深めている」と語りつつ、TSMCやその他の半導体製造工場との関係を強化していること、一部のプロセッサの製造をTSMCに委託することを明らかにした。

新CEOはインテルを再び半導体製造の雄にすると誓ったが、少なくともそれまではTSMCの力を借りて、すべてのコンピュータとサーバーの核であるCPUの市場シェアをライバルのAMDから死守しなければならない。

TSMCとインテルの内情に詳しい2人の人物によれば、インテルの社内にはTSMCと協働するチームがあり、TSMCの新工場にCPU製造を委託する準備を1年以上も前から進めているという。

バーンスタインの半導体業界アナリストであるマーク・リーは、インテルは2023年にはCPU製造の20%をTSMCに委託すると見る。この注文をさばくためだけでも、TSMCは製造設備の増強に約100億ドル(約1兆円)を投じなければならない。
このように半導体製造は桁外れの投資を必要とするため、半導体製造競争の最前線で戦い続けることはますます困難となっている。インテルの例が示しているように、問題はコストだけではない。たとえばチップの集積度を高め、コスト効率とエネルギー効率を改善するためにはトランジスタの小型化が欠かせないが、その技術的難易度は非常に高い。

3nmノードにおけるトランジスタのサイズは、人間の髪の毛のわずか2万分の1だ。これを実現するための機械・化学面の調整ができる企業は、関連する製造技術に精通し、スケールメリットを実現でき、幅広いアプリケーションを開発しているTSMC以外には考えにくい。(続く)

Kathrin Hille

焦点:日の丸半導体、TSMC巻き込み描く復活 見劣る支援が壁

5/14(金) 19:03配信
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ロイター

 長く存在感を失ってきた日本の半導体産業の復権に向けたラストチャンスをものにしようと、日本政府が動き始めた。写真は2016年2月、都内で撮影(2021年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 14日 ロイター] - 長く存在感を失ってきた日本の半導体産業の復権に向けたラストチャンスをものにしようと、日本政府が動き始めた。ファウンドリー(半導体受託製造)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)なども巻き込む青写真を描くが、海外の競合相手は政府からの巨額の支援をテコに投資合戦に臨む。米中問題の狭間で身動きが取れず、政府サポートが見劣りする日本企業のつけ入る隙は大きくはない。

<中枢担う半導体、周回遅れ>

「現在の日本の半導体のミッシングピースは、ロジック半導体だ」と経産省商務情報政策局デバイス・半導体戦略室の刀禰正樹室長は話す。 半導体市場は2030年には現状の倍の100兆円に拡大するとも予測される巨大市場だ。世界規模で急速にデジタル化やグリーン化が進む中、日本がその波をとらえるには、技術の進展を支える半導体産業と両輪で取り組まなければならない、との危機感が政府にはある。

日本にはルネサスエレクトロニクスやキオクシア、ソニーグループなどの半導体メーカーがあるが、論理演算処理を担い、デジタル機器の中枢部品となるロジック半導体の世界的な主要プレーヤーは、米国勢のインテルやエヌビディア、英アーム、韓国サムスン電子など海外勢だ。

米中摩擦が続く中、米政府は近い将来の台湾海峡での有事も想定。ある政府関係者は「モノ作りは中国、アプリケーションやソフトウエアなどは先進国という構図は、米中対立で崩れた」と述べ、経済安全保障の側面から自国に生産基盤を持たないリスクの大きさを訴える。

世界の半導体各社は回路線幅の細さを競っている。線が細ければ狭い面積に回路を詰め込め、スマホなどのデバイスの小型化・低消費電力化に寄与するため、ロジック半導体やメモリーでこの傾向が顕著となる。

微細化の競争には莫大な投資が必要で、日本勢の多くが競争から離脱。例えば、一部でロジックを扱うルネサスの線幅は40ナノ(ナノは10億分の1)メートルにとどまる。より細い線幅が必要な製品は、TSMCに生産を委託している。海外勢の主戦場は、1桁ナノの線幅での量産化技術に移っており、日本勢があらためて追い上げるのは容易でない。

<「黒子」をてこに>

半導体の素材や、東京エレクトロン、SCREENホールディングス(HD)などの製造装置、いわゆる「黒子」の技術で、日本勢は世界の主要プレイヤーだ。政府は、これらを「てこ」にしたい考えだ。 経産省は3月、ウェハーに回路を書き込む「前工程」技術の開発支援企業に東京エレクトロンとキヤノン、SCREENセミコンダクターソリューションズ(京都市)を採用。先行きの競争を見込んで、線幅2ナノの製造技術を確立し、日本が装置を提供できる体制を整える構えだ。

ウェハーからチップを切り出して製品化する「後工程」の技術開発でも、政府は音頭を取る。線幅を細くする競争は、いずれ限界に達するとみられ、回路を積層して3次元で面積あたりの集積度を上げる次の技術競争をにらむ。

TSMCが茨城県つくば市に新設する先端半導体の製造技術開発拠点が構想の中心となる見込みで、日本勢からはイビデンや新光電気工業など、この分野に強い企業の参加が予想される。

政府は最終的に、こうした最先端の製造技術を備える量産拠点を国内に持つ構想を描く。生産の担い手は国内企業に限らず、海外企業にも間口を広げている。

<実現にハードル、中国との距離感で身動き取れず>

もっとも、こうした構想の実現には、いくつものハードルがある。まず資金面の格差だ。半導体ビジネスでは、兆円単位のマネーが飛び交う。各国では、デジタル化の流れや経済安全保障上の必要性から、従来とは異なる次元で国を挙げた取り組みとなっている。

サプライチェーンの国内整備を進める米国は、2兆ドル規模のインフラ投資計画のうち、米国半導体業界の国内生産回帰の実現に向け500億ドル(約5.5兆円)を割り当てる。EUも復興基金92兆円を用意。半導体を含むデジタル投資に2―3年で1350億ユーロ(約18兆円)以上を投資する。

翻って日本は、ポスト5G(第5世代移動通信システム)基金が2000億円、サプライチェーン補助金も昨年度が約3000億円、今年度が約2000億円。

業界からは「文字通り、ケタが違う」(半導体メーカー関係者)と、嘆息が漏れる。英調査会社オムディアの南川明シニアディレクターは「それなりの予算がつかなければ企業も動きにくい」と指摘する。

最大の難関が、国内需要の開拓だ。日本の半導体産業は、80年代後半にかけ世界を席巻した。しかし、日米半導体摩擦に加え、大型計算機からパソコンへの需要シフトへの対応に失敗。家電の成熟化に伴う価格競争で日本勢が脱落し、国内の半導体需要が減退するのに合わせて同産業も先細った。経産省幹部は「半導体は所詮、どういう製品に使われているかが勝負。デジタル化の失敗と半導体の失敗が連動している」と指摘する。

過去の失敗を踏まえ、半導体・デジタル化の戦略を策定する政府の検討会では、5Gやデータセンター、電動車やスマートシティなど、半導体の主要な市場となり得る分野を盛り上げる支援策も同時に進める。5月中にとりまとめ、6月の政府の成長戦略に盛り込みたい意向だ。

検討会にはデンソーやNTTなども名を連ねるが、日本製造業の代表格であるトヨタ自動車や、ソニーGの姿はなく「国家戦略として世界にアピールするには迫力に欠ける」(半導体業界関係者)との声もある。

内製化の必要性については、政府と産業界の間に認識の溝が横たわっている。米国や中国など自動車の消費地での生産が進んでいる自動車業界からは「国産半導体の自給率も大事だが、それ以上に政治問題がグローバルでの生産・販売に支障を与えないようにしてほしい」(自動車メーカー関係者)との声が聞かれる。

オムディアの南川氏は、最先端半導体の生産拠点は「国内にあれば越したことはないが、絶対ではない」と指摘。むしろ米中摩擦によって、中国企業との間で可能なビジネスの線引きが不透明なため身動きしにくい日本企業は、海外の競合相手に後れを取っているとして「政府がガイドラインを整備することが先決」と話している。

(平田紀之 清水律子 取材協力:白木真紀 山崎牧子 編集:石田仁志)

ber***** | 6日前

TSMCが独り勝ちできる理由は技術力があるからに尽きる。

サムスン電子とインテルはTSMCと同じ半導体製造装置を入手してもTSMCに追いつけないことから、半導体製造は簡単ではないことがわかる。
サムスンやインテルの投資計画を考慮しても、5~6年はTSMCの独り勝ちが続くだろう。

返信0

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jai***** | 6日前

TSMCの社長が話していましたが、
アメリカにTSMCの工場を作るには「アメリカ人の人材が少なすぎる」とのこと。
もうTSMCで働くには
大学院の工学博士号とか持っていて当たり前の世界なのですね。

TSMCの会長さんは世界の億万長者の番付表などに出てきません。
自分の資産がいくら有るとか、
そういうものには関心のない人なのでしょうね。

返信1

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yjw***** | 6日前

小さな国台湾はしっかりと、人材や産業を育て国防も国を挙げて立ち向かっている。IT大臣のオードリータン氏のドキュメンタリーを見て、発想の凄い国と感じた。

返信1

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emp***** | 6日前

おかしいじゃねえか。

そういうチップを作るための製造装置は日本が作ってるんだぞ。なのに何で日本企業が作れないんだ?何で日本からTSMCのような企業が出なかったんだ?(日米半導体摩擦でアメリカの圧力でというのは聞き飽きたぜ!)出るどころか次から次と脱落してった。コロナ対策でも台湾は上手くやった。政治家や”経営トップの頭の差”としか言いようがない。何から何まで日本は負けてばかりで、歯がゆくて仕方ない。

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お好み焼き定食うどん付き | 6日前

無知の記事やコメント、笑っちゃうね。
TSMCの成功は単に一貫したビジネススタンスと、先を見たビジネスセンスだ。
あと、日本では絶対にこのビジネスは成功しない、いや、国庫の補助とかいろいろやればなんとかなるかもしれないが、まず電気代が高い。税金が高い。人件費が高い。
そんな状態で日本という土地に工場を立てて、数兆円の投資をして、TSMCが1個1万で作るというCPUを日本のファウンドリ工場が1万2000円で作ると言って、日本に発注するか?
昨今の非常時なら受注できるだろうが、まず低価格で納入できるだけの受注ボリュームと低コストが実現しないとファウンドリは成功しない。
顧客と、投資資金と、コストさえ見合えば素材と製造装置はオールメイドインジャパンでできる。

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phi***** | 6日前

>善化工場の周辺では農地の価格がこの1年で3倍に跳ね上がったという

ちょうどこのあたりの地域を通ったことがあります。まさに何にもない日本の田舎の風景とまったく同じ感じでした。

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grq***** | 6日前

日本政府は国家主導で国防として半導体に力を入れて欲しい。

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hb0***** | 6日前

TSMCがすでにアメリカ系だよ。TSMCが表面上に台灣企業だったが、TSMCの株主が大半アメリカの投資家であり、アメリカがいうことをきかないやつらにすぐに制裁する。

返信0

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sor***** | 1時間前

台湾ありがとう






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