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「高知ファンクラブ」 の連載記事集1

「高知ファンクラブ」に投稿された、続きもの・連載記事を集めているブログです。

森のようちえん・・・かしこくて、たくましい子どもに育てる 目次

2011-12-31 | かしこくて、たくましい子どもに育てる

森のようちえん・・・かしこくて、たくましい子どもに育てる 目次

 

連載第4回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・生命の尊さと生命のつながりを学ぶ(その1 )

連載第4回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・生命の尊さと生命のつながりを学ぶ(その2 )

連載第4回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・生命の尊さと生命のつながりを学ぶ(その3)

連載第4回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・生命の尊さと生命のつながりを学ぶ(その4)

連載第4回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・生命の尊さと生命のつながりを学ぶ(その5)

 

連載第3回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・知的好奇心を育む(その1 子どもと知的好奇心)

連載第3回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・知的好奇心を育む(その2 年少児の出会い方)

連載第3回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・知的好奇心を育む(その3 年中児の知的好奇心)

連載第3回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・知的好奇心を育む(その4 年中児の知的好奇心)

連載第3回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・知的好奇心を育む(その5 対象化する年長児 )

連載第3回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・知的好奇心を育む(その6 対象化する年長児 )

連載第3回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・知的好奇心を育む(その7 年少児から年長児へ )

 

羽迫博己の、森のようちえん・・・その考え方と目的(その11)

羽迫博己の、森のようちえん・・・その考え方と目的(その10)

羽迫博己の、森のようちえん・・・その考え方と目的(その9)

羽迫博己の、森のようちえん・・・その考え方と目的(その8)

羽迫博己の、森のようちえん・・・その考え方と目的(その7)

羽迫博己の、森のようちえん・・・その考え方と目的(その6)

羽迫博己の、森のようちえん・・・その考え方と目的(その5)

羽迫博己の、森のようちえん・・・その考え方と目的(その4)

羽迫博己の、森のようちえん・・・その考え方と目的(その3)

羽迫博己の、森のようちえん・・・その考え方と目的(その2)

羽迫博己の、森のようちえん・・・その考え方と目的(その1)

 

連載第2回 若草幼稚園・すくすくの森で育まれるもの・・・とぎすまされる感性(その3

連載第2回 若草幼稚園・すくすくの森で育まれるもの・・・とぎすまされる感性(その2

連載第2回 若草幼稚園・すくすくの森で育まれるもの・・・とぎすまされる感性(その1

連載第2回 若草幼稚園・すくすくの森で育まれるもの・・・心身を鍛え、育む(その5

連載第2回 若草幼稚園・すくすくの森で育まれるもの・・・心身を鍛え、育む(その4

連載第2回 若草幼稚園・すくすくの森で育まれるもの・・・心身を鍛え、育む(その3

連載第2回 若草幼稚園・すくすくの森で育まれるもの・・・心身を鍛え、育む(その2) 

連載第2回 若草幼稚園・すくすくの森で育まれるもの・・・心身を鍛え、育む(その1

若草幼稚園 「すくすくの森」と子どもたち~連載7 「すくすくの森」でのルール 2

若草幼稚園 「すくすくの森」と子どもたち~連載6 「すくすくの森」でのルール 

若草幼稚園 「すくすくの森」と子どもたち~連載5 「すくすくの森」について 2

若草幼稚園 「すくすくの森」と子どもたち~連載4 「すくすくの森」について1

若草幼稚園 「すくすくの森」と子どもたち連載3 「すくすくの森」との出会い

若草幼稚園 「すくすくの森」と子どもたち連載2 社会の変化と子どもの問題

若草幼稚園 「すくすくの森」と子どもたち21年の歩み~・・・連載

すくすくの森で、焼いもイベント・・・若草幼稚園児に同行しました

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かしこくて、たくましい子どもに育てる 目次 

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連載第4回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・生命の尊さと生命のつながりを学ぶ(その1 )

2011-12-31 | かしこくて、たくましい子どもに育てる

 第4回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・生命の尊さと生命のつながりを学ぶ

 (その1 自分だけのものではない生命 ) 

       高知市若草幼稚園 園長 岡林道生 執筆 〔『保育の実践と研究』(第16巻第1号)より転載〕 

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生命の尊さと生命のつながりを学ぶ  

 すくすくの森には多くの生命の営みがあります。その生命の営みに囲まれて子どもたちは一日を過ごします。草花を摘み、虫や小さな生き物を追いかけ、捕まえて遊びます。その行為が相手の生命を奪っているとか、そこに暮らす動植物の生命の営みに影響を及ぼすなどとはその時は気づきません。 

しかし、虫や小さな生き物に対する親しみが増すに連れて、彼らにも家族がいるに違いないと考えるようになったり、なぜ草花はそこに咲くのだろうと考えるようになります。そして先生と一緒に「どうしてかな」と考えたり、絵本や図鑑をひもときます。そのなかで、自然の中にあるものは、それぞれに役割があり、つながりあって生きているということがわかるようになります。 

すると子どもたちは、段々、むやみに花を摘んだり、虫を捕まえて乱暴に扱ったりしなくなります。以下では、子どもたちが実際に生命とかかわる中で、何を感じ、何を学んでいくのかについて述べていきたいと思います。

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Ⅰ 自分だけのものではない生命 

  

あるとき、昆虫の大好きなU太とU輝が、すくすくの森に着くとさっそく虫探しに草むらへと入って行きました。草が少し動いたことに目ざとく気づき、「何かおる」とU太、「どこ、どこ」とU輝、「そこよね、そこ」とU太が言いながら指をさすと、カマキリがごそごそと動いていました。「ほんとや捕まえよ」と言うや否やカマキリはU太の指にはさまれていました。

 

U輝「おっ怒っちゅうでこのカマキリ、見て、カマを振り上げて、おもしろいね」 

U太「ほんまや、ほんまや」 

U輝「なんで怒るがやろうかね」

U太「つかまるがが嫌やきよ」

U輝「そうでね」

U太「けんど、せっかくつかまえたきよ、幼稚園に持って帰って飼おうよ」

U輝「そうしよう、そうしよう、虫かごもあるきよ」

U太「先生によ言わないかん、黙って持って帰ったらいかんで。」

U輝「園長先生どう思う?」と側にいた私に聞いてきました。

私「どうかな。幼稚園に持って帰ってうまく飼えるかな。」

U太「大丈夫でね」U輝「大丈夫で。」そして、二人は担任を探して歩き始めました。

U太「U輝くん、このカマキリよ、ちょっと小さいね、子どもやろか」

U輝「そうでね、大人のカマキリはもっともっと大きいでね」

U太「そうでね」

 

二人は向かい合ってしばらくカマキリを上にしたり下にしたりして眺めていました。カマキリは、観念したのか、疲れたのか、もう抗うこともなく、指の間で目を右に左に動かすばかりです。

 

U輝「もし子どもやったらどうする?」

U太「連れて行かれたら一人になるで、寂しいでね」

私「そうか、カマキリにも家族がおるもんね。」

U輝「お父さんお母さんが探すかも知れんし」

U太「もとのところに返しちゃる?」

U輝「そうでね、そうしよう」

 

 また、ここにくれば会えるだろうし、今度会った時には大人になっているのかもしれないと、二人はもとの所にカマキリを返しに行きました。きっと、おとなしくなってしまったカマキリが、かわいそうになったのでしょう。子どもたちは、生き物の形や大きさから、自分や自分の家族に重ねて考えることがよくあります。この時も、このカマキリが子どもなら自分、自分だったら家族がいると思ったに違いありません。二人は勇んでカマキリを返しに行き、放ったときはホッとした表情さえ見せました。

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 このエピソードに限らず、子どもたちは虫やカエル、イモリ等いろいろな小さな生き物を捕まえて遊びます。大事そうに持っていると大概、まわりに友だちが集まってきます。そして、「それは何?何処で捕まえたが」から会話が始まり、捕まえたものを見ながら、捕まえた物の色や形、感触等について会話が弾んでいきます。

 

捕まえた物の家族構成に話がいくのは、子どもの特性なのでしょうか。以前、私たちが子どもに投げかけた言葉が脈々と受け継がれているのでしょうか。不思議にこれはお父さんやろか、お母さんやろか、子どもやろかと話が進んでいきます。そして、いなくなったら寂しいに違いない、悲しむに違いないと言い、帰る時には元いた場所か近くの草むらに返して帰ります。

 

子どもたちは、このような経験を繰り返しながら、生命は自分だけのものではなく、まわりの人々にとっても大切なものだということがわかってきます。

 

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HN:ちるどれん  

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連載第4回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・生命の尊さと生命のつながりを学ぶ(その2 )

2011-12-31 | かしこくて、たくましい子どもに育てる

 

連載第4回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・生命の尊さと生命のつながりを学ぶ

 (その2 生き物にはそれぞれに生きる場所があるカマキリの飼育

 

       高知市若草幼稚園 園長 岡林道生 執筆 〔『保育の実践と研究』(第16巻第1号)より転載〕

 

 

 

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生命の尊さと生命のつながりを学ぶ 

 

 すくすくの森には多くの生命の営みがあります。その生命の営みに囲まれて子どもたちは一日を過ごします。草花を摘み、虫や小さな生き物を追いかけ、捕まえて遊びます。その行為が相手の生命を奪っているとか、そこに暮らす動植物の生命の営みに影響を及ぼすなどとはその時は気づきません。 

しかし、虫や小さな生き物に対する親しみが増すに連れて、彼らにも家族がいるに違いないと考えるようになったり、なぜ草花はそこに咲くのだろうと考えるようになります。そして先生と一緒に「どうしてかな」と考えたり、絵本や図鑑をひもときます。そのなかで、自然の中にあるものは、それぞれに役割があり、つながりあって生きているということがわかるようになります。 

すると子どもたちは、段々、むやみに花を摘んだり、虫を捕まえて乱暴に扱ったりしなくなります。以下では、子どもたちが実際に生命とかかわる中で、何を感じ、何を学んでいくのかについて述べていきたいと思います。 

 

2 生き物にはそれぞれに生きる場所がある 

カマキリの飼育 

 10年も前でしょうか。年中児のつき組で、カマキリの卵を持って帰り、赤ちゃんが生まれたら育てようということになりました。当時の担任のレポートから、事例を紹介します。見つけたのは、K季とR太でした。子どもたちは、それから毎日、観察を続けました。そしてある朝、「生まれちゅう、生まれちゅう」と大騒ぎになりました。

 

 

 

孵化したばかり幼虫は、驚くばかりの数で、飼育箱の中をガサゴソ、ガサゴソと動き回っています。最初に見つけたK季は、驚きと喜びを友だちみんなに伝えたくて、来る子ども来る子どもを飼育箱に誘っていました。

誘われて飼育箱を覗く子どもたちの驚きの声は段々増えて、興奮の渦が部屋全体に広がるようでした。餌は草と思っていた子どもたちはその日は幼稚園の庭にある草を摘んで飼育箱に入れて帰りました。

 

 次の日も次の日も同じことを繰り返していましたが、4~5日たったある日、K季くんが草を食べた様子がないこと、カマキリの数がめっきり減っていることに気付きました。

「たいへん、たいへん、カマキリがいなくなってる!!」と友だちのR太に話しました。「ほんとうや、どうして」またまたクラス中が大騒ぎになりました。

 

カマキリはいったい何処へ行ったのだろうか。草を食べると思っていたのになぜ食べないのだろうか。この日は、逃げ出さないようにフタをきちん確かめて帰り、明日はキューリやナス、スイカを持ってこようということになりました。

 

さてあくる日、スイカやキューリを持って来る子どもをしり目に「スイカもキューリも食べんで」とF二くんが言うではありませんか。「エッ、なんで!!」と驚く子どもたちにF二くんは「お父さんが、カマキリは草とか野菜は食べんて言うた、肉食やき、他の虫とかを食べるって言いよった」またまたクラス中が大騒ぎ。

 

 

 

「どんな虫食べるが?」「ハエとかゴキブリも食べるって言いよったで」それでは明日はハエを取って来ようということになりました。次の日、数人の子どもがハエを持って来て、飼育箱に入れて様子をうかがいましたが、カマキリは全く食べようとはしません。

子どもたちは口々に「食べんで、食べん」「どうして食べんがやろ」と言い合いながら、めっきり数の減ったカマキリの数を数えて困ってしまいました。

子どもたちのやり取りを見ていた担任が「どうする?」と聞きました。「F二くんがハエやったら食べるって教えてくれたけんど、食べんね」

担任「どうしてやろうね」

子どもたち「ウーン、わからん」

担任「先生にも詳しいことは分かりません。どうしたらいいかな」

子どもたち「F二くんのお父さんに聞いてみたら」「そうでね」

担任「そうね、聞いてもらいましょうか」

するとM敏が、「えーとね、先生、僕、カマキリの絵本と図鑑を年長さんのゆり組さんで見たことがあるで」と言いました。「借りに行こう!!」と数人の子どもがどどっと走り出し、それについていくようにクラスのみんなが走り出しました。

ゆり組さんの子どもたちは何事かと驚いたようですが、快く図鑑と絵本を貸してくれました。つき組に帰ると、我先に絵本や図鑑に群がり、ケンカさえ起こりそうでした。

 そこで担任が読むことを引き受け、子どもたちに話して聞かせました。そこには、カマキリは肉食で、しかも生きたものしか食べないということが書いてありました。そして、エサがない時は仲間を食べることも分かりました。

毎日、カマキリの数が減り、残ったカマキリが大きくなっているのがなぜかわかった子どもたちは困ってしまいました。数人の子どもが、「ハエを生きたまま捕まえてくる」、「ゴキブリは夜出てくるき、待ちよって捕まえてくる」等、何とか生きたままで虫を持ってくると言いました。しかし、実際にそれはなかなか大変で、毎日はとても無理だということがわかりました。

みんなで困っていると、K季くんとR太くんが顔を見合わせ、そしてみんなに問いかけるように「すくすくの森に返そう」と言いました。カマキリの卵を見つけたのはこの二人で、持って帰ってきてからも、毎日カマキリの様子を観察し、その変化をみんなに伝えていたのもこの二人でした。

 

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HN:ちるどれん  

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連載第4回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・生命の尊さと生命のつながりを学ぶ(その3)

2011-12-31 | かしこくて、たくましい子どもに育てる

 

連載第4回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・生命の尊さと生命のつながりを学ぶ

 (その3 生き物にはそれぞれに生きる場所がある ②カマキリの生きる場所へ)

 

       高知市若草幼稚園 園長 岡林道生 執筆 〔『保育の実践と研究』(第16巻第1号)より転載〕

 

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生命の尊さと生命のつながりを学ぶ 

 

 すくすくの森には多くの生命の営みがあります。その生命の営みに囲まれて子どもたちは一日を過ごします。草花を摘み、虫や小さな生き物を追いかけ、捕まえて遊びます。その行為が相手の生命を奪っているとか、そこに暮らす動植物の生命の営みに影響を及ぼすなどとはその時は気づきません。 

しかし、虫や小さな生き物に対する親しみが増すに連れて、彼らにも家族がいるに違いないと考えるようになったり、なぜ草花はそこに咲くのだろうと考えるようになります。そして先生と一緒に「どうしてかな」と考えたり、絵本や図鑑をひもときます。そのなかで、自然の中にあるものは、それぞれに役割があり、つながりあって生きているということがわかるようになります。 

すると子どもたちは、段々、むやみに花を摘んだり、虫を捕まえて乱暴に扱ったりしなくなります。以下では、子どもたちが実際に生命とかかわる中で、何を感じ、何を学んでいくのかについて述べていきたいと思います。 

 

2 生き物にはそれぞれに生きる場所がある 

 

  

 

 マキリの生きる場所へ

 

 沈の時間が数十秒流れました。(後で担任は、その数十秒がとても長いように感じたと言っていました。)そしてその沈黙を破るようにF二くんが、「そうしよう」と言い、続いてみんなが頷いて「そうしよう」ということになりました。

そう決まると、出来るだけ早くしないとカマキリは全滅すると言い出しました。「今日、行かんといかん」(今日、いかないとだめだ)とF二くん。「そうで!!」そうしないとどんどんカマキリがおらんなる、どうにかしてくれと言わんばかりに訴えだした子どもたちに担任は、「ちょっと園長先生に相談してくるから、待っていてください」と言って職員室にやってきました。

 

担任は子どもたちに部屋で待つように言ったのですが、担任の後には、子どもたちが連なっていて事の行方を心配そうに見つめていました。私は時計を見て、その時間があるかどうか担任に聞きました。担任はしばらく考えて、今からお山に行って、カマキリを返して帰ってきたとしたら、昼食時間は30分だが、それで食べ終えて帰る支度が出来るのかどうかと子どもたちに確かめました。

 

全員が顔を見合せ、いつも昼食に時間のかかる何人かに多くの目が注がれました。注目された子どもたちは「僕大丈夫で」「私もはやく食べる」「頑張る」等と答えました。「じゃ、みんなで園長先生にお願いしてください」と担任に促されて、まるで調子を合わせるかのように「園長先生お願いします」と子どもたち。

 

「わかりました。今から森にいるバスのおじちゃんにお願いして用意が出来たら呼びますから、お部屋で待っていてください」と答えると、子どもたちは「ヤッター!!」と喜びの声を上げ、近くの友だちと「よかったね」と言い合いながら保育室へ帰っていきました。

 

 それから、飼育箱を誰が持つかで騒動が起こりましたが、すったもんだ言っているうちに、やっぱりカマキリの卵を見つけて、毎日みんなにカマキリのことを教えてくれたK季とR太が持っていくことになりました。バスの用意もできて、みんなで意気揚々とバスに乗り込み、森へと向かいました。

 

 

 

森に着いて、カマキリの卵を見つけた場所に行き、一人ひとり、そっとカマキリを手のひらに乗せて、別れを惜しむようにカマキリを草原に返していきました。「元気でね。」「大きくなってね。」「また会おうね。」などと言う子どもたちの声に、担任も私も目頭が熱くなってことを今でも覚えています。

 

 このエピソードは、保育者を通じてクラス便りやつき組の子どもたちから、他のクラスや先生に口々に伝えられていきました。そして、「カマキリはね、森でしか生きていけんがで。」から年を経ていくうちに、「虫はね、森でしか生きていけんが。」になって行きました。それ以来、誰かが虫を捕まえて持って帰ろうとするのを見ると、別の誰かが「持って帰られんがで。」と言うようになりました。先生も、折に触れて子どもたちにそのエピソードを語り聞かせるようになっていました。

 

 先生から子どもたちへ、子どもたちから子どもたちへと伝えられていくこのエピソードを、なぜか子どもたちはすんなりと受け入れて「虫はね・・・。」と言われると、素直に虫をもとの草原に戻してバスに乗り込みます。虫には、虫の生きる場所があり、生きていく術があることを知っていく子どもたちは、友だちの関係の中でも、相手の立場に立って物事を考えるようになっていくのではないかと思っています。

 

 

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連載第4回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・生命の尊さと生命のつながりを学ぶ(その4)

2011-12-31 | かしこくて、たくましい子どもに育てる

 

連載第4回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・生命の尊さと生命のつながりを学ぶ

 (その3 生き物にはそれぞれに生きる場所がある ③生命のつながり) 

       高知市若草幼稚園 園長 岡林道生 執筆 〔『保育の実践と研究』(第16巻第1号)より転載〕

 

 

3 生命のつながり

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若草幼稚園では、すくすくの森で見つけたどんぐりを持って帰るのは2個までにしています。森に行き始めた頃は、どんぐりを楽しそうに集めて、嬉しそうに持って帰る子どもたちの様子を見て、「よかったね」と思いながら見ていました。袋いっぱい取ってくるどんぐりは、ままごとの材料やコマややじろべえ、製作の材料になりました。しかし、毎日のように持って帰るどんぐりは、いつの間にかゴミ箱にいく結果になっていきました。

 このままでいいのだろうかと考えた私たちは、どんぐりの絵本(注)を子どもたちに読んで聞かせることにしました。この絵本では、ミズナラの木の実(どんぐり)が多くの動物の餌になっていることやミズナラの新しい生命の源であることが、たんたんと描かれています。「だから~しなさい」とは書かれていません。けれども子どもたちは、絵本を読んでもらってからは、自分の手に入れて持って帰ることができる数だけ持って帰るように決めました。しかしその後、手の平の大きさでは、数に違いがあって不公平ということになり、5個までと決まりました。

ところがそれが、いつの間にか2個になっていたのです。7年前のことです。近隣の保育所の子どもたちと一緒にすくすくの森に行ったことがありました。保育所の子どもたちを案内しながら、「あの赤い紐のついちゅう木に触られんで、かぶれるきね。」「そこからは崖やき行かれんで。」「地面の見えんところに勝手に入ったら行かんがで。」と色々な約束ごとや注意することを教えていました。どんぐりがいっぱい落ちていて、保育所の子どもたちは大喜びし、いっぱい拾ってポケットに入れ始めました。すると、子どもたちが「あのね、どんぐりは2個しか持って帰られん。」と教えているのです。「どうしてなが?」と聞き返す保育所の子どもたちに、その理由を話し始めました。そして、自分は、ピカピカに磨いて、一番気に入った物を2個だけ持って帰るのだと話しました。すると保育所の子どもも納得して、「僕もそうする」と言ってピカピカにどんぐりを磨いていました。洋服でこすると本当にピカピカに光るのです。

その様子を見て、私は、「えっ」と思い、「たっちゃん、どんぐり、5個持って帰っていいんでしょ。」と聞きました。すると「違うで、2個で、園長先生知らんが。」というのです。私は、「そう、2個。いつから2個になったのかなー。」とつぶやきました。このやりとりを聞いていた子どもたちが、不審そうな顔をして私を見ますので、その場をつくろって、「じゃ、園長先生も2個持って帰ろ。ピカピカにしよう。」と言いながらどんぐりを磨きました。

その後、園に帰ってY先生に『ドングリ2個しか持って帰ったらいけないの?」と聞きますと、「そうですよ。」と園長先生知らないんですかと言わんばかりの返事が返ってきました。そしてその理由を話してくれました。数年前、どんぐりが極端に落ちない年があり、子どもたちが何人も「先生、どうしてどんぐりないが?」と尋ねてきたそうです。成り物には表年と裏年があり、よく実を結ぶ年と結ばない年があります。そこでこのことを、子どもたちに話すことにしました。毎年毎年、たくさんのどんぐりを落としていたら、これを餌にしている動物たちが集ってきて、落とした実を全部食べてしまうこと、すると、どんぐりの木が新しい芽を出すことができなくなってしまうこと、しかし、少なすぎて動物達が来なくなるのもまた困るので、いっぱい実をつける年とあまりつけない年ができたということを話して聞かせました。どんぐりは、生命をつなぐためにどうしたらいいのか工夫しているのです。子どもたちは、その話を真剣に聞いたといいます。そして、他の動物のために自分たちが持って帰るのは2個だけにしようと決めたそうです。それ以来、子どもたちはどんぐりを拾っては磨き、一番気に入った2個だけを大切に大事そうに持って帰るようになったと話してくれました。

 もって帰るどんぐりは2個まで、森のものは森に返して帰るという約束は、保育者から子どもたちへ、そして子どもから子どもへと脈々と受け継がれています。子どもたちは、どんなお客様が来ても、おみやげのどんぐりは2個までとその理由も合わせて話します。聞いた大人は、子どもたちの言動に感心すると共に、何気なくしていることを反省させられたり、物を大切にすることの大事さを改めて考えさせられたと言います。

子どもたちは、色々な約束事を自分たちで決め、それがいつの間にか園全体の約束事になっていきます。先日、私がどんぐりを2個拾って、松ぼっくりも2個拾いました。両方を持って帰ろうとすると、それを見ていたHさんが、どんぐりと松ぼっくりで合わせて2個にするか、どちらかの2個じゃないといけないと言い出しました。「えっ、2個ずつじゃないの?」と聞くと「違うで、1個ずつで2個で。」と言って聞きません。他の子どもたちもそう言います。そして園長先生が欲張りしたら、他の動物が困るじゃないかと言うのです。「そうだよね、園長先生は欲張りしちゃいけないよね。どんぐりも松ぼっくりも欲しいから、1個ずつにします。」というと、「そうでそうで」とうなずく子どもたち。なんだか、幸福な気分になって、森を下りてきました。子どもたちは、どんぐりは2個までということの本当の意味を理解して、周りの人々に伝え守ろうとしています。そんな子どもたちの姿を見ていると、私たちが大切だと思うことを、子どもたちに伝えることがいかに大事かを思います。子どもは、真摯で真面目です。安易な気持ちで、子どもたちと対峙することはできません。

 

 

 

HN:ちるどれん  

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連載第4回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・生命の尊さと生命のつながりを学ぶ(その5)

2011-12-31 | かしこくて、たくましい子どもに育てる

 

連載第4回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・生命の尊さと生命のつながりを学ぶ

 (その3 生き物にはそれぞれに生きる場所がある ④森の中で)

 

 

 

       高知市若草幼稚園 園長 岡林道生 執筆 〔『保育の実践と研究』(第16巻第1号)より転載〕

 

 

4 森の中で

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 季節は巡ります。春、夏、秋、冬と毎年花が咲き、実がなり、さまざまな生き物が森に集います。一見同じように見える森は、決して同じではありません。自然の営みは、ゆっくり変化しているように見えて、めまぐるしい程の変化も見せます。一日として同じではありません。

そんな森の中で子どもたちは縦横無尽に駆け巡り、時に足を止め、座り込み、季節の移ろいに身をゆだねて遊びます。風の音、木々のざわめきに驚き、水の流れる音、鳥の声、虫の声に耳を澄ませます。また季節ごとに咲く花に目を留め、かぐかわしい香りに囲まれて、自然の贈り物に舌鼓を打ちます。そして、自然が落としてくれたものをおもちゃや道具にして夢中になって遊びます。

さまざまな体験の中で、子どもたちは生命の息吹を感じ、それを慈しむ心を育んでいきます。だから、保育者の話や絵本、図鑑で知った大切なことを素直に受け入れて、実行します。

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生命は自分だけのものではないこと、家族やまわりにいる人々のものでもあること、生命を育むためには、それぞれにふさわしい生きる場所があること、生命はつながっていて、それぞれが生きるために、子孫を残すために工夫して生きていること、簡単そうに見えて実は一生懸命生きていることが、わかってくるのです。

生命の営みやつながりを学ぶと、自分だけが嬉しくても楽しくてもいけないと感じるようになります。だからこそ、約束事が生まれます。

こうした子どもの育ちを支えていく上で、やはり、大人の存在は欠かせません。感性が問われることは言うまでもなく、私たち大人が、生命の輝きに気づいていなければなりません。しかし、森は、大人にもこの生命の輝きを教えてくれ、感性を開かせてくれます。森においでよ、多くの生命輝くところへ。

(注)こうやすすむ、「どんぐり」、『かがくのとも傑作集』、福音館書店、1983

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連載第3回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・知的好奇心を育む(その1 子どもと知的好奇心)

2011-04-12 | かしこくて、たくましい子どもに育てる

連載第3回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・知的好奇心を育む(その1 子どもと知的好奇心)

            高知市若草幼稚園 園長 岡林道生 執筆 〔『保育の実践と研究』(第15巻第4号)より転載〕

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3.知的好奇心を育む  

(1)子どもと知的好奇心 

 人は皆、知らないことを「知りたい」という欲求や「知る」ということの喜びを持っています。周りに起こる事象に興味や関心を寄せて、なぜだろう、どうしてだろう、と考えます。 

 

そして、人に聞いたり、図鑑で調べたり、様々な方法で知的好奇心を満たしていきます。知らないもの、知らないことに出会う喜び、なぜ、どうしてを考える楽しさ、調べる時の期待感、わかった時の満たされた感情は、また新たな探究心を育みます。その繰り返しは、生きる喜びの一つと言っても過言ではないと思います。 

 

 すくすくの森には、季節の移り変わりの中で起こる事象の変化やそこに暮す多くの動植物との出会いがあります。行く度に、「これ何?」「あれは?」「どうして?」が繰り返されます。 

 

すくすくの森では、年少児も、年中児も、年長児も表現の仕方は違うものの、知的好奇心に促されて身体も心も躍動しているのが良く分かります。そして、年齢を重ねる毎に、知的な働きは深まりを帯び、広がりを見せるようになります。

 

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(2)年少児の出会い方 

①言葉にならない出会い 

今日は、すくすくの森に行く日だと先生や保護者から聞いていても、最初は、何のことか想像もつきません。けれども子どもたちは、先生の声の調子やバスに乗って行くことですくすくの森には、楽しいことがありそうだと感じているようです。

 

バスを降りるとセンダンの木の下に集って、先生から「森のお約束」を聞きます。でも、何のことを話しているのか、余りよくは分かっていないでしょう。初めて見る森の景色にびっくりして、四方をキョロキョロ見回し、落ち着きのない子どももいます。 

先生の話が済むと、森では一番平坦な三角広場へと進みます。子どもたちは、新しい物や出来事に出会うと、まるで呼吸を忘れたかのように息を呑み、目を瞠ります。何も言いません。唯、驚くばかりです。 

 

Mちゃんは、保育室でも園庭でも新しいことに出会うと興味を持ってよく見、よく質問してきます。そのMちゃんが、びっくりした様子で指をさして、じーっと見つめているものがありました。何だろうと近寄っていくと、大きなムカデが斜面を登っていくところでした。「ムカデやねー。」と私が言うと、「ムカデ?」と首をかしげて問い返し、「そう、ムカデ。」と答えると「ふーん、ムカデ」とつぶやいて、その動きから目を離しませんでした。赤黒い大きなムカデは、ゆっくり、ガサゴソと草むらの中に消えて行きました。Mちゃんは、「フー」とため息をつくとその場を離れ、日のあたる方へ駆け出して行きました。 

 

離れて見ていると、また立ち止まり、しばらくすると動き始め、また立ち止まるということを繰り返しています。Mちゃんは、この日何度目を瞠り、息を呑み、ため息をついたでしょうか。きっと休む暇もなく驚き続けたに違いありません。Mちゃんの経験は、どの子どもの経験でもありました。

 

お昼ごはんを食べる時や帰りのバスの中で「楽しかったですか?」と聞くと数人が「楽しかった」と答え、「恐かったですか」と聞くと数人がこっくりと頷き、「びっくりしましたか?」と聞くと「びっくりしたー」とMちゃんや元気な男の子が答えてきました。そして、「また来たいですか。」の質問に、先生の手を一時も離さなかったKちゃんも「また来る。」と小さい声で答えました。初めての森は年少児の子ども一人ひとりに大きなインパクトを与えたようです。

 

 

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連載第3回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・知的好奇心を育む(その2 年少児の出会い方)

2011-04-12 | かしこくて、たくましい子どもに育てる

連載第3回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・知的好奇心を育む(その2 年少児の出会い方

           高知市若草幼稚園 園長 岡林道生 執筆 〔『保育の実践と研究』(第15巻第4号)より転載〕

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3.知的好奇心を育む 

(2)年少児の出会い方

②身体を通して出会う 

 年少児は、初めてのときよりも二回目、三回目の方が「森のお約束」を集中して聞くようになります。「森」という場所を侮ってはならないということを肌で感じ、自分の身を守るためにルールは守るべきだと思うようになるのでしょう。それと同時に、目や耳や身体は森へと開かれ、さまざまな出会いを楽しむようになります。 

 

 三角広場には、草群が残されています。そこには、野の花が咲き、多くの虫たちが住んでいます。初夏から秋の終わりにかけて、ここでは生き物との出会いや発見がたくさんあり、子どもたちの好奇心はくすぐられて止みません。 

 

 年少児の様子を見ていますと、興味を持った対象物の名前を積極的に知ろうとしたり、大人の言葉に反応することが少ないように思います。例えば、すくすくの森にはビオトープがあって、色々なトンボの生息地になっており、真冬近くまで飛んでいます。

 

Kくんは、虫が大好きで、この日念願のトンボを捕まえることができました。嬉しくて嬉しくて仕様がありません。「先生、見て見て、トンボ捕まえたで。」と大喜びです。私も彼がトンボを捕まえるために奮闘しているのを見ていましたから、「よかったねー。」と一緒に喜んでいると、お母さんが走り寄ってきて、「ね、ね、Kくん、これ、シオカラトンボよ、シオカラトンボ。」と教えてくれました。

 

しかしKくんは「何言ってんだろう」という顔をして、トンボを顔の横に持っていき、ニコッと笑って走り去っていきました。Kくんのお兄ちゃん、年長児のRくんなら、「先生、シオカラトンボ捕まえたで、オオカラシオとは色が違うし大きさも違う、これはシオカラ」と教えてくれるだろうなー、と思いながらKくんの去っていく後姿とガックリされたようなお母さんに笑顔を向けていました。 

 

 

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Uくんは、以前はあまり虫が好きではなく、ダンゴムシを見せられて触ってごらんと言われても後じさりしていましたが、この日は草群に足を踏み入れ、次々飛び出す虫たちに誘われて、追いかけていました。

 

バッタがピョーンと飛ぶと同じようにピョーンと飛んで追いかけ、次にイナゴがピョンと飛ぶと同じようにピョンと飛んでいます。コオロギがピョンピョンと飛ぶとUくんもピョンピョンと飛ぶのです。誰かが「バッタ飛んだで」と言うのを聞いてから、Uくんは草群から飛び出す虫を全部「バッタ、バッタ」といって追いかけていましたが、その虫を捕まえようとする手や足や身体の動かし方は、バッタやイナゴ、コオロギの飛び方にそっくりです。まるでUくん自身が虫になったようで、とても面白くて目が離せませんでした。

 

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年少児の出会い方と言うのは、相手の動きに同調するという特徴があるようです。模倣するといってもいいかもしれません。自然と相手の動きに自分の身体を合わせているのです。

 

Yちゃんは蝶々が好きで、いつも蝶々を目に留め、追いかけます。蝶々が荻の花に止まると、Yちゃんも立ち止まってしゃがみます。そして、蝶々が飛び立つとYちゃんも蝶々のように高く低く一緒に飛んでいくのです。Hちゃんは、萩の花が風に揺れるのに合わせて、座ったまま身体を左右にゆっくりと動かしていました。まるでHちゃんが、風で揺れる花のように見えます。 

 

年少児は虫になり、蝶になり、花になり、風や雲になってそのものと同調し、親しみを持っていくなかで知的好奇心の扉を開いていくように思います。だから、「これは何?」とあまり質問してくることはありません。

 

対象物をじーっと見つめて不思議そうな顔をしているので、名前を教えたり何故なのかを話してみても、唯見つめ返されることがよくあります。こんな時、まだ知的好奇心というものはないのだろうかと考えたりしますが、そうではないのです。年少児には年少児の出会い方というものがあるのだと思います。 

 

ある時、園庭の藤棚の藤の幹にとりすがって年少児のTくんが「園長先生、僕、何か、」と尋ねてきました。「ウーン」と頭を傾けていると、「鳴くで僕、ミーン、ミーン。」「Tくん、セミ?セミやろう」「そうそう」と、せみになって遊んでいました。(クマゼミやアブラゼミとは言いません。)

 

またある時は、画用紙で作った大きな鎌を手につけて、「カマキリだぞー」と園庭を走り回っている姿もありました。新聞紙で6本の足を作って背中に貼り付け、自分の手を合わせて8本足のクモになって遊ぶ子どももいます。このような姿を見ていると、本当に年少児というのはおもしろいなと思います。

 

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連載第3回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・知的好奇心を育む(その3 年中児の知的好奇心)

2011-04-12 | かしこくて、たくましい子どもに育てる

連載第3回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・知的好奇心を育む(その3 年中児の知的好奇心)

           高知市若草幼稚園 園長 岡林道生 執筆 〔『保育の実践と研究』(第15巻第4号)より転載〕


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3.知的好奇心を育む 

(3)年中児の知的好奇心(興味、関心)の特徴

 

①自分の姿、形、生活の仕方を通して、興味、関心を持つ

 

 年中児になると、年少の時に比べて色々なことに気づいてよく質問してくるようになります。その年中児の質問には特徴があって、自分の姿、形や生活の仕方を通して質問してきます。 

A「先生」

T「なんですか?」

A「あのよー」の後、しばらく間があくので、

T「うん?何?」

A「あのよー」

T「何?」

A「先生、」

T「何を聞きたいが?」

A「あのよ、先生、イチョウの木は葉っぱを落としてしまうろう。」

T「そうね、秋になったら黄色くなって落ちてしまうね。」

A「なんでかなー。僕は寒くなったら洋服今よりもっと着るでねー。イチョウの木は服を脱いでしもうて、寒うないろうか。」

T「ほんとうね、寒うないろうかね」

と、こんな具合です。

ある時、森を奥へ進んだ谷川の手前でMくんが念願のカブトムシを見つけました。大喜びです。「みんなー、カブトムシがおったでー。」と知らせ、男の子数人が飛ぶようにしてかけつけました。

カブトムシがいることはわかっていましたが、なかなか見つからないで本当にいるのかどうかも疑っていたくらいでしたから、先生も駆けつけました。あまり大きなものではありませんでしたが、正真正銘、オスのカブトムシでした。ワイワイガヤガヤいうなかで、見つけたO君くんがカブトムシをひっくり返し、「どれが手?」と言い出しました。

S「えっ、足が6本で。」

M「けんどよ、僕には手と足がある。カブトムシにはなんで手がないがよ。

  先生、手が本当に無いが?」

S「無い。無いがよねー。人間と違うき。」

M「カブトムシはよ、ケンカするとき、どんなにするが?」

S「ケンカする時は、前足を使うが。」

M「えっ、蹴るが?」S「違うで、掴むがで。」

M「ほら、掴むがやったら手やんか、ねー、先生。」

 

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と、同意を求めるMくんの横でSくんが「ウーン」と考え始めました。カマキリを見つけたときも、MくんとSくんの仲間は、大人か子どもかオスかメスかで喧々諤諤です。

「大きいき、お父さん。家で一番大きいもんね。」「僕、もっと大きいカマキリ見たことあるで。お母さんやない?」「お母さんやったらお腹が大きいで。」「えっ、けんど僕のお母さんはお腹大きくないで。」「やっぱり子どもやない?」「子どもやったら、もっと小さいで。僕らーと同じくらいやない?」「えっ、そしたら若草幼稚園に行くが?」「行くわけないやん、虫やき。」「けどここは若草幼稚園の森でね。」「やっぱり僕らーと一緒くらいの年でねー。」とへんな納得の仕方に吹き出すしかありませんが、年中児の疑問や質問、互いの会話の多くは、このように自分を通して行われます。

 

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連載第3回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・知的好奇心を育む(その4 年中児の知的好奇心)

2011-04-12 | かしこくて、たくましい子どもに育てる

連載第3回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・知的好奇心を育む(その4 年中児の知的好奇心)

           高知市若草幼稚園 園長 岡林道生 執筆 〔『保育の実践と研究』(第15巻第4号)より転載〕

 

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3.知的好奇心を育む 

(3)年中児の知的好奇心(興味、関心)の特徴 

②こだわる、集める、並べる 

 年中児が森で遊んでいる様子を見ていますと、一つのものにこだわる、こだわった物を集める、集めたものを並べるという特徴が見られます。そうしながら、現実と物語の世界を行きつ戻りつして遊んでいます。

深い森の中には、子どもたちへの贈り物がたくさん落ちています。椿の花がポトリポトリと落ちていたり、くちなしの花びらがポツンと落ちていたりします。秋が深まってくると赤や黄、茶色の落ち葉と一緒にドングリの実が大小様々丸いのや長いのがそこらじゅうに落ちています。

 

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 この日は、Hちゃんのグループが黄色い葉っぱを集めて遊んでいました。「先生、黄色い葉っぱきれいでしょう。」「そうね、きれいな黄色やね。」「お船みたいなかたちでしょう。」「ほんとね、お舟みたいやね。」「そうでしょう。」「Hちゃん、赤い葉っぱもきれいだよ、ほらっ」と私が手にとって見せると「そうね」という顔を見せるだけでした。

そして、「Rちゃん、黄色い葉っぱ集めよう。」「そうしよう」とRちゃん。「あ、あそこにあるよ」とHちゃん。「あっ、ここにもあるよ」とちょっと離れたところからYちゃんが届けてくれました。

石を台に見立てて、MちゃんとKちゃんが集めた葉っぱを並べ始めました。「ねー、黄色い葉っぱってきれいでね。」とKちゃんが言います。Rちゃんが小さい棒を持ってきて、「これでバーベキュー作ろう」と言い、そうしようと6人で作り始めました。「先生、バーベキューいりませんか。」「おいしそうだから頂きます。いくらですか?」「いくらにする?」などとやり取りが始まりました。

途中で私が「赤い葉っぱのも欲しいなー。」と言うと、「今日はありません」とHちゃんが言い、みんなも「今日はありません」と言います。なぜ、他の色はいけないのでしょう。そういえば、Iくんのグループはドングリばかり集めて遊んでいるようです。それも同じ形、同じ色のどんぐりばかりを集めています。拾ってきたドングリを道の斜面に並べていたNくんが「ねね、このまんま行きよったら魔法使いの家に行くがやない?」と言い出しました。

「お菓子の家が見つかるかもしれん。」とTくん。「そうで!」とNくん。FくんとOくんとSくんはドングリを磨いては並べる動きを黙々と続けていましたが、5mほど並べたときFくんが「もし夜になって帰れんなったらどうする?」と言いました。「ドングリがあるきわかる」とOくん。「けんどリスが食べたらどうする?」「大丈夫で、園長先生がこの森にはリスがおらんて言いよった。」5人は、安心したようにほっと息をつき、また並べ始めました。

 

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 年中児は自分の姿、形、生活の仕方を通して対象物を見、それにこだわって、集める、並べるという動きがよく見られます。その関わりのなかで、様々な違いに対する興味、関心を深め、広げています。

したがって、その関わり方に虚と実が入り混じっていることもよくあります。また友だち同士で驚きや発見を共有する喜びも味わうようになっていて、そうした関係が知る喜びを深めていることもわかります。

対象物にこだわる分、様々な特徴に気づき、とても熱心な様子で質問をしてくるので、よっぽど知りたいのだろうと推察し、知っている限り丁寧に答えるのですが、フーンと受け流すような答えが返ってくることが多く、拍子抜けしてしまいます。

きっと、大人が知っていると思うからこそ問うのでしょうが、返ってきた答えをどんなふうに自分の中に位置づけたらいいのかわからないのでしょう。全く別の場面で思い出したり、「さっきのよー。」ともう一度同じ質問をしてくることがよくあります。年中児が自分なりに咀嚼し、消化できるまで、繰り返される質問には丁寧に答えていく必要があります。

 

 

このようなこだわりを見せる年中児の表現活動は、全体をバランスよく描くよりも、ある部分をリアルに描く傾向があります。まるで本当に動き出すかのような生き生きとした描写は、観る者に驚きや感動を与えてくれます。

 

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連載第3回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・知的好奇心を育む(その5 対象化する年長児 )

2011-04-12 | かしこくて、たくましい子どもに育てる

連載第3回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・知的好奇心を育む(その5 対象化する年長児 )

          高知市若草幼稚園 園長 岡林道生 執筆 〔『保育の実践と研究』(第15巻第4号)より転載〕

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3.知的好奇心を育む 

(4)対象化する年長児 

出会うものに驚き、その動きに同調し、模倣しながら身体で違いを感じるような年少の時期、自分の姿、形、生活の仕方と比較しながら対象物が何か、なぜそうなっているのかを知ろうとする年中の時期を経て、年長児は出会うものを対象化して、ありのままに捉えることができるようになります。そして、それが何か、何故そうなっているのかについて知ろうとする意欲や態度が著しく育っていきます。

 

①よく見る、試す、調べる、比べる、わかる

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 すくすくの森は、目に付くもので125種の昆虫がおり、虫が好きな子どもにとっては垂涎の的です。ある時、T先生が草の幹に捕まっている4cmほどの幼虫を手に「これ何かなー。」とつぶやきました。

目ざといUくんが「虫や!」と走り寄るとNくんも飛んできて、「虫やないで幼虫で。」と言いました。すると「幼虫も虫で、」と言い返し、「そうやないで。」と言い合っているところに、Yくんがやってきて「何の幼虫やろうか。」と言いました。「うーん、わからん。」とUくん。通りかかったAくんとHくんも仲間に入り、先生を囲んでそれぞれが思いつくことを口々に言い始めました。

 

A「先生、貸して。(幼虫を目の高さに持っていき) 

ウーン、どっちが頭でどっちがお尻やろう。」 

(ここで、取り合いになりますが、通りかかったKさんにケンカしていてはわからないままだといわれ、気を取り直して虫に集中します。)

A「あのよー、おじいちゃんが尖っちゅう方がお尻って教えてくれたで」

H「両方尖がってんじゃん。」

A「けんどよー、ちょっとこっちが尖っちゅうでね。」

他の4人は、半信半疑の様子で幼虫をながめています。身じろぎもしない幼虫に

H「動けばわかるんじゃない?前がさー、頭で後ろがお尻でしょ。」

U「けど後じさりするかもよ。」N「触ってみる?うごくかもしれん」

Y「どうやって触る?」N「毛虫かもしれん」Y「毛は無いで、Nくん、触ってみたら?」

H「そっとさー、触ったら大丈夫じゃないの?大丈夫だよ。」

そしたらHくんが触れと、5人はグロテスクな幼虫に少し怖気づいてるようです。Hくんは、触らないで息を大きく吹きかけました。「動いた!!」と5人。虫は、草にぶら下がるようにして動いています。

K「あっ、逆さになっちゅう、落ちん!」(走ってきて、こう言うとまたどこかへ)

U「えっ、本当や何で落ちんが」Y「見てみ、足がいっぱいあって草にくっついちゅう。」

A「足がタコの吸盤みたいになっちゅうでね。」

Hが今度は手で押すように触ると、幼虫は緑の小さな固まりを排泄しました。

U「あっ、ウンコした。」

A「やっぱりおじいちゃんの言うとおりや、尖っちゅう方がお尻やった。ウンチした方が尖っちゅうで、ほら。」今度は4人とも頷きながら、

N「この幼虫は、草を食べるがでね、ウンチ草色やきね。」

U「そうそう、僕らーも食べた色のウンコが出るき。」

N「触ったき、腸が動いたがやろうかね。」

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このように、5人は幼虫に出会ってから40分以上も、見て、触って、持っている知識や意見を交換し続けていました。5人は、蛾の幼虫か蝶の幼虫であるところまで推測し、そこで帰る笛がなってしまいました。

この幼虫が何の幼虫か知りたい気持ちが強く、持って帰りたいといいましたが、すくすくの森の約束ではもって帰らないことになっています。「写真に撮ってもらう」とUが言い、みんなでそうしてもらおうということになりました。

Uが担任の先生に頼みに行き、「先生がね、絵に描いて行きややと。」と戻ってきました。紙と鉛筆を使って、Aが描き始めました。描いている様子を見て周りの仲間が「そんなに大きくないじゃん。」などというので、一度Hに交代し、また「もう少し小さい。」「足がそこにない。」と周りが言うので、なんと私にまわってきました。

「えっ、先生が?」というとUくんが「もう時間がないし、急がんといかんし、園長先生絵が上手ながやろ。」とどきっとする発言ですが、ここは度胸で引き受けました。それから、ああじゃない、こうじゃない、ここが違う、そこが違う、足の数、点々の数、背中には毛もあるといわれ、「うるさいなー」と思いながらもその観察力に感心しました。

担任がやってくると、「まぁまぁに園長先生が描いてくれたき、帰ったら図鑑で調べるが」とのこと、担任のねらいはわかっていたので思わず私と担任で顔を見合わせ笑いました。

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 幼稚園に戻ると、手洗いうがいを済ませて5人は図鑑にまっしぐらです。昆虫図鑑を真ん中に顔を寄せ合って、調べ始めました。最初は、絵と見比べるというよりは、それぞれの記憶している特徴をああでもない、こうでもないといいながら調べており、キマダラヒカゲかヒメアカタテバ、キタテハ、アカタテハではないかというところまで突き止めました。

そこから、図鑑と、記憶と絵を比較し始め、キマダラヒカゲには毛がなく、キタテハは小さいということで、アカタテハかヒメアカタテバということになりました。そこでAがすくすくの森でアカタテハが飛んでいたと言い、他の子どもも見たことがあるということで、アカタテハと言うことになりました。

しかし、足と毛の生え方からいってすっかり納得したわけではなく、今度行ったらもう一度見つけるといっていました。他の子どもたちも、図鑑を手に取り、その日出会った生き物について色々と調べ、意見交換しています。その姿はとても生き生きとしていて、知る喜びとそれを共有する喜びにあふれています。

 

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連載第3回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・知的好奇心を育む(その6 対象化する年長児 )

2011-04-12 | かしこくて、たくましい子どもに育てる

連載第3回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・知的好奇心を育む(その6 対象化する年長児 )

          高知市若草幼稚園 園長 岡林道生 執筆 〔『保育の実践と研究』(第15巻第4号)より転載〕

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3.知的好奇心を育む 

(4)対象化する年長児 

出会うものに驚き、その動きに同調し、模倣しながら身体で違いを感じるような年少の時期、自分の姿、形、生活の仕方と比較しながら対象物が何か、なぜそうなっているのかを知ろうとする年中の時期を経て、年長児は出会うものを対象化して、ありのままに捉えることができるようになります。そして、それが何か、何故そうなっているのかについて知ろうとする意欲や態度が著しく育っていきます。 

 

②知の深まりと広がり

 

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 年長児になると、知的探究心が旺盛になり、聞く、調べるということを積極的に行います。興味や関心を持ったものについて、名前だけでなく色々なことを知りたくなります。

 

卵から幼虫、幼虫から成虫になる蛾や蝶の仲間、池に産卵するトンボの様子、そしてヤゴからトンボへ、卵からオタマジャクシ、やがてカエルになっていく様子をつぶさに見る子どもたちは、その生態に興味を持つようになります。

 

そこから、仲間について語るようになり、分類らしきこともするようになります。また、どんな所に住み、どんな物を食べているのかも積極的に調べます。

 

花が咲いて実がなり、落ちて芽が出る様子を見て、なぜ実を落とすのだろうと考え始めます。絵本や物語を通して、生き物の営みや生態系のことを知ると、森にあるものを大切にしようとする心も芽生えてきます。森は、知の宝庫です。

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連載第3回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・知的好奇心を育む(その7 年少児から年長児へ )

2011-04-12 | かしこくて、たくましい子どもに育てる

連載第3回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・知的好奇心を育む(その7 年少児から年長児への育ちと知的好奇心 )

          高知市若草幼稚園 園長 岡林道生 執筆 〔『保育の実践と研究』(第15巻第4号)より転載〕

 

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3.知的好奇心を育む 

(5)年少児から年長児への育ちと知的好奇心 

年少児は、出会うもの全てに驚きながら、模倣を通して対象物が何であるのかにせまっているようです。知の扉を開く時期と言えるでしょう。

 

そして、年中児になると、自分の姿、形、生活の仕方を通して、あれはなんだろう、どうしてだろうと考えるようになります。興味、関心をもった物にこだわり、虚と実を行ったり来たりしながら、対象物を自分とは違うものとして見ることができるようになります。

 

年長児になると、相手を対象化できるようになり、自分とは違う存在を「知る」ことの喜びが膨らんできます。そして、知るために、聞く、調べるといった具体的な方法を用いて、対象物の在り様を理解できるようになるのです。

 

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 友だち同士のかかわりにも特徴があります。

年少児は、同じ空間を共有するなかで、自分と同じように楽しむ他者の存在を感じていきます。

 

年中児は、同じ興味、関心を持つもの同士で様々なことを語り合い、つながりを深めていきます。

 

年長児になると、それぞれの興味や関心にしたがってわかったことを情報化して伝え合い、お互いに刺激し合ながら知の世界を深め、広げていきます。

 

子どもたちは、すくすくの森で多くの物に出会い、多くの出来事に出会います。見て、聞いて、触れて、身体と心を動かして、それぞれの時期における知的好奇心を満たしていきます。急ぐことなく、この発達のプロセスをしっかりと通過していくことが、とても大切だと思います。

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羽迫博己の、森のようちえん・・・その考え方と目的(その11)

2011-02-08 | かしこくて、たくましい子どもに育てる

羽迫博己の、森のようちえん・・・その考え方と目的(その11)

大人への癒し

少しゆっくり辺りを見回して、
            少しゆっくり深呼吸
 
  子どもの活動なのに大人のほうが夢中になって
    遊んでいる姿を見ることがありますが、

   大人たちにとっても森林は集中力が
                 高まる環境なのです。

  自然の持つ多様性はいつも、どんな人にも様々な
    発見と気づき、そして喜びをもたらしてくれます。

  どんな人も深い癒しの感覚を得られるのも、
    森林の大きな効用の一つなのです。 

自然界の癒しの効果 リラックス・・・

人の溢れる社会の中で、本当にリラックスできる
    空間がどれほどあるでしょうか。
  現代人の私たちには、
    力を抜ける空間と場が必要です。
  もちろん、森林の中では人間関係も在り、
    周囲への配慮も必要です。
  それでも、森林で目に飛び込んでくる風景に
    心をほぐされない人は、少ないのでは
    ないかと思います。

              高知市神田のアジロ山で遊ぶ子どもたち 

 

              高知市神田のアジロ山で遊ぶ子どもたち 

 

羽迫博己の、森のようちえん

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羽迫さんの世界 

四万十川流域のひなまつり・・・羽迫博己さんの世界 

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羽迫博己の、森のようちえん・・・その考え方と目的(その10)

2011-02-06 | かしこくて、たくましい子どもに育てる

羽迫博己の、森のようちえん・・・その考え方と目的(その10)

ナチュラルな身体能力

森林という多様な環境ほど優れたジム
              は他にありません。
                   
 

 自然の中では様々な動きを要求されます。

  急斜面を登ること、逆に下ること、木を登る
    ために体を駆使すること、怪我をしないよう
    に体をいかに確保するか。

  転んだときにどのように手をつけば怪我を
    しないか、あらゆる環境を備えた森林で、
    あらゆる体の動きを覚えることが出来ます。

  それは、必ず将来の健康な礎になるのです。

木登りで学べること!

バランスよく力強く、そして観察力鋭く

意図的な運動によって個々の能力を伸ばす
    「体育」や「スポーツ」では、それぞれ特化
    した能力が育つのが解るでしょう。

  例えば、短距離の早い人、体の柔らかい
    体操選手、水泳選手。

  でも、それぞれの運動能力をバランス良く
    備えた体を作るにはどうしたら良いでしょうか。

  森林を動き回ると、それだけで様々な運動を
    一度に行う効果が得られます。

 

 

               高知市神田のアジロ山で遊ぶ子どもたち 

 

羽迫博己の、森のようちえん

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