「高知ファンクラブ」 の連載記事集1

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連載第2回 若草幼稚園・すくすくの森で育まれるもの・・・とぎすまされる感性(その2)

2011-01-19 | かしこくて、たくましい子どもに育てる

少々の雨でも週に一度は行くすくすくの森。三歳の時、バスを降りて森に差し掛かるだけで圧倒されて泣いていた子どもや、坂道が恐い、大きな木が恐いといって泣いていた子どもも、回を重ねる毎に幼稚園のどの場所よりもすくすくの森が大好きになっていきます。

この森で、子どもたちは何を育んでいくのでしょうか。 

2 とぎすまされる感性と

      美しいものを美しいと感じる心

  

                             若草幼稚園 岡林道生

 

 森は私たちに様々な感動を与えてくれます。目に触れるもの、耳に届いてくるもの、どこからか漂ってくる匂いや香り、肌に触れるもの、子どもたちは全身で自然の息吹を感じながら感性を磨いていきます。

(2)音探し

私たちは、気づかせたいことに対して、意図的に子どもたちに働きかけることがあります。森の音探しがその一つです。わんぱくの森は深い森の中にあるので、とても静かでしんとしています。

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森に着くと思いのままに遊び始める前に、みんなでできるだけ小さく集まり、静かに耳を澄まして森の音に気づく時間をとります。先生が囁くように言います。「お話しないでね、静かにしていたら、森の声が聞こえてきます。 

目をつぶって、先生がいいよというまでよ、いい、」口に指を持っていって「シー、・・・。」緊張の糸が張られたような時間が10秒、20秒と過ぎて、少しザワザワし始めると先生が「聞こえましたか。」と問いかけます。「鳥の声が聞こえた。」「ほんとうね、先生も聞こえました。 

でもね、先生は他の音も聞こえましたよ、みんなも見つけてね。」「私ね、水の流れる音が聞こえた。」「そう、よく聞けたね。他の音も見つかると思いますよ。耳をすましてね、もう一度よ。」また、30秒、40秒と音を探します。

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「風が葉っぱをゆする音が聞こえた。」「何かが動きよった。」2回、3回繰り返すうちに「先生、木の実の落ちる音もした。」「鳥の声、色々ある。」と言い始めます。「ほんとう、たくさんあるね。じゃ最後、今度はどっちの方からどんな音や声が聞こえてくるかな。」子どもたちは、瞼をひくひくさせたり、顔を声のするほうに向けたりして、一生懸命に音を探しています。 

先生の合図があると、聞こえた方向を指さして口々に先生に教えてくれ、友だちとも教え合います。「先生、森は秘密ごっこしゆうがやない?」「エッ、なんで?」「だってよ、静かにせんと聞こえんやん。秘密ごっこでね。」と4歳のレオ君が耳もとで言いました。「ほんとねー。」と答えながら、子どもの感じ方ってすばらしいと思いました。

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この音探しは、季節によって場所を変えたり、虫の声、鳥の声、などと探す音を限定したりする時があります。そうすることで、子どもたちの感覚が研ぎ澄まされていくからです。 

子どもたちは、だんだん森の音や森に住む動物の声を聞き分けるようになります。また、季節の移ろいを感じたり、その感じた心の模様を話すようになります。 

梅の花が咲く頃、タイチ君が、「先生、ホケ、キョ、キョキョ、ケキョケキョ、って聞こえるけど、あれ何?何の鳥が鳴きゆうが?」と聞いてきました。「あれね、鶯が鳴く練習しゆうがね。」「エッ、ホーホケキョって鳴く練習しゆうが?」「そうよ、よく聞きよってよ、段々上手になるき。」二回三回、鶯は少しずつ上手になって、五回六回と鳴いているうちに「ホーホケキョ」と上手に鳴きました。するとタイチ君は、ホッとした声で「上手になってよかったね。」と言って離れていきました。

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それからタイチ君は、鶯の声を聞いた所に来るたびに、鶯の声を探し、「ケキョケキョ」と鳴く鶯がいたら友だちに「鶯が鳴く練習しゆうがよ、聞きよってよ上手になるき、頑張っちゅうでね。」と必ず声をかけていました。 

子どもたちは、虫の声で季節も感じています。春、セミが鳴き始めると「夏が来るぜ。」と言い、アブラゼミやクマゼミがかまびすしく鳴くと「セミの声でよけい暑い」と言いながらセミを追いかけ、ヒグラシが鳴き始めると「秋やね。」と言うようになります。 

そして虫の声に耳を澄まし、「きれいな声やね。」とか「なんか淋しいね。」などと言います。子どもたちの洩らす言葉の数々は、私たちをしんみりと「ほんとうね。」と思わせ、感慨深くさせることがしばしばです。

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 また、子どもたちは風や沢の音、雨の音の強さで、森の状況を判断するようになってきます。そして、ここからはよそう、もう帰ろうと言い出します。音から育まれる感性は生きる力も育んでいるようです。 

子どもたちは見たものへの気づきはよくしますが、聞こえるものへの関心は余り高くありません。私たちは感覚の働き如何が、感性を豊かにする基盤の一つではないかと考えています。だから、音探しの体験が多くできるように働きかけているのです。 

(文中の画像は、若草幼稚園より提供していただいたものを中心に、編集者が選んで挿入したものです)  

〔『保育の実践と研究』(第15巻第2号)より転載〕

 

第1回の連載ほか、

 

かしこくて、たくましい子どもに育てる」コーナーを作成しました。  

 

 

HN:ちるどれん

 

かしこくて、たくましい子どもに育てる(高知市・若草幼稚園の実践)

 

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