連載第3回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・知的好奇心を育む(その4 年中児の知的好奇心)
高知市若草幼稚園 園長 岡林道生 執筆 〔『保育の実践と研究』(第15巻第4号)より転載〕
3.知的好奇心を育む
(3)年中児の知的好奇心(興味、関心)の特徴
②こだわる、集める、並べる
年中児が森で遊んでいる様子を見ていますと、一つのものにこだわる、こだわった物を集める、集めたものを並べるという特徴が見られます。そうしながら、現実と物語の世界を行きつ戻りつして遊んでいます。
深い森の中には、子どもたちへの贈り物がたくさん落ちています。椿の花がポトリポトリと落ちていたり、くちなしの花びらがポツンと落ちていたりします。秋が深まってくると赤や黄、茶色の落ち葉と一緒にドングリの実が大小様々丸いのや長いのがそこらじゅうに落ちています。
この日は、Hちゃんのグループが黄色い葉っぱを集めて遊んでいました。「先生、黄色い葉っぱきれいでしょう。」「そうね、きれいな黄色やね。」「お船みたいなかたちでしょう。」「ほんとね、お舟みたいやね。」「そうでしょう。」「Hちゃん、赤い葉っぱもきれいだよ、ほらっ」と私が手にとって見せると「そうね」という顔を見せるだけでした。
そして、「Rちゃん、黄色い葉っぱ集めよう。」「そうしよう」とRちゃん。「あ、あそこにあるよ」とHちゃん。「あっ、ここにもあるよ」とちょっと離れたところからYちゃんが届けてくれました。
石を台に見立てて、MちゃんとKちゃんが集めた葉っぱを並べ始めました。「ねー、黄色い葉っぱってきれいでね。」とKちゃんが言います。Rちゃんが小さい棒を持ってきて、「これでバーベキュー作ろう」と言い、そうしようと6人で作り始めました。「先生、バーベキューいりませんか。」「おいしそうだから頂きます。いくらですか?」「いくらにする?」などとやり取りが始まりました。
途中で私が「赤い葉っぱのも欲しいなー。」と言うと、「今日はありません」とHちゃんが言い、みんなも「今日はありません」と言います。なぜ、他の色はいけないのでしょう。そういえば、Iくんのグループはドングリばかり集めて遊んでいるようです。それも同じ形、同じ色のどんぐりばかりを集めています。拾ってきたドングリを道の斜面に並べていたNくんが「ねね、このまんま行きよったら魔法使いの家に行くがやない?」と言い出しました。
「お菓子の家が見つかるかもしれん。」とTくん。「そうで!」とNくん。FくんとOくんとSくんはドングリを磨いては並べる動きを黙々と続けていましたが、5mほど並べたときFくんが「もし夜になって帰れんなったらどうする?」と言いました。「ドングリがあるきわかる」とOくん。「けんどリスが食べたらどうする?」「大丈夫で、園長先生がこの森にはリスがおらんて言いよった。」5人は、安心したようにほっと息をつき、また並べ始めました。
年中児は自分の姿、形、生活の仕方を通して対象物を見、それにこだわって、集める、並べるという動きがよく見られます。その関わりのなかで、様々な違いに対する興味、関心を深め、広げています。
したがって、その関わり方に虚と実が入り混じっていることもよくあります。また友だち同士で驚きや発見を共有する喜びも味わうようになっていて、そうした関係が知る喜びを深めていることもわかります。
対象物にこだわる分、様々な特徴に気づき、とても熱心な様子で質問をしてくるので、よっぽど知りたいのだろうと推察し、知っている限り丁寧に答えるのですが、フーンと受け流すような答えが返ってくることが多く、拍子抜けしてしまいます。
きっと、大人が知っていると思うからこそ問うのでしょうが、返ってきた答えをどんなふうに自分の中に位置づけたらいいのかわからないのでしょう。全く別の場面で思い出したり、「さっきのよー。」ともう一度同じ質問をしてくることがよくあります。年中児が自分なりに咀嚼し、消化できるまで、繰り返される質問には丁寧に答えていく必要があります。
このようなこだわりを見せる年中児の表現活動は、全体をバランスよく描くよりも、ある部分をリアルに描く傾向があります。まるで本当に動き出すかのような生き生きとした描写は、観る者に驚きや感動を与えてくれます。
HN:ちるどれん
◎かしこくて、たくましい子どもに育てる(高知市・若草幼稚園の実践)
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