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鈴木朝夫の講演・出版の記録・・・その8 新エネルギー資源の使い方 1) メタンハイドレートとは

2012-11-09 | 鈴木朝夫の講演・出版の記録

(日本電気計測器工業会主催 計測展2012 OSAKA、計測と制御で創る未来の地球、2012,10,31、於;グランキューブ大阪 講演)

新エネルギー資源の使い方
      メタンハイドレート、地熱発電、そしてストレージ

      鈴木 朝夫 (東京工業大学名誉教授・高知工科大学名誉教授、高知県メタンハイドレート開発研究会理事長)


もくじ)
はじめに) 資源大国日本  ----------1
1) メタンハイドレートとは        ----------1
2) メタンハイドレートの掘削は       ----------3
3) 国家プロジェクトと高知の動き        ----------4
   4) エネルギー資源の分類      ----------5
  5) 日本は昔からの資源大国(黄金の国、ジパング) ----------6
  6) ビッグデータとスマート・グリッド  ----------7
  7) 事故は必ず起きる(低確率巨大事故)      ----------8
  8) 右肩下がりの下山の先は         ----------9
おわりに) 生き甲斐とは、幸せとは  ----------10


    
はじめに) 資源大国日本 

 日本は今、海底資源・地下資源によりエネルギー・資源大国になろうとしている。それらは、慎重に、ゆっくりと、賢く使うべきもである。経済成長のためではない。右肩下がりの時代を生きる減速に必要なエネルギー源と考えるべきである。心豊かな生活のために。

1) メタンハイドレートとは


{ハイドレートの結晶構造は石鹸の泡}  包接化合物(クラスレート)の一種である。メタンハイドレートでは、水分子が水素結合で作る立体網目のカゴ毎に、メタン分子が収まっている。立体網目は、水分子が作る正五角形の面から成る正12面体(Sカゴ)が2個、正五角形12面と正六角形2面の計14面から成る14面体(Mカゴ)が6個の割合で形成されている。カゴの各面は両側の2つのカゴとの共有であり、従ってMカゴの正六角形は、接続している隣のMカゴの正六角形と共通になる。Mカゴは一線に連続していることになる。また各辺は3つのカゴの共有であり、頂点は4つのカゴの共有である。この立体構造は石鹸水の泡と良く似ている。

 

{ハイドレートの結晶構造は立方体}  立方体単位胞の8つの頂点には正12面体のSカゴが位置するので、単位胞あたり1個に相当する。向きを変えた中心の1個と合わせてSカゴは2個である。14面体のMカゴは一直線に並ぶが、横に(X)、縦(Y)に、奥(Z)にと3方向に向いている。立方体の面には2個づつ配置されて計12個になるが、隣の面と共有するので、単位胞の所属は6個になる。これらのカゴの全てにメタン分子が入ればその数は合計で8個である。メタン分子1個は5.75個の水分子で囲まれている勘定になる。なお、MカゴにNbを、SカゴをSnにと置き換えれば、それは超伝導金属間化合物のNb3Snの結晶構造のA15構造になる。


                          --------------
  注:この講演原稿では、字引のように項目を挙げて説明を加えている。知りたいときに、知りたいことを、探せるようにしたつもりである。講演の中で全ての説明はできない。何度も読み返して頂ければ幸いである。また、図・表はできるだけ使わないことにしている。検索すれば直ちに調べることができるからである。好奇心を発揮して貰いたい。
{ハイドレートから取り出せるメタンは} メタンハイドレートに含まれるメタンを気体として取り出せば、その体積は最大で170倍になる。しかし、メタン分子の充填率が100%にはなっていない。他の原子・分子が占有したり、空隙である可能性もある。

{メタンハイドレートの相安定性}  安定領域の温度・圧力の境界は、+10℃で76気圧、+4℃で50気圧、0℃で26気圧、-30℃で10気圧、-80℃で1気圧などである。言い換えれば、温度が低下すれば圧力は小さくても安定であり、圧力を高くすれば温度が高くても安定である。

{海水の圧力}  水深10mの水圧は、水の圧力1気圧+水面を押す大気圧1気圧=2気圧である。約600mの海底は約60気圧であり、プラスの海水温でもメタンハイドレートが安定な領域になる。このような海底から湧出してくるメタンが、高圧下の海水に触れて直ぐにメタンハイドレートの小さな白い粉末状の固体に変わる現象が観察されている。

{燃える氷、メタンハイドレート}    海底地層中から掘り出したメタンハイドレートは見たところは、白く固くて氷に似ており、触れば冷たく感じる。火を付けると炎を出して燃えるが、常温・常圧で比較的安定である。正に「燃える氷」である。なお、水とメタンガスを配合して、所定の高圧・低温に保てばハイドレートを実験室で作ることができる。
 注)メタンハイドレートの状態を「メタンハイドレートとは、『燃える氷』とも言われ、天然ガスの主成分であるメタンが、高圧・低温の海底下や凍土下でシャーベット状に固まったもの。」とする説明が見受けられる。間違った表現であろう。「固く白い燃える氷」ではないのか。

{自己保存効果} ハイドレートが安定に存在できない常温・常圧であっても、メタンを放出して残された水は氷結して表面を覆う。これは、メタンと水に分離する反応が吸熱であることによる。この氷が保護被膜の作用をして反応を遅らせ、常温でも比較的安定である。しかし、このことがメタン採掘に際して抗井を氷結閉塞させる可能性を孕んでいる。

{固体・液体・気体}  一般に、物質に圧力を加えれば、体積は小さくなる。そして、気体は固体に変化(相転移)し、体積を減少させていく。物質の温度を下げれば、体積は縮小する。気体は液体に、液体は固体に相転移し、その時は発熱を伴なって温度を一定に保とうとするかのように振舞う。自然界では、外界からの変動を、自分自身を変化させて緩和しようとしている。

{水素結合} 1個の電子を持つ水素原子は1価であり、共有結合の結合手は1つで、水分子はH-O-Hと表される。しかし、電子を引き寄せる酸素が少しマイナス(δ-)に偏り、電子が引っ張られた水素は少しプラス(δ+)になっている。イオン結合ではないが、静電的な結合状態が水分子のδ-と他の水分子のδ+が引き合って水素結合ができる。これが水の様々な面白い性質の原因となっている。ハイドレートを形成するのもその一例である。

{地球上に生命を育む水} 常温付近に氷・水・水蒸気の安定域が接近している(高い融点と沸点)、暖まり難く、冷め難い(大きな比熱)、水滴ができる(大きな表面張力)、水に浮く氷(氷の比重が大きい)、物質を溶かし込む(大きな溶解性)などである。全て水素結合のなせる業である。この特異な性質が水になければ、地球上にこれだけの様々な生命は生まれ出なかった。
 
{メタンハイドレートの起源} 微生物分解起源と熱分解起源のメタンハイドレートがある。地層中に堆積した動物や植物の生物起源の有機物をバクテリア(古細菌)が分解し、メタンを生成する。一方、更に地中深く沈み込んだ有機物は地熱により熱分解し、メタンを発生させる。いずれも隙間の多い砂泥互層(ダービダイト)に集積する。海水温は深くなると低下し、圧力は高くなる。海底下の地層は深くなるとさらに圧力も高まるが、温度も地熱により高くなる。その中間にメタンハイドレートの安定な温度域・圧力域が存在する。
 
{メタンハイドレートの分布域は}  静岡から四国・九州の100~300km沖合、南海トラフ一帯に分布する。その他に茨城県沖、新潟県沖、北海道南岸沖などが有望視されている。水深700~2000mの海底下、100~500mの地層がメタンハイドレート形成の条件を満たしている。海底疑似反射面(BSR)で当たりを付け、試錐を行って詳細を知ることができる。

{海底疑似反射面(BSR)とは}  船で曳航するエアガンから大きな音波を出し、多数の受信機で地層からの反射音を記録する。地層構造からの反射とは別に、層状に横たわるメタンハイドレートの下層境界部分からの強い反射が帰ってくる。このBSRは海底地形に平行になっている。これから下は水とガスを含む柔らかい地層であり、上に行くほど地熱の影響が弱まり、メタンハイドレートの安定な温度・圧力になる。BSRはその境界面であり、その分布調査からハイドレート層の存在域が推定できる。

{メタンハイドレートの賦存量は} 日本周辺に賦存するメタンハイドレートは、我が国の天然ガス年間消費量の約100年分と推定される。天然ガス消費量は年間937億m3である。

{泥火山とは} 南海トラフの地中深部の未固結堆積層に高圧がかかり、流動化してその上位にある浸透率の低い粘土層を破砕して、表面に噴出してきたものが泥(どろ)火山である。メタンハイドレート層に貫入・上昇した泥ダイアビルは泥の他に、メタンと水を伴って噴出する。

{リチウム}  メタンが噴き出している泥火山で、メタンと共に噴出する水に大量のリチウム(海水の1000倍)が含まれている。しかし、その理由は解明されていない。NaClはメタンハイドレートの安定領域を低温・高圧側にシフトさせ、インヒビターとして使えると報告されている。他の塩とは逆に、海水中に含まれるLiClがメタンハイドレート形成を助けるのかも知れない。あるいは、濃縮されるとすればその仕組みを考える必要がある。メタン回収に際して得られるであろう「リチウムに富んだ水」から、効率の良いリチウム回収が期待できそうである。リチウムイオン二次電池の正極材料、電解質、負極材料の何れにも必要である。今後のエネルギー問題にとって不可欠の物質である。 

{メタンの発生源} 湿地帯・湖沼、熱帯雨林、天然ガス、海底から湧出、泥火山、家畜の糞尿や牛のゲップ。一方で、森林の土壌がメタンを吸収すると言われている。

{天然ガス}  主成分はメタン。輸送・貯蔵は、気体の1/600の体積を持つ液体状態(LNG)で行うが、温度を-162℃以下に保たなければならない。

{大気の役割} フロンのような人工的な化学物質以外では、水蒸気(H2O)、炭酸ガス(CO2)、メタン(CH4)の保温効果が大きい。大気は地球環境を暖かく包む毛布の役割である。太陽から受け取った熱エネルギーを宇宙に放散するのを遅らせ、冬夏、夜昼の温度差を緩和する役が大気である。この作用が過度であれば温暖化になる。

 

参考の図 (原稿では割愛)
  第1図 メタンハイドレートの結晶構造
  第2図 メタンハイドレートの相平衡
                 (海洋環境で安定に存在できる圧力・温度範囲)
  第3図 メタンハイドレートの分布域
  第4図 その場局所加熱掘削装置の概要
(ver.2012/10/15)

 

1) メタンハイドレートとは  2) メタンハイドレートの掘削は  3) 国家プロジェクトと高知の動き

4) エネルギー資源の分類  5) 日本は昔からの資源大国(黄金の国、ジパング)  6) ビッグデータとスマート・グリッド

7) 事故は必ず起きる(低確率巨大事故)  8) 右肩下がりの下山の先は  

 

〒718-0054  高知県香美市土佐山田町植718

鈴木朝夫   s-tomoo@diary.ocn.ne.jp

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鈴木朝夫の講演・出版の記録・・・その8 新エネルギー資源の使い方 2) メタンハイドレートの掘削は

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      メタンハイドレート、地熱発電、そしてストレージ

 

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もくじ)
はじめに) 資源大国日本  ----------1
1) メタンハイドレートとは        ----------1
2) メタンハイドレートの掘削は       ----------3
3) 国家プロジェクトと高知の動き        ----------4
   4) エネルギー資源の分類      ----------5
  5) 日本は昔からの資源大国(黄金の国、ジパング) ----------6
  6) ビッグデータとスマート・グリッド  ----------7
  7) 事故は必ず起きる(低確率巨大事故)      ----------8
  8) 右肩下がりの下山の先は         ----------9
おわりに) 生き甲斐とは、幸せとは  ----------10

 

2) メタンハイドレートの掘削は

{従来のエネルギー資源の掘削法} 固体の石炭:固体を掘り出す。液体の石油:液体が湧き出る、液体を汲み出す。気体の天然ガス:気体が噴き出す、気体を吸い出す。固体のメタンハイドレート:固体を気体(メタン)と液体(水分子)に分離し、気体として地上に取り出す。石炭、石油、天然ガスの従来のエネルギー資源との大きな違いがここにある。

{メタンハイドレートからのメタン回収法} 「加熱法(温水圧入)」、「加熱法(抗井加熱)」、「減圧法」、「分解促進剤注入法」、「ゲスト分子置換法」などが考えられてきた。温度を上げれば、体積の増える方向の水とメタンの分離に向かう。圧力を解放すれば、同じく体積の増える方向に向かう。加熱法は、メタンの分離が吸熱反応だから、際限なく加熱し続ける必要が出てくる。

{減圧法によるメタン回収} 日本のMH21開発計画では減圧法が採用されている。ハイドレート堆積層に水平抗を堀り、発生する水を汲み上げて圧力を低下させ、これにより発生するメタンを吸い上げる。この分解は吸熱反応であり、周囲の温度を低下させる方向に動く。しかし堆積層の周囲の地熱により溶解が進み、圧力低下を持続させる。問題は減圧効果の範囲と持続時間にある。生産性障害になるのは、氷の生成であり、自己保存性が裏目になる。温水圧入や抗井加熱などの加熱法との併用が試みられている。出砂も問題であり、海底や地上に大量の堆積粒子汚泥を取り出すことになる。

{分解促進剤注入による回収法} メタンハイドレートの形成を阻害する分解促進剤(インヒビター)、例えばメタノールや塩を注入すれば、メタンの分離は可能である。だが、促進剤注入のコストが問題になる。

{加熱法(その場局所加熱)の新掘削法} 高知県企業からのこの特許のメタンハイドレート分解・回収装置の基本は「加熱法」である。掘削先端・その場局所燃焼加熱・超臨界水循環・減圧・押上圧送方式と呼べる。地上からは、空気(酸素)、可燃ガス(スタート時)、水、そして制御信号を送り込み、地上へは、回収メタンガス、燃焼排気ガスを取り出すことになる。掘削先端近くに置いたガスタービン発電装置で、その場で発生のメタンを地上からの酸素で燃焼し、それで電力を供給し、各種の熱エネルギー発生装置の電源とする。ヒーター熱による蒸気発生、高周波加熱による過蒸気生成、メタン押し上げのための超臨界水の発生、衝撃波発生によるMH層の破砕、マイクロ波発生などの各種の刺激の電源になる。

 

図2 メタンハイドレート分解・回収装置
  地上から、空気(酸素)、可燃ガス(スタート時)、水、そして制御信号、 
地上へは、回収メタンガス、燃焼排気ガス。
掘削先端のメタンハイドレート分解装置は
  (ガスタービン発電装置)で電力をその場供給、
(熱エネルギー発生装置)はヒーター熱による蒸気発生、
高周波加熱による過蒸気生成・超臨界水発生
その他、衝撃波発生によるMH破砕などの電源に。

 

 出典:豊かな土佐を取り戻すには ~メタンハイドレートの可能性~(その2)

 

1) メタンハイドレートとは  2) メタンハイドレートの掘削は  3) 国家プロジェクトと高知の動き

4) エネルギー資源の分類  5) 日本は昔からの資源大国(黄金の国、ジパング)  6) ビッグデータとスマート・グリッド

7) 事故は必ず起きる(低確率巨大事故)  8) 右肩下がりの下山の先は  

 

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鈴木朝夫の講演・出版の記録・・・その8 新エネルギー資源の使い方 3) 国家プロジェクトと高知の動き

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      メタンハイドレート、地熱発電、そしてストレージ

 

      鈴木 朝夫 (東京工業大学名誉教授・高知工科大学名誉教授、高知県メタンハイドレート開発研究会理事長)

 


もくじ)
はじめに) 資源大国日本  ----------1
1) メタンハイドレートとは        ----------1
2) メタンハイドレートの掘削は       ----------3
3) 国家プロジェクトと高知の動き        ----------4
   4) エネルギー資源の分類      ----------5
  5) 日本は昔からの資源大国(黄金の国、ジパング) ----------6
  6) ビッグデータとスマート・グリッド  ----------7
  7) 事故は必ず起きる(低確率巨大事故)      ----------8
  8) 右肩下がりの下山の先は         ----------9
おわりに) 生き甲斐とは、幸せとは  ----------10 

 

3) 国家プロジェクトと高知の動き


{メタンハイドレートの開発研究}  日本のメタンハイドレートの調査研究は2001年に始まっている。資源エネルギー庁から業務委託を受けて、(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構、(独)産業技術総合研究所、(財)エンジニアリング振興協会の3者が「メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム(MH21研究コンソーシアム)を組織し、「フェーズ1」の活動に入った。

{MH21フェーズ1}  日本周辺海域の賦存状況や賦存量調査を目的として、東海沖から熊野灘に掛けての東部南海トラフ海域で物理探査や試錐を行った。また、カナダの凍土で陸上産出試験を行った。ここでは基本的に減圧法を採用している。2001~2008年。

{MH21フェーズ2}  研究開発の第2段階に相当する2010年からは海洋産出試験の実施に向けた事前調査や設備検討などの準備段階に入る。2012年後半から東部南海トラフ上の渥美半島沖で1000mの海底から300m掘削し、メタン採取を行う予定である。また、東部南海トラフ以外の海域の調査、長期生産性や生産障害の解決、経済的・効率的な産出技術の確立が目標となっている(2009~2015)。商業的産出が目的の「フェーズ3」に移行する予定である。(2016~2018)。

{地の利、高知}  滑走路2500mの高知龍馬空港・拡張の余地を残す高知新港(FAZ)・これらを結ぶ高速高知道、そして香南市・香美市・南国市・高知市・いの町が位置する香長平野は広い。これらは生産設備・試験設備・備蓄基地などの各種施設の立地条件を充分に満足するものである。今は、海洋研究開発機構所属の地球深部探査船「ちきゅう」の寄港が出来ることが素晴らしいことである。正に「活力は土佐沖の海底より出ず」である。

{海の利、土佐}  土佐湾沖の南海トラフのメタンハイドレートとそれに伴うリチウムの回収だけではなく、200海里の排他的経済水域内には各種の有望な海底鉱物資源の存在する可能性が高い。Ni、Co、Ptなどを含むコバルトリッチ・クラスト、Ni、Cu、Mnなどを含むマンガン団塊、そしてAu、Ag、Zn、Pb、Cuなどを含む熱水性鉱床である。

{人の利、龍馬}  高知には知の利がある。海洋研究開発機構(高知コア研究所)、高知大学、高知工科大学、県立高知大学、高知県産業技術委員会他がある。県内企業からの掘削に関する特許が認可された。付随した関連特許が山のように出てくるであろう。様々な関連するベンチャー企業も生まれてくるだろう。第二の龍馬たちに、第二の弥太郎たちに期待したい。

{NPO21世紀構想委員会とは}  真の科学技術創造立国を確立するため、研究テーマを掲げて討論する場として1997年にスタートした。会員はベンチャー企業、行政官庁、大学、マスコミの4極から参加している。会員数は約100人である。理事長は馬場錬成氏(東京理科大学大学院 知財財産戦略専攻 教授、元読売新聞論説委員)である。

{メタンハイドレート実用化研究委員会}  NPO21世紀構想委員会に所属する会員の特許出願の支援を行ってきた渡邉望捻氏(イオン特許事務所弁理士)らの要請により、すなわち国家プロジェクトとして取り上げるべきとの観点から、表記の委員会を設置した。2010年7月27日に馬場錬成氏を先頭に、平朝彦氏((独)海洋研究開発機構 理事、現理事長、元高知大学教授)に委員長就任をお願いした。
 2010年12月6日には、第2回のメタンハイドレート実用化研究委員会が開かれた。この委員会をべースにして、「メタンハイドレート国際戦略部会(仮称)」、「メタンハイドレート技術専門委員会(仮称)」を、そして高知県ベースで「高知県メタンハイドレート開発研究会」を設置することが決まった。仕事の手始めは内閣府へ「国際戦略総合特区」の申請書、「メタンハイドレート実用化研究から資源大国へ」を提出することであった。この申請は内閣府の制度に馴染まなかったが、考え方は引き継がれ、推進していくことが了承された。
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{高知県メタンハイドレート開発研究会}  2011/7/18(海の日)に、平朝彦氏、臼井朗氏(高知大学教授)、木川栄一氏をお招きして記念講演会を開催し高知県での研究会を発足させる運びになった。2012/2/16には、木川栄一氏(海洋開発機構・高知コア研究所所長から海底資源研究プロジェクトのリーダーに栄転)に海洋資源の講演を頂いた。2012/7/7には設立一周年を記念して、木下正高氏(高知コア研究所所長)から、また門馬義雄氏(高知工科大学名誉教授)より「環境とエネルギーから見た50年後の地球」と題する講演を頂いた。
 国の行う壮大なプロジェクトに対して、高知県の民・産・官を挙げての受け皿は整った。この動きを隣接する沿岸地域だけではなく、県内全域にも伝え、あらゆる分野の県内企業の協力も得て、広く連携を図って行くことになる。

 

1) メタンハイドレートとは  2) メタンハイドレートの掘削は  3) 国家プロジェクトと高知の動き

4) エネルギー資源の分類  5) 日本は昔からの資源大国(黄金の国、ジパング)  6) ビッグデータとスマート・グリッド

7) 事故は必ず起きる(低確率巨大事故)  8) 右肩下がりの下山の先は  

 

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鈴木朝夫の講演・出版の記録・・・その8 新エネルギー資源の使い方 4) エネルギー資源の分類

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もくじ)
はじめに) 資源大国日本  ----------1
1) メタンハイドレートとは        ----------1
2) メタンハイドレートの掘削は       ----------3
3) 国家プロジェクトと高知の動き        ----------4
   4) エネルギー資源の分類      ----------5
  5) 日本は昔からの資源大国(黄金の国、ジパング) ----------6
  6) ビッグデータとスマート・グリッド  ----------7
  7) 事故は必ず起きる(低確率巨大事故)      ----------8
  8) 右肩下がりの下山の先は         ----------9
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4) エネルギー資源の分類


{エネルギー資源は大きく2種類}
 1) 蓄積エネルギー・枯渇性エネルギー(貯蓄・資産として相続した資金):石炭、石油、天然ガス、メタンハイドレート、シェールオイル(ガス)などの化石燃料、核エネルギー、(地熱エネルギー)・・・・遊んで食えば山も尽きる、いつまでもあると思うな親と金。
 2) 再生可能エネルギー・自然エネルギー(給与や売上で獲得した所得):バイオマス、水力(小水力)、風力、波力、潮汐力、海流、温度差、太陽光、太陽熱・・・稼ぎに追いつく貧乏なし。 3) その他として エネルギー貯蔵(当座預金・運転資金)・・・・備えあれば憂いなし。

{石油ピーク}  石油の産出量がピークを過ぎると、緩やかな減少に転じて石油減耗の時代となる。米国の石油生産量は1971年にピークを迎えたことが知られている。既に、全世界の石油生産量はピークを過ぎ、石油減耗の時代に入ったとも考えられる。

{エネルギー利得率、EPR}   EPR=(出力エネルギー)/(入力エネルギー)である。採掘・精製・保管・輸送などの生産に必要な入力エネルギーと利用出来る出力エネルギーの比がEPRである。ある文献では、石油火力は7.9、石炭火力が6.5、液化天然ガス火力2,4、風力3.9、地熱6.8、原子力は17.4などとなっているが、計算の根拠が不明である。計算基準を決められないのでは。

{原子力エネルギー}  津波による福島第一原発の事故で、信頼は一気に低下した。また、地球温暖化は原子炉の排水による海水温の上昇であると考える人も多い。都市のヒートアイランド現象に匹敵するとの試算もある。また建設段階から、高レベル廃棄物処理、そして廃炉までの入力エネルギーの見積もりは難しいし、CO2排出も大きいと思われる。

{原発比率(2030)} 政府は2030年時点の原発比率として、3つの選択肢(0%、15%、20~25%)を示した。エネルギー基本計画がどのような結論になるか見守りたい。揺れ動いている。

{活断層・活火山} 約200万年以降に繰り返し動いた断層が活断層で、今後も動くと想定している。原発再稼働に向けた議論で問題になるのは断層の活動の可能性である。日本列島では可能性が少ない場所はないと云っても過言ではない。フィンランドでは高レベル放射性廃棄物の地下への埋蔵で、何億年来動いたことのない岩盤であることを確かめている。何億年後の知能の高い生物に知らせるような表示が必要か否かの議論をしてる。なお、活火山の定義は、噴火記録のある山から1万年前の証拠があるものへと広がっている。休火山、死火山の表現はしなくなった。

{メタンのエネルギー利得率}  燃料としては天然ガスの代替として使える。ガスタービン発電は一般的である。また水素燃料電池としての可能性も高い。C1化学の原材料として、複雑な有機化合物の合成も、また使いやすい化合物に変化させた燃料も可能である。

{ハイドレートからのメタンは副産物} リチウムがメタンハイドレートの分解水に含まれているとすれば、どちらが副産物か分からなくなる。局所加熱によるエネルギー節約型の掘削法でもあり、総合的なエネルギー利得率はかなり大きなものになると期待できる。

{大地震の誘発は} 今の人類の知識の範囲では因果関係を考える根拠を持たない。予知できる学問の進展への期待と、コスト・ミニマムの安全・安心の対策を考える必要がある。

{地球温暖化への影響}   CO2の20倍もの温室効果があり、5500万年前の生物の大量絶滅の原因とも言われているメタンである。これは46億年にわたる地球のダイナミックな営みの中での物語である。議論になるのは、掘り出して燃焼させることと、自然放出との比較になる。メタンはCO2の排出量の差から、代替エネルギー源として期待できる。

 

1) メタンハイドレートとは  2) メタンハイドレートの掘削は  3) 国家プロジェクトと高知の動き

4) エネルギー資源の分類  5) 日本は昔からの資源大国(黄金の国、ジパング)  6) ビッグデータとスマート・グリッド

7) 事故は必ず起きる(低確率巨大事故)  8) 右肩下がりの下山の先は  

 

〒718-0054 高知県香美市土佐山田町植718

鈴木朝夫 s-tomoo@diary.ocn.ne.jp

0887-52-5154、携帯 090-3461-6571

 

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鈴木朝夫の講演・出版の記録・・・その8 新エネルギー資源の使い方 5)日本は昔からの資源大国

2012-11-09 | 鈴木朝夫の講演・出版の記録

 

(日本電気計測器工業会主催 計測展2012 OSAKA、計測と制御で創る未来の地球、2012,10,31、於;グランキューブ大阪 講演)

 

新エネルギー資源の使い方
      メタンハイドレート、地熱発電、そしてストレージ

 

      鈴木 朝夫 (東京工業大学名誉教授・高知工科大学名誉教授、高知県メタンハイドレート開発研究会理事長)

 


もくじ)
はじめに) 資源大国日本  ----------1
1) メタンハイドレートとは        ----------1
2) メタンハイドレートの掘削は       ----------3
3) 国家プロジェクトと高知の動き        ----------4
   4) エネルギー資源の分類      ----------5
  5) 日本は昔からの資源大国(黄金の国、ジパング) ----------6
  6) ビッグデータとスマート・グリッド  ----------7
  7) 事故は必ず起きる(低確率巨大事故)      ----------8
  8) 右肩下がりの下山の先は         ----------9
おわりに) 生き甲斐とは、幸せとは  ----------10

 

5)日本は昔からの資源大国(黄金の国、ジパング)


{金銀鉱石の産出}   江戸時代には金は佐渡金山、銀は石見銀山が有名だった。現在、鹿児島県の菱刈鉱山の金の推定埋蔵量は250t、金鉱石は250g/tと高品位である。普通は数g/tである。

{海底鉱物資源} 200カイリ経済水域内で採れる鉱物資源は多い。リチウムを含む泥火山を始めとして、熱水鉱床、マンガン団塊、コバルトリッチ・クラストなど鉱物資源は様々である。

{地熱発電} 日本列島は火山の島、温泉の国、地熱は固有の熱資源であり、自然エネルギーである。地熱発電は天候に左右されないので、稼働率は極めて高く、何れの再生可能エネルギーとも比較にならない。しかし、地熱資源の多くは国立公園内にあり、導入促進には法的措置や規制緩和が不可欠である。また、地域や温泉事業者との調整が重要である。高温岩体発電、バイナリー発電など方式は様々である。

{リチウム電池} リチウム(Li)は最も軽い金属である。日本は有数のリチウム産出国になる可能性を秘めている。エネルギー蓄積の役割を演じる金属リチウムを資源として持てることは国際戦略上で極めて有利である。二次電池に必要なコバルト資源も直ぐそこの海底に眠っている。

{電気自動車}  夜間電力での蓄熱は現在多くの家庭で実用化されている。同じように、自家用自動車が動ける蓄電装置として夜間に使われる。再生可能エネルギー発電とともに、スマートハウスの重要な構成要素となる。

{安全保障} 国産のエネルギー資源、鉱物資源があることは極めて有利である。安全保障上だけではなく、外交交渉の切り札として有効である。

 

1) メタンハイドレートとは  2) メタンハイドレートの掘削は  3) 国家プロジェクトと高知の動き

4) エネルギー資源の分類  5) 日本は昔からの資源大国(黄金の国、ジパング)  6) ビッグデータとスマート・グリッド

7) 事故は必ず起きる(低確率巨大事故)  8) 右肩下がりの下山の先は  

 

 

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鈴木朝夫の講演・出版の記録・・・その8 新エネルギー資源の使い方 6) ビッグデータとスマートグリッド

2012-11-09 | 鈴木朝夫の講演・出版の記録

 (日本電気計測器工業会主催 計測展2012 OSAKA、計測と制御で創る未来の地球、2012,10,31、於;グランキューブ大阪 講演)

新エネルギー資源の使い方
      メタンハイドレート、地熱発電、そしてストレージ

      鈴木 朝夫 (東京工業大学名誉教授・高知工科大学名誉教授、高知県メタンハイドレート開発研究会理事長)


もくじ)
はじめに) 資源大国日本  ----------1
1) メタンハイドレートとは        ----------1
2) メタンハイドレートの掘削は       ----------3
3) 国家プロジェクトと高知の動き        ----------4
   4) エネルギー資源の分類      ----------5
  5) 日本は昔からの資源大国(黄金の国、ジパング) ----------6
  6) ビッグデータとスマート・グリッド  ----------7
  7) 事故は必ず起きる(低確率巨大事故)      ----------8
  8) 右肩下がりの下山の先は         ----------9
おわりに) 生き甲斐とは、幸せとは  ----------10

 

6) ビッグデータとスマートグリッド


{ベストミックス} 「直ちに再生可能エネルギーで原子力エネルギー分をカバーすることは、極めて難しい」と強調した上で、(1)節電、省エネ、(2)原発の稼働維持、(3)LNG・火力発電の効率化、(4)再生可能エネルギーの普及促進、これらを総合してベストミックスと名付けている。

{エネルギー総需要削減} ピーク時カット、ネルギー価格とピーク時価格の調整。そして節約、省エネ、リサイクルでことは済むのだろうか。人類の生活態度の変換が必要である。
10月から環境税
{スマートグリッドとは} 他種類のエネルギーの供給側とニーズの多様性を示す需要側の相互連携を高度に知能化した情報通信技術で制御する送配電網である。従来の大型発電所からだけの電力供給を行う発送電網ではない。家庭やオフィスや事業所などの小口電力を消費する需要側にも、多様な発電機能を備え、地域で必要な電力を消費地で生産するような、地産地消の仕組みを備えていることも特徴である。

{スーパー・スマートグリッド} 時々刻々の料金変動制によるエネルギー・シフトの提案。金融市場のイメージ。強大なソフトが必要となる。大きな蓄電能力が必須の条件になる。

{環境アセスメント}   国では道路・港湾・埋立などの公共事業の環境影響評価を行うことを定めているが、開発行為が環境に与える影響の範囲や程度を様々な角度から検討する必要がある。実施主体の構成や経過の透明性が保たなければならない。

{(再生可能)熱エネルギー} 太陽熱、地中熱、温泉熱、バイオマス熱、雪氷熱などそのまま捨て去られている比較的低い温度の熱エネルギー利用することが再生可能熱エネルギーである。例えば、庭に水を撒く効果は蒸散熱・蒸発熱の有効利用である。風流の世界でもある。

{インターネット・プロトコール、IPv4とIPv6} アドレスは幾つあればよいか。現在のIPv4は 2の32乗(=約42億)個である。地球上の人口よりも少ない。IPv6では 2の128乗(= 約340澗)個である。340澗個とは340兆の1兆倍の1兆倍のアドレスになる。IPv4を石油缶の体積とすれば、IPv6は太陽を越える大きさになる。

{ビッグデータ} FacebookやGoogleに代表されるような巨大な情報を取り扱える時代に入っている。初音ミクやコンプリートガチャの巨大さを想像して欲しい。複雑な巨大システムの制御が可能な時代である。欠陥を皆無にすることはできない。低確率巨大事故の候補の1つである。

{リスク、コスト、環境} 原子力以外は安全との考えは当たらない。多様な再生可能エネルギーの大規模化で様々な問題が発生する。3つの要素の相互作用を常に念頭に置くべきである。

{風力発電と太陽光発電} 太陽光は最も発電コストが高い。風力がより低コストであるが、太陽光の3倍の面積が必要であり、騒音被害、特に低周波騒音被害が問題になっている。

{メガソーラー} 出力が1MW(メガワット) (1000kW)以上の大規模太陽光発電施設をメガソーラーと呼んでいる。休耕田や耕作放棄地を利用する計画をソフトバンクが発表した。

{洋上風力発電} 大規模風力発電には着床や浮体がある。ツバを付けた「風レンズ風車」は従来型の3倍の能力を持っている。太陽光発電などを組み合わせ、さらに養殖場、海洋牧場を設置した洋上式多目的複合エネルギーファームの構想がある。台風と津波への対応が重要である。

{エネルギー貯蔵(ストレージ)} 多数の発電電源間の系統安定性の確保。ダム貯水(揚水発電)、燃料電池(水素エネルギー)、二次電池(水素電池、リチウム電池)、超電導、フライホイールなど。

 

1) メタンハイドレートとは  2) メタンハイドレートの掘削は  3) 国家プロジェクトと高知の動き

4) エネルギー資源の分類  5) 日本は昔からの資源大国(黄金の国、ジパング)  6) ビッグデータとスマート・グリッド

7) 事故は必ず起きる(低確率巨大事故)  8) 右肩下がりの下山の先は  


 

〒718-0054 高知県香美市土佐山田町植718

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鈴木朝夫の講演・出版の記録・・・その8 新エネルギー資源の使い方 7)事故は必ず起きる

2012-11-09 | 鈴木朝夫の講演・出版の記録

(日本電気計測器工業会主催 計測展2012 OSAKA、計測と制御で創る未来の地球、2012,10,31、於;グランキューブ大阪 講演)

新エネルギー資源の使い方
      メタンハイドレート、地熱発電、そしてストレージ

      鈴木 朝夫 (東京工業大学名誉教授・高知工科大学名誉教授、高知県メタンハイドレート開発研究会理事長)


もくじ)
はじめに) 資源大国日本  ----------1
1) メタンハイドレートとは        ----------1
2) メタンハイドレートの掘削は       ----------3
3) 国家プロジェクトと高知の動き        ----------4
   4) エネルギー資源の分類      ----------5
  5) 日本は昔からの資源大国(黄金の国、ジパング) ----------6
  6) ビッグデータとスマート・グリッド  ----------7
  7) 事故は必ず起きる(低確率巨大事故)      ----------8
  8) 右肩下がりの下山の先は         ----------9
おわりに) 生き甲斐とは、幸せとは  ----------10

 

7)事故は必ず起きる(低確率巨大事故)


{安全と安心} 安全は、「安全率」、「安全装置」の表現が、安心は、「安心感」の表現ができる。安全は証明ができる客観的事実、安心とは自ら理解・納得する主観的事実である。

{安全か、危険かの両極端} 情報の欠如、不正確な情報。口コミ、うわさ。マスコミによる増幅、悲惨な映像、過大評価と身近な事例。リスク対応が別なリスクを背負うこと。リスク確率の評価を誤る。

{フェールセーフとフールプルーフ} 仕組みが故障すれば安全側に動いていくのをフェールセーフと呼び、操作を間違えても「止まる」といった安全側に動く仕組みがフールプルーフである。

{フォールトトレランス} システムに障害が発生したときに、正常な動作を保ち続ける能力である。障害発生時の被害を最小限度に抑える能力であり、訳は「耐障害性」「故障許容力」などとなる。故障が起こっても、どれだけ耐えられるかといった概念である。

{フォールトツリー}  故障の木という樹形図。起って欲しくない事象(特定の故障・事故)について、その発生要因を上位のレベルから順次下位に展開して、より低位の問題事象の発生の頻度から想定した特定故障・事故の発生確率を算出する。また、これにより、故障・事故の因果関係を明らかにできる。プラント設計や事故予防解析に多く使われている。しかし、低確率巨大事故のような同時多発故障では使えない。ベキ分布の低確率巨大事故は想定外となる。

{正規分布とベキ(冪)分布} 航空機事故、原子力災害、地震発生、ビッグデータ・システムなどでは、過酷な事故は必ず起きることが知られてきた。「文明は事故を発明する」の有名な言葉がある。そして、確率分布が正規分布ではなくベキ分布となることが知られてきた。
 正規分布は、平均値を境として前後に同じ程度にばらついている状態であり、分布図では平均値を対称軸とした釣鐘型の曲線である。つまり、平均値の周辺に多くの値が集まり、値が大小の左右の裾野に向かいデータは急激に減る。
 ベキ分布では、平均値を超えて大きな値の方向に曲線はなだらかに裾野を引き、平均からずれた極端に大きなデータの減衰が遅い。平均値以下では、より小さな値をとるデータの数が極端に増えていく。ビスケットを一撃で粉々にしたときのカケラの分布を想像して欲しい。小さな粉ほどその数は極端に多くなっている。数は少ないが、大きなカケラも残って居る。カケラのサイズの分布はベキ分布と言って良い。

{ブラックマンデー、リーマン・ショック}  株式市場の崩壊はレバレッジ(自己資本より大な力で市場を動かす梃子の仕組み)の作用に似ている。クレジット払い、担保借入、信用取引などでは、時にブラックマンデーやリーマン・ショックのようなことが発生する。その確率分布はベキ分布になる。確率分布の形からこれをロングテール(長いしっぽ)と呼んでいる。

{過酷事故発生後の対応}  適正な是正措置。事故後の緩和作戦が重要である。時には超法規的な判断も必要であることの認識。巨大な火事では意図的に先回りの放火や破壊を行うこともある。江戸時代の火消しの仕事は破壊消防から始まっていた。

 

1) メタンハイドレートとは  2) メタンハイドレートの掘削は  3) 国家プロジェクトと高知の動き

4) エネルギー資源の分類  5) 日本は昔からの資源大国(黄金の国、ジパング)  6) ビッグデータとスマート・グリッド

7) 事故は必ず起きる(低確率巨大事故)  8) 右肩下がりの下山の先は  

 

18-0054 高知県香美市土佐山田町植718

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鈴木朝夫の講演・出版の記録・・・その8 新エネルギー資源の使い方 8)右肩下がりの下山の先は

2012-11-09 | 鈴木朝夫の講演・出版の記録

(日本電気計測器工業会主催 計測展2012 OSAKA、計測と制御で創る未来の地球、2012,10,31、於;グランキューブ大阪 講演)

新エネルギー資源の使い方
      メタンハイドレート、地熱発電、そしてストレージ

      鈴木 朝夫 (東京工業大学名誉教授・高知工科大学名誉教授、高知県メタンハイドレート開発研究会理事長)


もくじ)
はじめに) 資源大国日本  ----------1
1) メタンハイドレートとは        ----------1
2) メタンハイドレートの掘削は       ----------3
3) 国家プロジェクトと高知の動き        ----------4
   4) エネルギー資源の分類      ----------5
  5) 日本は昔からの資源大国(黄金の国、ジパング) ----------6
  6) ビッグデータとスマート・グリッド  ----------7
  7) 事故は必ず起きる(低確率巨大事故)      ----------8
  8) 右肩下がりの下山の先は         ----------9
おわりに) 生き甲斐とは、幸せとは  ----------10

 

8)右肩下がりの下山の先は


{「下山の思想」などの考え方}  石油ピークは既に過ぎており、使い勝手の良いエネルギー資源の観点からは、生産活動自体が下り坂になることは必然であり、経済指標は何れも前年度比マイナスの退却戦に入っている。これからは専門家と称する人への『お任せ』ではなく、各自が考え、意見を持つ『自立』の時が来たことを自覚しなければならない。下り行く先の未曾有の時代の姿を思い描き、どのように生きていくかを皆で考えるべきである。
1)「下山の思想」:五木寛之著(幻冬社新書、2011/12)、2)「『右肩下がりの時代』をどう生きるか」:鷲田精一著(「潮」、2012/1)、3)「石油文明が終わる~3・11後、日本はどう備える」:石井吉徳他著、(”NPOもったいない学会”、2011/11)。

[固定観念、既成概念、既得権の放棄}  今の高齢者達の世代は、最高峰を目指した同志であった。戦後の日本の経済成長を、高品質・高効率・大量生産で担う戦士達であり、希望に満ちて大量消費を競ってきた。下山に際しては、固定観念を、既成概念、その価値観を捨て去る必要がある。経済成長率プラスの期待は止めなければならない。新陳代謝はゆっくりとゆったりと。「持続可能な発展」や「ゼロエミッション」のスローガンは無意味であることを悟ろう。

{最高峰に立ったとき} 我々山仲間は「山を征服した」との表現を使ったことは一度もない。頂上では「ありがとう」と山々に感謝し、「お陰さま」と仲間と握手をした。帰りも安全に降ろして下さいのお願いが込められている。日本人が皆で最高峰に立ったとき、我々は「お陰さま」と感謝しただろうか。今からでも遅くない。振り返り、感謝を捧げようではないか。

{リーダーの資質}  山を下るときの鉄則はグループをまとめ、落伍者を出さないことである。力量や経験の異なる混成部隊である。適度な休息を取り、食糧を分け合い、体を温め合うことが必要である。寒さが募る中では、眠らないことが必須である。サブリーダーの「しんがり」としての気配りは極めて重要である。そして、天候、地形などの環境変化を細心の注意と直感によって判断できる能力を持つリーダーの責任は更に重要である。財政再建には経済成長を期待する政治家が、実業家が多い。人材の枯渇では?

{右肩下がりの道を下り行くその先は?} 「となりのトトロ」で宮崎駿の描いたサツキとメイの家のような暮らしか。それとも、もう少し昔の宮沢賢治が理想郷とした里山の「イーハトーブ」だろうか。もっと昔に戻り、武士も町民も風流を愛でた江戸時代の心の豊かさの中なのだろうか。何れにしても、凄まじい速さで大量のエネルギーを消費することは、エントロピー増大を加速するだけである。地球温暖化はその一つの現れである。皆で幸せとは何かを考えよう。

 
おわりに) 生き甲斐とは、幸せとは

成長戦略を基本に置くことはナンセンスであることは既に述べた。地域も、企業も、国家も、人類社会も。過疎化・少子化・高齢化社会に対して、少子化時代の若者・子供達を元気に。情報化時代を皆が楽しめる仕組みに。ふれ合う機会の創出。好奇心を失わず、感性を豊かにする教育に。人の、地域の、人類の、地球の役に立つ工夫と努力が稔る社会に。このようなことを皆で考えよう。専門家に任せるのは止めよう。
日本近海に高い可能性を持つメタンハイドレートは次の登山を計画するためのものではない。含み資産の地熱エネルギーの使い道も同じである。有用な海底資源も同じである。儲けたと思い込んで一気に使うべきものではない。軟着陸のために与えられた資源として感謝しながら、ゆっくりと使うべきである。切り札は無闇に使うものではない。
       計測展2012 OSAKA、計測と制御で創る未来の地球、2012,10,31、於;グランキューブ大阪


「計測と制御で創る未来の地球」計測展2012 OSAKA 
           日時:10月31日(水)~11月2日(金)
           場所:グランキューブ大阪(大阪国際会議場)10階
主催:((社)日本電気計測器工業会
〒530-005大阪市北区中之5-3-51、電話06-4803-5555

特別講演 (鈴木朝夫氏)
日時:10月31日(水)、13:30~15:00
場所:グランキューブ大阪(大阪国際会議場)10階、1009会議室
演題:
新エネルギー資源の使い方~メタンハイドレート、地熱発電、そしてストレージ
The best use of Japanese new energy resources
講演要旨:
 日本は今、海底資源・地下資源によりエネルギー・資源大国になろうとしている。それらは、慎重に、ゆっくりと、賢く使うべきものである。経済成長のためではない。右肩下がりの時代を生きる減速に必要なエネルギー源と考えるべきである。心豊かな生活のために。
 Thanks to submarine and underground resources, Japan is becoming rich in energy and natural resources. Those resources should be used cautiously, slowly and wisely; not for another growth but for realizing economic maturity.

講師 鈴木朝夫(すずき ともお)
高知県メタンハイドレート開発研究会、理事長
Promotion of Methanhydrate Utility & Synergy in Kochi、Chief Director
     (略称:PROMETHEUS in KOCHI---
 Pro(motion)of Met(han)H(ydrat)E U(tility)& S(ynergy)in KOCHI )
-----------
講師略歴:
氏名:     鈴木 朝夫(すずき ともお)
所属、役職: 東京工業大学名誉教授・高知工科大学名誉教授、
     高知県メタンハイドレート開発研究会理事長 
略歴: 1932/10/10生まれ(千葉県)
       1955  東京工業大学 金属工学科卒業
東京工業大学 精密工学研究所 助手、助教授、教授、(工学部評議員)
1993 北海道大学工学部 材料工学科 教授(学科長)
1996  (社)日本金属学会 会長 
1997  高知工科大学 物質環境システム工学科 教授、(副学長・工学研究科長)       2001  高知県産業振興センター 理事(プロジェクト・マネージャー)
        高知県公安委員会 委員、委員長
2006~   高知県宇宙利用推進研究会(てんくろうの会)会長
              NPO牧野の森(くるくる五台山)代表
              高知ファンクラブ代表
高知県メタンハイドレート開発研究会理事長 等
2011   瑞宝中綬章(教育研究功労)の叙勲

 

1) メタンハイドレートとは  2) メタンハイドレートの掘削は  3) 国家プロジェクトと高知の動き

4) エネルギー資源の分類  5) 日本は昔からの資源大国(黄金の国、ジパング)  6) ビッグデータとスマート・グリッド

7) 事故は必ず起きる(低確率巨大事故)  8) 右肩下がりの下山の先は  

 

718-0054 高知県香美市土佐山田町植718

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鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 ・・・働き詰めで貯めた1億円

2012-11-09 | 鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」

働き詰めで貯めた1億円

 情報プラットフォーム、No.301、10月号、2012、掲載


お会いする機会がなかったことは大変残念である。奨学金を設けたおばちゃんの話である。奨学金の名称は「公益信託森安記念大学院奨学生基金」。その森安キノヱさんは「一日一日を精いっぱい生きて」(1992、六甲出版) の題名で自伝を書いておられる。

易者に「肉親の縁はちっともありません。」と言われたように、母と姉を亡くし、父も亡くし、継母も、そしてご主人も早くに亡くしている。生まれは徳島だが、すぐに広島に移り、22才の時に酒屋を営む森安家に嫁いだ。夫の森安忠男さんは養子であり、両親をコレラ禍で亡くしていた。家業は振るわず、 神戸に出て叔父の家に間借。戦後に西宮で屋台の一杯飲み屋を始め、やがて近くのバラックの建物を買い、屋号を《ほろよい》とした。

  「お酒一杯に一皿の突出しを付けてね。お酒が二杯目になると突出しもまた違う品を付けて、三杯目はまたまた違う品という具合に工夫して、お客さんに喜んで もらって。」、「小さいときから鞄を下げて『有り難うございました。』といってお得意先回りするのが好きだった。自分がやっているからとか、人に雇われているからとは関係なくね。お客さんにも店の主人にも受けて、どこでも可愛がってもらえるんです。」、「私の人生のいろいろな節目と不動産 に関しては”角地”がついて回っているような気がしている。嫁いだ森安の家が広島の田中町、色町に入る角。神戸で最初に買った福原の店が新開地桜 筋の色町の角。

主人が亡くなった兵庫区の土地も角でしたし、荒田町のアパートも角でした。」  キノヱさんは、ご自分の住んでいた兵庫県と広島県の大学生を対象に『公益信託森安育英基金』(1億円づつ)を、ついで『中国残留孤児子弟育英森安基金』(1億円)を昭和61年以降に順次設立した。これについて「十年、二十年と経つ内にお墓は無縁仏となるだろう。森安の名前のついた育英基金設立に こだわった
一つがそれなんです。私が死んだ後は、そういう形でしか森安の名前を残せないと思ったからです。」とその思いを述べている。

キノヱさんは、大学院に進学しなければならないのに、奨学金が大学で打ち切りになることを知り、それは不条理と考えた。最後の1億円を投じて、平成3年に理工系大学院博士コースの3年間の『公益信託森安記念大学院奨学生基金』を設定したのである。運営委員長は、元・東京大学総長の林健太郎先生であ る。私は北大在籍として委員の末席を汚すことになった。一人あたり年額48万円の支給で、年間に4~5人、したがって年間事業費は600万円程度 になる。基金の運用益が見込めない時代であり、委員会での最初の審議は基金の使い方であった。キノヱさんの思いを後世に伝えられないことは残念で あるが、取り崩しはやむを得ないと判断したのである。単純計算で20年弱、100名の受給者になる。

  申請書には、公表論文や口頭発表のリスト、中心となる研究論文の要旨、今後の研究方針と計画、指導教員の推薦書に加えて、感想文を必須とした。神戸新聞 (平成4年2月5日付け)の「おばちゃんの奨学金、働き詰めでためた1億円、苦学生を助けたい、神戸の森安さん」の見出しが躍る記事を読んでの感 想であり、さらに最適なタイトルを考えるものである。人生観や哲学を垣間見ることが
できると考えたのである。そして森安おばちゃんから人生哲学を どのように学んだかを知ることができる。

この基金への応募者、そして受給者の、神戸新聞の記事を見た読者の、審査に関わった我々の記憶に残しておくこと、が森安さんの思いに報いることであろう。

この文章はそのような思い込めて書かせて頂いた。
 

ご感想、ご意見、耳寄りな情報をお聞かせ下さい。

鈴木朝夫 s-tomoo@diary.ocn.ne.jp 

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