「高知ファンクラブ」 の連載記事集1

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鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」・・・スラグの粘性、溶岩の粘性

2011-05-14 | 鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」

スラグの粘性、溶岩の粘性 

                                                                          情報プラットフォーム、No.284、5月号、2011、 

           (鈴木朝夫説明図作)


 高知龍馬空港で出迎えた中1の孫、大石樹(たつき)君は「高知の道路は白い。」と指摘する。それではとその足で、大豊から本山、吾北、池川方面に向かう国道439号線のアスファルト舗装の緑色を見に行った。白色の舗装は石灰石が、緑色の舗装は緑泥片岩が骨材になっているためである。さらにその後、稲生の石灰工場群や龍河洞を見せに廻った。樹君には、御荷鉾構造線とそれに沿った御荷鉾緑色岩類の地層が吉野川上流域の嶺北地域を含めて東西に断続的に延びていること、さらにその南には秩父累帯が横たわり、平行に何層もの石灰石を豊富に含む地層が断続的に走っていることを説明した。


秩父帯・北帯では、四国カルスト、鳥形山、白木谷と続いており、南帯の三宝山帯では、大平山(佐川町)、稲生、龍河洞と続いている。その中間に横たわる秩父帯・中帯は、黒瀬川構造帯と呼ばれる幅の狭い地層であり、蛇紋岩を多く含んでいる。蛇紋岩は、風化して脆くなり、崩れやすくなる性質を持っている。日高村本村、円行寺、一宮では蛇紋岩を採掘している。蛇紋岩も石灰岩も共に高知の特産品であり、製鉄には欠かせない素材である。


 溶鉱炉では、高温で鉄鉱石(鉄の酸化物)をコークス(炭素)で還元して、重い溶銑鉄と軽いスラグ(鉱滓)の二層に分離させる。上部の出滓口を開けてスラグを流し出し、次いで下部の出銑口から溶銑鉄を流し出す。スラグの粘性が高くて流動性が悪ければ、分離は順調に進まない。鉄鉱石に付随する脈石は二酸化ケイ素(SiO2)を多く含むため、スラグの粘性は高い。これにカルシウム(Ca)を含む石灰石やマグネシウム(Mg)を含む蛇紋岩を添加することで流動性が増してくるのである。なお、二酸化ケイ素が多い岩石・土壌は酸性と呼び、K、Ca、Mgなどが多くなれば塩基性と云う。


火山岩もスラグと同じである。玄武岩、安山岩、流紋岩の順に、二酸化ケイ素が多くなり、粘性が大きくなる。玄武岩質の溶岩はハワイの火山や富士山のように流動性の高いことを示す山容になり、流動性の乏しい流紋岩質の溶岩では昭和新山や雲仙普賢岳のような盛り上がったドーム状になる。地下の深いところで作られる深成岩では、斑糲岩、閃緑岩、花崗岩がそれぞれ対応する。そして、何れも塩基性から酸性への変化に対応している。


スラグの流動性が重要な溶鉱炉と対照的なのは「たたら製鉄」である。流れ出す程の流動性は要らない。過度に温度を上げないことが、良質の鋼を造り出す「たたら」の秘訣である。地元の刃物祭りに合わせて開いた高知工科大学の初めての学園祭で、地元の協力も得て実演をした。砂鉄は、学生達と四万十川河口から3kmほど北の金浜で採取した。重い砂鉄が軽い白砂の上に10cm厚に積もっている。四万十川河口から、海流に流されて金浜に集積したもの思われるが、流域に花崗岩が露出している場所を確認できていない。なお、花崗岩は地表で風化して砂利・砂になり易く、その中に砂鉄(磁鉄鉱)が含まれている。


御荷鉾緑色岩類の帯に沿った国道439号線を緑色のアスファルト舗装にし、「与作緑道」と名付けたい。国道33号線沿いの日高村、佐川町、越知町、仁淀川町と蛇行する仁淀川流域、旧檮原町から旧城川町までは、地層の変化を楽しめる天然の科学館・博物館である。


牧野富太郎を育んだ塩基性土壌での特徴的な生態系は植物園でもある。空海が水脈や鉱脈を見定めて歩いた四国全部をジオパークに、そして曼荼羅の世界を説いた証の「へんろ路」が巡る四国全体を世界文化遺産として重ねたい。孫に刺激されての調査レポートである。 


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鈴木朝夫(すずき ともお)
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