【遺伝子組み換え作物論 ⅩⅢ】
"ハイテク"と言う言葉がもつ「両義性」と「不可逆性」――世界的な政治経済の幻想的基軸の現在的
課題を遺伝子組み換え作物――に焦点を当て考察を深める。さて今夜は・・・
弟5章 遺伝子組み換え作物の危険性
予期せぬ毒物
その他にも、マイケル・アントニウス博士は、次のような危険性を指摘する。
「遺伝子操作によって製造された細菌や酵母、植物、動物にも、予期せぬ毒物が生じることがわ
かっている。ところが問題は、それが成長するまで危険性がわからないという点にある。とくに遺
伝子組み換え作物の場合には、直ちに健康に対する影響があると判明する場合もあれば、毒性が表
面化するまで何年もかかる可能性もあるのだ」
Cry1Ab and Cry1F Bt Plant-Incorporated Protectants
September 2010 Biopesticides Registration Action Document
Bt毒素
害虫に殺虫性をもつ「Bt作物」とは、すでに述べたように土壌菌の一種「バチルス・チューリ
ングンシス菌(Bt菌)」の遺伝子を導入した作物である。言い換えれば、「Bt毒素」という殺
虫剤を埋めこんだ作物であり、「Bt作物」を食べることは、殺虫剤を一緒に食べることになる。
「憂慮する科学者同盟」のマイケル・ハンセン博士はその危険性を指摘する。
「遺伝子組み換えトウモロコシ、綿、ジャガイモなどに含まれるBt毒素が、人間の免疫系に悪
影響をもたらし、アレルゲンにもなりうるという証拠がますます増えている」
しかも、Bt毒素は炭疸菌の近縁種なのである。
「米国環境保護庁(EPA)」は、「Bt毒素は胃の中で分解される」と断言するが、この見解は
あくまでもバイテク企業が提出した資料に依拠したものだ。モンサント社の実験によれば、「Bt
トウモロコシの毒性タンパク質(Cry1Ab)は、胃液によってすぐに分解される」という。ところが
彼らは、わずかばかりのこのタンパク質(9ユか)を分解するために、胃液よりも酸度が高い大量
の酵素を使用していたのである。当然、「この実験は現実的でない。できるだけ早くタンパク質を
分解するために、意図的に行なわれたものだ」と批判された。『偽りの種子』(野村有美子、丸田
素子訳家の光協会、2004年)の著者、ジェフリー・M・スミスも次のように批判する。
「環境保護庁も食品医薬品局も、こうした安全性試験を実施するための基準をつくらない。基準
がないために、バイテク企業が行なう安全性試験の手順や結論がどのようなものであろうとも、す
べてを受け入れてきたのである」
⑥ 発がん性のリスク
遺伝コードの複雑さを考えると、たとえ細菌のような単純な構造の生物であっても、遺伝子を組
み換えて生産した食品が、人間の健康に対して長期的かつ総合的にどのような影響をもたらすのか、
予測することはできない。遺伝子組み換え食品がもたらす発がん性のリスクには多くの科学者が不
安をもっており、サミュエル・エプスタイン教授も次のように指摘する。
「遺伝子組み換え食品によって、ある種のがんによる死亡率が著しく増加することは確実だろう。
しかもその程度で悪形響かおさまれば、幸運と言えるかもしれない」
1999年にはプシュタイ博士とイーウェン博士が、雄のラットに10日間、遺伝子組み換えジ
ャガイモを給餌する試験を行なった。これは、遺伝子組み換え作物が生物の内臓に与える影響に
ついて調べた数少ない研究の一つである。その結果について、組織病理学者で膠原病の専門家であ
るイーウェン博士は次のように語る。
「(試験結果によれば)胃、小腸、大腸、直腸の内部に影響して、細胞が異常増殖しており、それ
が大腸ポリープを発生させる可能性があった。この遺伝物質に接触し続ければ、影響を受けやすい
人々にはがんが急増するかもしれない」
ちなみにイーウェン博士によれば、大腸がんの遺伝的素質をもつ国(たとえば、北東部スコット
ランド、北米、ニュージ土フンドなど)の人々のポリープの発生率は70倍にもなるという。実験
で、普通のジャガイモを給餌したラットには、こうした影響は確認されてない。
イーウェン博士の結論としては、「遺伝子を発現させるプロモーター遺伝子(CaMVカリフラ
ワーモザイクウイルス)が、原因物質である」という見解だが、それに反対する科学者もいる。い
ずれにせよ、彼らの発見は憂慮すべき事態であり、原因究明のために、さらなる調査が必要である
ことだけは確かだ。イーウェン博士は批判する。
「疑問が残されたまま、なぜ遺伝子組み換え食品を食べ続けなければならないのか。遺伝子組み
換えジャガイモの中で、ウイルスの遺伝子断片が機能している可能性があるにも関わらず、動物実
験さえ十分には行なわれていないのだ」
「遺伝子組み換え食品」と表示せず、摂取した人々の追跡調査も行なわないと、もともと発がん
率の高い米国などの国々では、遺伝子組み換え食品によって発がん率が上昇しても、原因は不明の
ままとなる。つまり誰も「遺伝子組み換え食品が原因である」とは断定できないのであり、バイテ
ク産業のロビー団体が、遺伝子組み換え食品の表示に強く反対する理由はそこにあるのだ。
⑦ 影響を受けやすい乳児と子ども
遺伝子組み換え食品は、子どもたちの健康にも影響を与える可能性がある。乳幼児毒性病理学の
専門家ビビアン・ハワード博士(リバプール大学病院、乳幼児毒性病理学部長)は指摘する。
「生物間で遺伝子が転移すれば、未知の毒性やアレルゲンを生みだす危険性があり、その影響を
もっとも受けやすいのが子どもたちである」
英国の元環境大臣マイケル・ミーチャーも、英国王立協会の報告書をもとに、「遺伝子組み換え
原料を含んだベビー・フードを食べた乳児にアレルギー反応が急増したり、遺伝子組み換え大豆に
由来する女性ホルモン作用が、子どもたちの性的発育に影響を与える可能性がある」と指摘する。
⑧ 未知の毒素
英国の開業医の80%が加盟する保守的な「英国医師会」も、「遺伝子組み換え食品は、一般の
食品より危険性が高い」と指摘する。同医師会は2002年に、「遺伝子組み換え食品が人間の健
康に与える潜在的な影響に対しては、確実で完全な調査がいまだに行なわれてない」と批判してい
る。公衆衛生という視点から、十分な安全性試験が実施されていないと批判したのである。
毒物学の専門家E・J・マシューズ博上来国・食品医薬品局)も警告する。
「遺伝子組み換え作物は、未知の植物性毒素を高濃度に含んでいる可能性がある。その中には一
般の類似種にはありえない、特殊な毒素が生まれている危険性もある」
リチャード・レーシー教授(英国・リーズ大学・食品安全学部、微生物学者)とブライアン・グ
ッドウイン(英国・シューマプハ・カレッジ生物学部)たち二I名の学者も、「遺伝子操作によっ
て、従来の食品の成分が変化したり、毒素を楽生する可能性がある」という見解を発表している。
リーズ、アンディ 著 『遺伝子組み換え食品の真実』
この項つづく
●ホンダが世界を滑空する時代
【マテリアルインフォマティクス最前線 Ⅰ】
「バイオインフォマティクス」という言葉があるように、「マテリアルインフォマティクス」という
言葉は、より良い材料の使用、選択、開発、および発見を理解するために、材料科学と工学への情報学
の原則を適用する研究分野で、高速かつ堅牢な買収、管理、分析、および多様な材料データの普及を達
成することを目標とした新興分野。このフィールドは、材料や情報との関係のいくつかの伝統的な理解
に限定されるものではなく、コンビナトリアルケミストリー、プロセスモデリング、材料特性データベ
ース、材料データ管理と製品ライフサイクル管理を包括したフィールドで、マテリアルインフォマティ
クスは、これらを超越し、教訓を適用することで、より大きな洞察力と深い理解を達成するための潜在
的な他者への材料の1種類に集められ学習することで、最適なメタデータ収集と各個別のデータポイン
トの値を大幅に拡大するを意味する。
京都大学の田中功教授と田中勝久教授らの研究グループは、リチウム電池の寿命を6倍以上に延ばす新材料
を開発した。物質の原子構造をコンピューターで網羅的に計算することで新材料を探索する研究手法を確立し、
実証した。電池以外の材料開発も百倍以上に効率化でき、リン酸化鉄系リチウム電池の寿命を充放電サイ
クル2万5000回以上に延ばした。1日1回充電した場合、70年以上使える計算になり、設置型の
大容量蓄電池の材料として応用できるという。計算科学と合成実験を組み合わせた高速材料探索手法を
確立した。物質の電子状態を計算する第一原理計算を使って、2000種類以上の元素の組み合わせや
組成比を網羅計算した。実際に材料を合成して性能を確かめる手間が省ける。少なくとも研究を百倍効
率化できると発表した(2014.07.30)。
ところで、オバマ大統領が 2011年6月に打ち出した材料ゲノム・イニシアチブ (MGI)は、米国の製
造業衰退を食い止め、逆に大きく発展させようと意気盛んなものでなもとして導入。材料開発にあたり、
データ科学 を活用することで、材料の発見から製品化までスピード従来比を2倍にするという目標の
もと、約百億円の予算をつぎ込んだプロジェクトが2012年から始まっている。その中で注目されている
技術のひとつが、高精度な量子力学計算であり、膨大な計算結果として得られたデータを活用したハイ
スルーブット・スクリーニングにより、的確に物質設計を行うというもの。これにより従来からの試行
錯誤的な材料探索のプロセスを大幅に短縮することが可能になると期待されている。日本では、材料立
国を標榜し、材料研究で世界のトップランナーを自負、このデータ活用型の材料開発の新しい流れに対
しても、スパコン「京」を中核とした産官学での研究者グループや,元素戦略などの国家プロジェクト
で対応し,実験と計算を包括したマテリアルズ・インフオマテイクスという分野が勃興しつつある。こ
の研究の成果は、その分野の先駆けとなる成果と位置付けられる。
さて、対象のリチウムイオン二次電池の正極材料は、リチウムイオン二次電池が、携帯電話をはじめと
するポータブル機器の電源として広く利用され、電気自動車や再生可能エネルギーの蓄電など大型機器
への応用研究も精力的に進められている。携帯電話の電池が数年程度のサイクル寿命で設計されている
のに対し、大型機器では、毎日の充放電で少なくとも数10年というサイクル寿命が求められている。こ
の要求に応えるには新しい技術要素の開拓が必要であり,各国で研究開発にしのぎが削られている中、
この成果は画期的なもと考えられている。
それはそれとし、物質設計結果の実証には、合成や評価の実験を並行して行うことが不可欠。とくに従
来報告のない新物質,新組成の合成には、様々な物質に汎用的応用手法がキーとなる。この様にリチウム
イオン電池の正極材料のような無機物質では、原料粉末を混合して合成する固相法が主流だが、汎用性
の観点から、気相や液相の利用が有効だとされる。そこで、環状エーテルを使ったゾルーゲル法であり、
金属塩化物のようなありふれた塩を溶解した水溶液に環状エーテルを添加により、溶液のpHをゆっく
りと上昇させ、金属塩の反応を制御することが可能となる。溶液のpHが増加すると多くの金属塩は水
酸化物を形成するが、反応速度は金属塩の種類に応じて大きく異なる。この手法では、pHを徐々に上
昇することで多種類の金属塩の反応速度を制御し、原子レベルで元素を均一に混合できるという特長を
もつ。今後、様々な系での物質設計結果の実証に応用できると期待されている。
●研究手法・成果
1.第一原理計算
「第一原理計算」とは、実験であらかじめ得られた構造などの知見に頼ることなく、量子力学の原理の
みに基づいて原子構造や特性を予測することが吋能な手法。計算コストが高いため10年ほど前までは材
料探索への利用は限定的でしたが、近年の計算機の進歩により、多数の計算を身近な計算機で実施する
ことが可能になる。米国のMGIでも中核となる技術となっている。この研究では、リチウムイオン電池
の正極材料として広く用いられているリチウム鉄リン酸塩(LiFeP04)のサイクル寿命特性を改善する目
的で、この物質に固溶させる元素を、数千種類という多数の組み合わせを考えて網羅的に高精度の第一
原理計算を実施((結果の一部を図1に示します)。このデータを活用し、充放電による結晶の体積変
化がサイクル寿命の決定因子になるというアイデアに基づいてハイスルーブット・スクリーニングする
ことで最適な化学組成を効率的に探索する。
2.試料合成
上記の理論予測の結果を実証するために合成実験を行う。X線回折測定の結果(上図参照)、不純物のな
い材料が、設計どおりの構造で得られることを確認。また充放電による結晶の体積変化率を測定した結
果(下図)。理論計算と実験とが良い一致を示すことも確認された。
これまでに実験報告のない新物質,新組成の合成のためには,様々な物質に汎用的に応用できる手法
を使うことが重要となります.リチウムイオン電池の正極材料のような無機物質では,原料粉末を混合
して合成する固相法が上流ですが,汎用性の観点からは,気相法や液相法を利用することが有効です.
本研究で利用したのは,環状エーテルを使ったゾルーゲル法です.環状エーテルの一種であるプロピレ
ンオキシドを用い,ゾル(溶液)のpHを調整してゲル化(固体化)することで,各元素が原子レベルで
均一に分散された状態の前駆体を得て、それを熱処理するだけで所望の材料を合成することに成功する。
この手法は汎用性が高く、今後、様々な系での物質合成に応用できると期待されている。
3.電池のサイクル特性
このようにして得られた新材料を正極とし、負極と電解質は通常材料を用いアルミ・ラミネート中に封
入することでリチウムイオン電池を作成、電池のサイクル特性を評。比較に固溶元素を無添加のリチウ
ム鉄リン酸塩を正極とした電池も作成し、同じ条件にて充放電サイクル特性を評価(下図参照)。今回
開発した新材料を正極として使用した電池(CellA)は、無添加正極の電池(CellB)に比べ,サイクル寿命
が約6倍になることがわかりました.容量が70%に減少する充放電サイクル回数は約25000回と予測で
きる。これは毎日1回の充放電で,約70年間繰り返し使用できることに相当するという。
《浄められた夜》(Verklärte Nacht)作品4は、1899年にシェーンベルクがウィーンで作曲した弦楽六
重奏曲。シェーンベルクの初期作品の中で《グレの歌》と並んで最も有名かつ最も重要な作品の一つ。
シェーンベルクは、こんにちでは20世紀前半の無調音楽や十二音技法の開拓者で現代音楽の礎とな
る。享年77、1951年7月13日没。故郷ウィーン中央墓地の墓石は直方体を斜めに傾けた形状だとか。