極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

ウクライナの燎原の火がフクシマに。

2015年10月13日 | 緊急|東日本大震災

 

 

   長編小説を書き終えた作家はほとんどの場合、頭に血が上り脳味噌か過熱して.
      正気を失っています。なぜかといえば、正気の人間には長編小説なんてものは、
      まず書けっこないからです。

                          村上春樹 『職業としての小説家』
                                   

 

 

 

     

【緊急|東日本大震災】

● ウクライナの燎原の火がフクシマに!?

旧ソ連のウクライナのチェルノブイリ原発周辺で、事故発生から29年が過ぎた今年、新たな放射能
汚染の脅
威が浮上している。原発周辺の森林や野原で大規模火災が相次ぎ、一部で大気中に基準値を
超える放射性物質が検出されたためだ。周辺地域の除染が徹底されておらず、土壌や草木に残る放射
性物質が火災の際の強風にあおられ、大気中に拡散したものとみられる(「チェルノブイリで第2の
放射能汚染の危険 森林火災で大気中に拡散し」産経新聞 2015.10.12)。

コハクチウの観察を終え、やっといつもの作業に取りかかり、ネット検索をするとこの記事が飛び込
んでくる。それによると、ロシアの専門家は独自の調査データから「危険性はそれほど高くない」と
公式?見解を主張したというが、これに対し、環境保護団体は、ガンの発生率があがる恐れがある―
―ウクライナ政府に対して徹底した情報公開と対策を要請と、住民の間には事故発生時に真実が発表
されなかった国に対する不信感が今も根強く残り、今後の生活に大きな不安を呼び起した――と、こ
れまたよくある構図を描写。

ところで、大規模火災はこの規制区域内で発生。最初の発生は4月末。炎は風にあおられて燃え広が
り、数メートルの高さの樹木の最上部まで燃え、ウクライナ国家緊急事態省は数百人の消防隊員を現
場に派遣する特別態勢を組み消火活動にあたっている(下図クリック)
。当日は 空中から放水す
るヘリコプターも2機投入されるが、強風の天候が続いて消火作業は困難を極め、火は一時、原発ま
で約10キロのところまで迫る。結局、完全鎮火には約1週間かかり、焼失面積が東京ドーム85個
分の約400ヘクタールを消失。燃え広がる森林の映像や懸命な消火活動の様子はロシアや欧州各国
で報じられていると不安視する住民の声が伝えられている。
 

今年7月の火災で、周囲に設置されたモニタリングポスト1カ所でセシウム137が基準値の10倍
に増大――原発事故で放出された放射性物質――する。地元メディアは、ウクライナ当局は「健康被
害はない」ことを繰り返し強調、関連する他の詳細な情報は伝えられず――ウクライナの環境団体の
は、地元メディアに立ち入り禁止区域で起きた火災は極めて危険で、こうした乾燥した気候が続けば、
火はいつでも燃え広がる可能性がある。放射性物質を含んだ灰はその後、風に運ばれて広範囲に広が
り土壌や河川に降り積もり、これは環境汚染と健康被害に対する大きな脅威――と警鐘を鳴らしてい
る。
ことはそれだけですまず、欧州各国は、経済危機に陥っているウクライナ政府対策が不十分で、
放射能危機
問題に従事する欧州委員会の幹部もロシアのメディアに対し、最悪のシナリオは、この地
域でガンの発生率があがると指摘するも、
この立ち入り禁止区域に、ウクライナとは別の独自のモニ
タリングポストを設けているロシアは「危険性は最小限に過ぎない」と主張。
 

ところが、クライナ政府は沈静化に躍起となり、チェルノブイリ原発や、周囲のモニタリングポスト
の調査から"第2次の放射能汚染"の危険性はないとこれまたよくある広報を繰り返しているが、この
森林火災で大気中に拡散し、その後も大規模火災は相次いだ。6月下旬から7月上旬にかけては13
0ヘクタールが延焼、乾燥した天候が続いた8月、9月にも枯れ草や落ち葉から出火し、再び数十ヘ
クタールが燃え、ウクライナ非常事態省は8月、火災は放火の可能性があると発表。ここで、チェル
ノブイリ周辺で火災が広がる理由として、(1)規制区域の一部で自然発火する恐れのある泥炭地帯
であること、(2)さらに原発事故後の30年間――福島第一原発事故後のよに――適正な管理が加
えられず周辺一帯に落ち葉や枯れ木などが積み重なったっことも火災誘発の原因挙げられている。チ
ェルノブイリ周辺では十分な徐染作業や処理が行われず、大量の放射性物質が草木に付着してたとみ
られているが、これに対し、原発専門家はチェルノブイリ原発周辺では10年にも大規模火災があり
健康を害するレベルの放射性物質のデータが検出されなかった指摘。その上で、原発事故時の汚染さ
れた土壌は地中深くまで浸透しており、大きな影響を及ぼすメカニズムにはない。今回の火災でも異
常は検出されていないと語っている。

しかし、ウクライナ政府はソ連時代の措置を引き継ぎ、原発周辺の30キロ圏内を立ち入り禁止区域
に指定し、この措置に反して、数百人の住民らが故郷の規制区域内に入り、生活しているといわれ、
さらに、発生から29年後の今も、4号機を封じ込める巨大なシェルターの建設工事が行われ、約7
千人が立ち入り禁止区域で作業に従事している。




この記事を読んで、鬼怒川決壊を引き起こしたゲリラ豪雨罹災のフクシマでも洪水により除染廃棄物
回収袋が流された事故が思い出され(『個性的な線状降水帯』2015.09.12)、仮に渇水や干魃に見舞
われたなら、この廃棄物も場合によればマッチを擦るより簡単に発火・類焼に及ぶのではという不安
が過ぎる。ことは、大規模気象変動な「環境リスク本位制時代」である。用心に越したことはないし、『
沈黙の2016年』(2015.09.24)である、悪いことは言わない、ここは、"突っ張り"は不要。




● 世界平均気温の上昇が著しい

それならば、今後も気象変動は大きくなるのだろうか、なるとして、どのようなペースで上昇してい
くのだろうか?  これに対し、気象庁は今年8月度の平気気温の上昇傾向分析し、世界平均気温が再
び顕著な上昇傾向に突入しているのではとの見解を公表。これに足し対し、去年から今年にかけて世
界平均気温が高いことの直接的な原因は、エルニーニョ現象であるといってよいだろう。
エルニーニ
ョ現象は、熱帯太平洋の東部から中部までの水温が上昇する現象で、その逆に熱帯太平洋西部の水温
が上昇するラニーニャ現象との間を数年おきに不規則に行ったり来たりする。地球全体において占め
る面積の大きい東部~中部熱帯太平洋の水温が上昇すると、世界平均気温でみても高温になる傾向が
あると指摘する「地球温暖化リターンズ 世界平均気温が再び顕著な上昇傾向に突入か」(江守正多
2015.10.12)。



具体的にみてみよう。今年はたまたまエルニーニョが起こって世界平均気温が高くなったということ
自体は、いってみれば自然現象であるが、それに伴い世界平均気温の大幅な最高記録更新が起こって
ることの背景に、じわじわとした気温の長期的な上昇傾向が進行していたことを認め、人間活動に
伴う温室効
果ガスの増加により平均気温のベースが上がってきていたところにエルニーニョが重なっ
て起きたことにより
記録的な気温上昇――15年も1月、3月、5月、6月、7月、8月と、ほぼ毎
月という勢いで最高記録更新が続く。
特に今年5月に入り、平年値(81~10年の平均)からの偏
差が5月:+0.38℃、6月:+0.41℃、7月:+0.38℃、8月:+0.46℃と大きく、それまでの記録
がせいぜい+0.3℃強であったことと比べると、ぶっちぎりの記録更新
―が生じているが。が、ちな
みに、この間に日本の平均気温が最高記録を更新したのは15年5月の1回のみ。日本で体感できる
気温のみで考えては、地球全体の傾向を見誤る。


そこで、平洋十年規模振動(Pacific Decadal Oscillation: PDO)とよばれる現象がキーワードとなる。
気候の自然変動パターンはエルニーニョ・ラニーニャのほかに、近年の気温上昇の鈍化との関係で気
候科学者が研究している。
PDOは北太平洋域に変動の中心を持つが、それに伴う熱帯太平洋の変動パ
ターンは、
エルニーニョ・ラニーニャによく似る。そこで、この周期は10年~数十年である。する
と、熱帯太平洋では「エルニーニョっぽい」状態と「ラニーニャっぽい」状態が10年~数十年で入
れ替わる現象――温室効果ガスの増加によって赤外線が地球から宇宙に逃げにくくなり、地球がシス
テム全体として持つエネルギーは増え続け、その増加分が海洋深層に運ばれ、地表付近の気温上昇と
して現れず、このパターンが逆転すると、海洋深層に貯め込まれていた熱が逆に地表付近に運び出さ
れ、
急激な気温上昇が生じる可能性――があり、去年あたりからそのような期間に突入したのかもし
れないと教えてくれる
。これは要細心だ。

● サーモグラフィーカメラ付リモート電子レンジ工学

弁当のおかずなどを部分的に温められる電子レンジが開発された(上図)。サラダや漬物などはそのままで、
ご飯やおかずを温められ、狙った部分にマイクロ波を当てる技術だというから当然、興味が惹く。これを開発し
た、上智大学の堀越智准教授は、半導体発振器を利用した、マイクロ波発生器を使う。

対象物のマイクロ波の吸収率にもよるが、最小で直径3~5センチメートルの範囲を温め、上下のア
ンテナの出力を制御して、上部や下部だけを温めることも可能だ。丼のご飯のみを温めるといった
使い方ができる。堀越准教授は、技術を改良して、将来的には温められる範囲を1センチメートル程
度くらいにしたいと語り、温めたい部分を指定して温め、サーモグラフィーで目的の温度になってい
るかどうか、状況を確認しながら使えるようなシステムを構築―――
複数の発生器でマイクロ波の
形調整
する位相制御で、温める位置を変える――家電メーカーなどとの連携を視野に、20年までの
製品化を目指し、コンビニエンスストアにある電子レンジと同程度の価格で作れるとのこと。ハード
ルも高そうだが、廉価であれば世界展開できる事業になりそうで、これは面白い。



【参考特許】

熱硬化性プラスチック材料を成型用のモールドを、加熱硬化させる手法に熱硬化化性プラスチック材
料にマイクロ波を照射し、マイクロ波のエネルギーによって分子内部に極性のある熱硬化性プラスチ
ック材料の微小振動を励起して発熱させ硬化を促進する、マイクロ波の誘電加熱を利用した装置が知
られている。マイクロ波の誘電加熱利用装置は、ヒーターによりモールドを介して熱硬化性プラスチ
ック材料を伝導加熱するものに比べ、熱硬化性プラスチック材料全体を均一に加熱することができ、
対流の発生を防止することができ、加熱時間を短縮できる。そこで、
マイクロ波(周波数0.3GHz
(ギガヘルツ)~300GHz程度)の熱硬化性プラスチック材料の誘電加熱装置が多く提案されて
きたが、高周波(周波数3MHz(メガヘルツ)~0.3GHz程度)を用いた熱硬化性プラスチッ
ク材料の誘電加熱装置は提案されておらず、これに類するものとして、ゴム製の成形型を用いた熱可
塑性樹脂の成形装置であるが少ない。

  

● 折々の読書 『職業としての小説家』19

 
  ひとつ面白い話があります。一九八〇年代の末頃、僕が『ダンス・ダンス・ダンス』という長
 編小説を潟いていたときのことです。僕はこの小説を初めてワード・プロセッサー(富士通のポ
 ータブル)で書きました。ほとんどはローマのアパートメントで書いたのですか、最後の部分は
 ロンドンに移って書きました。書きhげた原稿をフロッピー・ディスクに入れて、それを持って
 ロンドンに移動したのですが、ロンドンに落ち着いて開けてみると、章が丸ごとひとつ消えてし
 まっていました。一時はまだワープロを使い慣れていなかったので、操作を間違えてしまったの
 でしょう。まあ、よくあることです。もちろんがっくりしてしまいました。かなりのショックで
 した。長い谷だったし、「ここは我なからうまく書けた」と自負していたからです。「まあ、よ
 く
あることだから」と簡単にあきらめることはできません。

    

  でもいつまでもため息をついて首を横に振っているわけにもいかない。気を取り直し、数週間

 前に苦心惨憺して書き上げた文章を、「ええと、こうだったっけなあ……」と思い出しながら再
 現していきました。そしてその本をなんとか復活させることができました。ところが、その小説
 が本になって刊行されたあとで、行方不明になっていたオリジナルの章がひょっこり出てきたの
 です。ぜんぜん予想もつかないフオルダーに紛れ込んでいた。それもまたよくあることですね。
 それで「ええ、参ったな。こっちの方が出来が良かったらどうしよう」と心配しながら読み返し
 てみたのですが、結論から言いますと、あとがら書き直したヴァージョンの方が明らかに優れて
 いました。
 
  ここで僕か言いたいのは、どんな文章だって必ず改良の余地はあるということです。本人が
 どんなに「よくできた」「完璧だ」と思っても、もっとよくなる可能性はそこにあるのです。だ
 から僕は書き直しの段階においては、プライドや自負心みたいなものはできるだけ捨て去り、頭
 の火照りを適度に冷やすように心がけます。ただ火照りを冷やしすぎると、書き直しそのものが
 できなくなるので、そのへんはある程度注意しなくてはなりませんか。そして外からの批判に耐
 えられる体勢を作っていきます。何か、面白くないことを言われても、できるだけ我慢してぐっ
 と.呑み込むようにする。作品が出版されてからの批評はマイペースで適当に受け流せばいい。
 そんなものいちいち気にしていたら身かもちません(ほんとに)。でも作品を書いているあいだ
 にまわりから受ける批評・助言は、できるだけ虚心に謙虚に拾い上げていかなくてはならない。
 それか僕の詐からの持論です。



  僕は小説家として長く仕事をしてきましたが、正直に言って担当編集者の中には、「ちょっと
 合わないかな」と感じる人もいました。人間としては悪くない人だし、ほかの作家にとっては良
 き編集者なのかもしれないけど、僕の作品の編集者としては相性があまり良くないんじゃないか、
 ということです、そういう人の口にする意見は、僕としてはいささか首を傾げたくなることが多
 いし、時として(正直に言って)神経に障ります。いらっとすることもあります。でもお互い仕
 事ですから、そこはうまくやりくりしてやっていくしかありません。

  ある長編小説を書いていたときのことですが、僕は原稿の段階で、あまり「合わない」編集者
 から指摘があった箇所をすべて汽き直しました。ただし大半は、その人の助肯とは真逆の方向に
 書
き直しました。たとえば「ここは長くした方がいい」と言われた部分は短くし、「ここは短く
 した方がいい」と.言われた部分は長くしたわけです。今から思えばかなり乱暴な話なんですか、
 それでもその書きき直しは結果的にうまくいきました。作品はそれでより優れたものになったと
 思います,つまり逆説的にではあるけれど、その編集者は僕にとって有用な編集者であったわけ
 です。少なくとも「おいしいこと」しか口にしない編集者よりはずっと助けになった。僕はその
 ように考えています。

  つまり人事なのは、書き直すという行為そのものなのです。作家か「ここをもっとうまく書き
 直してやろう」と決意して机の前に腰を据え、文章に手を入れる、そういう姿勢そのものが何よ
 り重要な意味を持ちます。それに比べれば「どのように書き直すか」という方向性なんて、むし
 ろ二次的なものかもしれません。多くの場合、作家の本能や直感は、論理件の中からではなく、
 決意の中からより有効に引き出されます。藪を棒で叩いて、中に潜んでいる鳥を飛び羽ばたかせ
 るようなものです。どんな棒で叩こうか、どんな叩き方をしようが、結果にたいした違いはあり
 ません。とにかく鳥を飛び立たせれば、それでいいのです。鳥たちの動きのダイナミズムが、固
 定に向かおうとする視野に揺さぶりをかけます。それが僕の意見です。まあ、かなり乱暴な意見
 かもしれませんが。

  とにかく書き直しにはできるだけ時間をかけます。まわりの人々のアドバイスに耳を傾け(腹
 が立っても立たなくても)、それを念頭に置いて、参考にして書き直していきます。助言は人事
 です。長編小説を書き終えた作家はほとんどの場合、頭に血が上り脳味噌か過熱して.正気を失
 っています。なぜかといえば、正気の人間には長編小説なんてものは、まず書けっこないからで 
 す。ですから正気を失うこと自体にはとくに問題はありませんか、それでも「自分かある程度正
 気を失っている」ということだけは自覚しておかなくてはなりません。そして.正気を失ってい
 る人間にとって、正気の人間の意見はおおむね大事なものです。

  もちろん他人の意見をすべて鵜呑みにしてはいけない。中には見当外れの意見、不当な意見も
 あるかもしれません。しかしどのような意見であれ、それか正気なものであれば、そこには何か
 しらの意味が含まれているはずです。それらの意見は、あなたの頭を少しずつ冷却し、適切な温 
 度へと導いてくれるでしょう。彼らの意見とはすなわち世間であり、あなたの本を読むのは結局
 のところ世間なのですから。あなたか世間を無視しようとすれば、おそらく世間も同じようにあ
 なたを無視するでしょう。もちろん「それでかまわない」ということであれぼ、僕としても全然
 かまいません。しかしもしあなたが、人間とある程度まともな関係を維持したいと考えている作
 家であるなら(おそらく大部分はそうでしょう)、あなたの作品を読んでくれる「定点」をひと
 つなり、ふたつなり周囲に確保しておくのは大事なことです。その定点が正直に率直に感想を述
 べてくれる人でなくてはならないのは当然のことです。たとえ批判を受けるたびに頭に来るとし
 ても。  

                  「第六回 時間を味方につける――長編小説を書くこと」
                            村上春樹 『職業としての小説家』

                                     この項つづく  
 

 

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