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オバマ、温暖化ガス削減目標公表 A Game-Changer

2009-11-26 | 環境・エネルギー・食糧
2009年11月26日(木)

オバマ大統領は、12月にコペンハーゲンで開催される温暖化ガス削減のための交渉に自ら参加することを発表し、同時に削減目標を、2005年度比で、2020年に17%, 2050年に83%とすると明らかにした。これをケリー民主党議員は、「国内的にも国際的にも画期的なもの」(a game changer)と賞賛した。

この目標値はすでにオバマ大統領が温暖化ガス削減の目標値として、今年6月に下院にはかり承認されているものと軌を一にするものであるが、その法案の上院での審議は棚上げにされたままになっている。

COP15と称される地球温暖化ガス削減条約に関するコペンハーゲンにおける国連の会議は約2週間の日程で開催される。オバマ大統領は、会議の冒頭の12月9日に出席し、そのあとノーベル平和賞の授賞式に出席のためにオスロに向かう予定である。

このことに関して、会議主催者側では、オバマ大統領の出席を歓迎しつつもそのタイミングについて失望の色を隠していない。なぜならこの会議は紛糾することが通例であり、最終日に近い時点で合意形成が行われるので、そのタイミングでオバマ大統領に来てほしかったというのである。

The New York Timesは、米国が新たな削減条約に調印し、批准できる条件として、先にあげた上院の説得、そして「二酸化炭素排出大国」中国やインドを含む発展途上国の明確な数値目標の受け入れをあげている。

中国は先手を打って昨日公式に「現在行っている排出削減努力で十分でそれ以上のことはコミットする必要がない」との趣旨の発表を行った。一方、国賓として今週ホワイトハウスに招かれたインドのシン首相に対して、オバマ大統領は、対インド外交配慮から温暖化ガス問題で強い態度で臨まなかった。

さらに、上院共和党は、「数値目標の受け入れは米国経済を弱体化させるもの」として絶対阻止の構えである。温暖化ガス削減条約反対の急先鋒であるJames Inhofe議員は、すでに強烈な反対の火蓋を切った。

「オバマ大統領の今回の数値発表は、国際条約には結びつかないし、それにまだ実質的に始まってもいない上院審議を通過できると考えるのは早とちりもはなはだしい(foolishly prejudged the outcome)」 と発言し、「この法案は“野垂れ死にさせる”( dying on the vine)」とまで言い切っていると、The New York Timesが伝えている。

京都議定書からの離脱によって、温暖化問題での世界におけるリーダーシップを失った米国のブッシュ政権下における8年間の空白を取り戻そうとするオバマ大統領には、このように内外からの大きな壁が立ちふさがっている。