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ドバイ発金融危機は、伝染するか Just a Flesh Wound or Not?

2009-11-30 | グローバル経済
2009年11月30日(月)

アラブ首長国連邦中央銀行は、ドバイの不動産開発を中心としたコングロマリットDubai Worldが先週水曜日に発した、600億ドルの債務に対する6ヶ月の返済猶予(a 6-month standstill)要請が、世界の金融・為替市場に与えた衝撃の緩和措置として、「ドバイの銀行の支払い能力維持(a liquidity facility)を支援する措置をとる」と日曜日に発表した。

この措置が、感謝祭連休が明ける月曜日のNY市場をはじめ、先週後半からの下げ一色の世界の株式市場と、ドルの暴落に対してどのような効果を発揮するかが注目される。

今回のアブダビ政府の支援が、ドバイの800億ドルの債務への直接支援ではなく、ドバイからの資本逃避を防止する対銀行支援措置だけにとどまったことから、投資家の疑心暗鬼を沈静させることは難しいかもしれない。

一方、世界の金融界は、ドバイ一国の金融破たんから、経済発展途上国への問題波及への懸念へと関心が移っていると、The New York Timesが伝えている。バブル投資に沸いてきた、アイルランド・ギリシャ・東欧諸国などにこのドバイ金融危機がパニック的に伝播することが心配のタネになっているのだ。

すでに先週のNY市場では、これらの国々にとどまらず新興国の債券は売り一色となり、これらの国々の債権にかける債務保証保険(CDS)の料率は急上昇した。債券取引最大手PimcoのCEOは、「ドバイは、これから各国国債市場の問題、いや危機の始まりになるかも知れない。リーマンショック以降の金融危機が、「かすり傷」(just a flesh wound)に過ぎなかったと考えている人々に対する警鐘だ」とコメントしている。

今週、投資家は、国ごと、銀行ごと、投資対象会社ごとに検証を強化していくであろうが、さしずめアイルランド、ギリシャ、バルト三国、ウクライナ、ルーマニア、ブルガリアが俎上に乗せられると、同紙は予測し、IMFの専門家の、「アイルランドの銀行に対するCDSの急上昇が、その危険の予兆だ」との論評を伝えている。

一方、ブラジル、中国、インドには、その成長力と国内市場の堅調さが買われて、「安全」な投資先として、資金が急激に流入している。しかし、この急激な資金の膨張を適切に制御する機能がまだ備わっていないこれらの国々では、株式市場と不動産市場の過熱がすでに起こっている。一方欧州では、域内の「途上国」のバブル崩壊が起これば、EUは、救済策を講じざるを得なくなるという問題が浮上している。

ドバイ問題は、中東の一問題で収束するか、世界に波及してリーマン危機後の「二番底」をもたらすのか、今週の展開が注目される。