世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

オバマ、アジア重視に転換 US’s re-engagement with Asia

2009-11-15 | グローバル政治
2009年11月15日(日)

オバマ大統領は、昨日APECに参加するためシンガポールに出発する直前、サントリーホールで1500人の聴衆を前に演説した。Financial Timesは、演説の中の対アジア外交部分に絞った報道を行っている。その見出しは「オバマ大統領、中国は脅威ではないと演説」(‘Obama says China not a threat’)である。

「米国は発展を始めた中国を封じ込める政策は取らない(not to try to contain a rising China)。中国の発展は国際社会にとって強さの源となりうる。米国は世界の諸問題、たとえば温暖化問題、核拡散問題、世界の経済不均衡問題など中国の協力を求めていく」と、ブッシュ政権の中国敵視政策からの転換を明確にした。

今回大統領は人権問題について形ばかりは触れた(an obligatory reference to human rights)が、チベットの名前は一言も出さず、これから行う中国訪問のために言葉を控えた(a strikingly lower-key way)。

また、ブッシュ政権が、APECやASEANなどの地域経済連合を軽視している間に、中国のアジアでの影響力が増大し、日本には「対等関係を求める」鳩山政権が成立した現状を反省し、今回の演説でアジアへの回帰を強く打ち出した。(America’s re-engagement with the region after the perceived neglect of the Bush years)

オバマ大統領は、日本人聴衆を前に、いわば今回のアジア歴訪の基調演説(a keynote speech)を行ったわけであるが、あまりに中国重視政策を説くことをはばかって配慮も忘れなかった。

自らを、“Pacific president”と呼び、日本はその地域の重要パートナー(an essential regional partner)であると位置付けたのである。そして、大統領就任後ホワイトハウスを最初に訪問した外国首脳は鳩山首相であったこと、クリントン国務長官も自分もアジア歴訪の最初の国を日本にしたことを日本重視の象徴として取り上げた。「聴衆の中の日本人」は、それに対して暖かい拍手(warm applause )を送ったと報じている。

日本は、(Clinton 政権の‘Japan Passing’に象徴されるように)米国民主党が対中交渉を、日本の頭越しに行ってきたことに対していらだってきたのだと、Financial Timesは論評している。


オバマ初来日、鳩山政権に配慮 Face-saving for Mr. Hatoyama

2009-11-14 | 世界から見た日本
2009年11月14日(土)

オバマ大統領のアジア歴訪の第一日目、日米首脳会談が行われ、直後の共同記者会見で、最大の懸案である普天間海軍基地の移設問題に関し、「高級作業部会を設置する」ことになったことが発表された。

これに対して、The New York Timesは、”Obama makes concession”(オバマ譲歩)との見出しで報道し、一方Financial Timesは、” US-Japan pledges fail to mask divisions”(日米、協調宣言するも対立点露呈)との見出しで東京発の記事を掲載している。

「今回の両首脳の共同記者会見内容について、ホワイトハウス高官は、米側の意図するところは、あくまで2006年合意の実行のための作業部会の設置であり、その変更を意図するものではない」と解説しているとThe New York Timesは報じている。さらに同紙は、「民主党の選挙公約を守らねばならない鳩山首相の立場に配慮しただけ(only a face-saving way for Mr. Hatoyama)のもの」 との日本の政治評論家の言葉を引用している。

オバマ来日に先立ってゲイツ国防長官が先月来日し、「2006年の普天間基地移転合意」に再交渉の余地がないことを明確にして帰国しているが、会談中のゲイツ長官の態度があまりにも高圧的で、しかも歓迎の夕食会への出席を拒否するなど、まさに同長官の態度は日本側に礼を失したものとなった(adding insult to injury)。このため大統領来日前に、日本側がホワイトハウスに対して、「鳩山政権に時間を与えてほしい。今あまり強硬にpushしないでほしい」との根回し工作が行われたことを、同紙は明らかにしている。

Financial Timesも、「記者会見は、両者の溝が深いことを明確にした(the two sides remain far from agreement)と論評している。そして両首脳の言葉をそのまま対比させた。すなわち作業部会設置について、鳩山首相は、問題を解決するため(to “resolve” the Futenma issue)と表現し、オバマ大統領は、両国政府が合意済みの内容を実行するため(“focus on implementation of the agreement that our two governments reached)と表現したと。

普天間については、すれ違いの首脳会談ではあったが、決定的な対立を回避するためのぎりぎりの双方の対応であった。しかし、両国に安全保障上の決定的な利害相反がないのに、このような事態に陥ることに、The New York Timesは「首をかしげる」トーンの報道姿勢である。


アフガン増派に現地大使反対の衝撃 Two Classified Cables

2009-11-13 | グローバル政治
2009年11月13日(金)

オバマ大統領は、アフガニスタンにおける対タリバン制圧の戦略方針の決定を先延ばしにしてきたが、いよいよ決断のときが迫っている。今日から始まるアジア歴訪直後に、増派問題に決着をつけるのではないかと、全米のメディアが取り上げている。

大統領が決定を遅らせているもっとも大きな理由として、まず戦線膠着とともに米兵の犠牲者が増加し、急速に厭戦気分が広まっていることがあげられる。それに輪をかけてオバマ大統領の決断を鈍らせているのが、大統領選挙が図らずも世界に暴露したカルザイ政権の腐敗体質と脆弱性である。

現在ホワイトハウス内では、この2ヶ月で8回目のアフガン戦争遂行会議(War Council)が開催されているが、それに向けてKarl Eikenberry駐アフガニスタン大使が、「現状の脆弱なカルザイ政権下では、米軍の増派に反対する」旨の2通の機密電報(Two Classified Cables)を送ったことが明らかになった。

同大使が過去2年間にわたりアフガン派遣軍の総司令官であったことからその発言には重みがあるゆえに、ワシントンに衝撃が走っている。同大使の警告は、カルザイ大統領が、「対タリバン掃蕩を目的とする米国のパートナーとして不適格」との烙印を押したのと同じだからである。

一方、Stanely McChrystal現地総司令官は、44,000人の増派を8月に進言しているが、オバマ大統領の意を受けたGates国防長官の、「3万人、1万人の可能性」はとの問いかけに対し、「そのような中途半端な規模では制圧不能」と全面的に否定している。
現地総司令官と現地大使の意見衝突という重大局面における難問が急浮上したが、オバマ政権内では、バイデン副大統領が増派懐疑派であり、ゲイツ国防長官とクリントン国務長官が強硬派と色分けがはっきりしている。

共和党は、マケイン元大統領候補を急先鋒に、オバマ大統領の優柔不断を激しく攻撃している。大統領支持率は、就任直後の70%から50%まで落ち込んでいる。こうした状況下で、オバマ大統領は今日日本に到着する。

ブラジル大停電発生 Search for Answers After Huge Blackout

2009-11-12 | 中国・ロシア・インド・ブラジル動向
2009年11月12日(木)

次の夏季オリンピックの開催国に決まった経済成長著しいブラジルで、火曜日の夜10:13に大停電が発生した。首都サンパウロや、オリンピックの開催地となるリオデジャネイロをも含む南部地域18州で、6000万人が影響を受け、隣国パラグアイも全土の90%で停電した。2時間後の翌朝12:30には主要地域でほぼ復旧し、4時間後には全面復旧した。

事故は、1700万kwの発電能力を持つイタイプ水力発電所の送電設備で発生した。当局者は、「ドミノ効果によって停電が広域で発生した直接の原因は、イタイプ発電所からの高圧送電線5回線のうち3回線が脱落したため」であると説明している。そして送電線事故そのものについては、「激しい雨が降っていたので、落雷や空中放電が原因になったのかも知れない」と推定されている。(an unexplained atmospheric event possibly exacerbated by heavy rains)

The New York Timesは、Federal University of Rio大学の教授が、「このような送電系統の事故は、ブラジルの送電系統の弱さ(valnurability)の象徴である。巨大水力発電所からの送電は、もっと適切に制御されていなければならない」と語ったことを引用している。

2001年には、ブラジルでは、経済成長に電力供給が追いつかず、全土で9ヶ月に及ぶ供給の割り当て(nine months of energy rationing)が行われた。当時のカルドーソ大統領は、エネルギー政策の失敗を追及され、急速に人気を失ったため2期目のあと再選をあきらめたという歴史がある。いまだに電力不足は解消していないのが現状である。

ブラジルを含むBRICs諸国は共通して国土が広い。急速な経済成長で電力消費は急成長している。発電設備と送電系統の整備が十分ではないし、送電系統の制御技術も遅れている。電力部門への投資が経済成長に比べて遅れるのは共通の悩みでもある。これからも、こうした広域大停電事故は頻発する可能性が高い。

オバマ来日に、50億ドル効果絶大Japan as a “stalwart ally”

2009-11-11 | 世界から見た日本
2009年11月11日(水)

オバマ大統領の訪日を前に、鳩山政権の普天間基地の移設計画見直し方針とインド洋における給油作戦中止をめぐって日米関係に緊張が走っているが、昨日鳩山政権が新たに示した50億ドル(約4500億円)のアフガン復興支援の決定を、「会談を前向きのムードに変えた」(Japan aid pledge sets positive tone for talks)と、Financial Timesが論評している。

オバマ大統領は、NHKとのインタビューで、「日本は確固たる同盟国」(Japan as a “stalwart ally”)と位置づけた上で、普天間基地移設に関して「新政権にとって、再検討を進めることは当然だ。しかし見直しが完了した段階で、現行の合意こそが日本の利益にかなうと結論づけると確信している」と述べ、遠まわしながら譲歩余地がまったくないことを明らかにした。

これには伏線がある。米国側からは、ゲーツ国防長官が先週来日して、普天間基地移設に関する日米合意の変更には応じられないとの強い異論が示して帰っているのだ。民主党は、今回の会談では、党内意見不統一と米国側の強硬姿勢からの判断から「普天間問題は議題にしない」との見解を公にしている。

その一方で、民主党は、このアフガニスタンにおける民生安定のための巨額支援を通じて、日本はより大きな役割を果たすことができ、同時に米国との協力関係は不変であることを示せると見解を示している。

これについて、Financial Timesは、この巨額援助が効果的に使えるかどうかは、アフガニスタンの不安定な情勢、日本政府の行政能力の限界、日本人現地要員不足を考えると極めて疑問であるとしている。その証拠にアフガニスタンの治安悪化を理由に、日本政府は極少数の援助要員までを撤収させたばかりではないかと問うている。

アフガニスタンの政府の腐敗の深刻さは、8月の大統領選挙でも内外に広く知られるところとなっている。「アフガニスタン援助は、相互連携が取れておらず、監視も不十分なため、政府関係者の着服と、事業を請け負う外国企業の不正請求の温床となっている」との専門家の意見を紹介し、50億ドルという巨額援助の受け入れ態勢が整っていないアフガニスタンの現状に警鐘を鳴らしている。


ベルリンの壁崩壊20周年記念 The Wall came tumbling down

2009-11-10 | グローバル政治
2009年11月10日(火)

1989年の「ベルリンの壁崩壊」(the collapse of the Berlin Wall)は、当時衝撃的な事件であったが、戦後の冷戦構造の終焉をもたらしたという意味で、その後の世界歴史に計り知れない影響を今なお持ち続けている。きのう11月9日はその日からきっかり20年の記念日であった。

昨日のベルリンは、あいにくの天気であったが、数十万人の市民が参加する盛大な祝典が催された。式典をリードしたのは再選されたばかりのメルケル(Angela Merkel)首相である。同首相は、最初の東ドイツ出身の首相でもある。

メルケル首相は、あの日東ベルリン市民が、なだれを打って西ベルリンに入った記念すべきボルンホルマー街(Bornholmer Strasse)の検問所の橋を、歩いて渡った。
そばにいたのは、旧ソ連の当時の首相だったゴルバチョフ氏と、当時のポーランドの労働者による解放組織「連帯」(the Solidarity)の議長であり後に大統領となったワレサ氏である。

メルケル首相は、演説中にゴルバチョフ氏のほうに向き直って、「何かが起こるためには、まずソ連の中で何かが起こらなければならないと思っていた。あなたがすべての流れをこの方向に変えてくれたのです。それは当時誰もが願っていたもの以上のことでした」(it was a lot more than we could have hoped for at the time)

ベルリンを戦後分割統治していた、米・英・仏・ソ連の4カ国の首脳も、東西ベルリン分断の象徴であったブランデンブルグ門(the Brandenburg Gate)の前で行われた公式祝賀行事に参加した。

英国は Gordon Brown首相, フランスはNicolas Sarkozy大統領 、ロシアからはDmitry Medvedev大統領が参加した。米国からは、オバマ大統領がビデオメッセージを送り、現地ではClinton国務長官が参加して、「今なお圧制から人々を解放する努力を続けなければならない」という趣旨の演説を行った。

式典には、厳粛な旧ソ連や旧東ドイツの弾圧の犠牲者への追悼式に加えて、Bon Joviのロックコンサートも催された。そして目を引いたのは、ベルリンの壁崩壊が、東欧や旧ソ連諸国の解放につながっていったことを象徴する壮大なドミノ崩しが準備されていたことである。一枚一枚に絵が描かれた巨大な「駒」1000枚が1.5kmにわたって並べられ式典中に倒された。



オバマ健保改革法案下院通過 This is our moment

2009-11-09 | 米国・EU動向
2009年11月9日(月)

土曜日夜に、これまで幾多の紆余曲折があって時間を要した健保改革法案がついに米国下院を通過した。

可決に必要な218票に対して、投票結果は賛成220, 反対215。民主党からは、39人が反対に回り、共和党は1人が賛成に回った。

Nancy Pelosi下院議長は、「なんてすばらしい夜でしょう」"Oh what a night!"と、直後の記者会見で感動を新たにした。民主党は、この1.2兆ドル(120兆円)の予算を要する健保改革によって、国民の96%が加入できることになり、国民一人ひとりに安心感(the peace f mind)をもたらすものだと、この法案の通過を誇っている。

一方の共和党の大半の意見は、「これは政府による健康保険制度の乗っ取り(take-over)であり、気分が悪くなった。この法律は、失業を作り出し、増税をもたらし、財政赤字を爆発させるもの"jobs-killing, tax-hiking, deficit-exploding"となる」という意見が代表している。

法案採決に先立ち、オバマ大統領は民主党下院議員を集めた非公開集会(a closed door meeting)を開き、熱っぽく法案通過の意義を語り、賛成票を投じるよう求めたことが大きな効果を発揮したようである。Nancy Pelosi下院議長は、今回の法案可決はこの説得工作にかけたオバマ大統領のおかげとまで言い切った。

オバマ大統領は、「賛成に回ると選挙民からの反対の声にさらされるかもしれない。もう疲れた、苦しい。選挙区で非難されているが、割に合わないという気持ちになっているかもしれない。

しかし、今年これを成立させないと、次のチャンスはいつ来るかわからない。現在の社会保障と老齢者健保(Medicare)を導入したときでさえ、賛成に回った人たちは、社会主義者とののしられたのだ。」と切り出し、

NY州で最近選出されたBill Owens議員をさして、「彼を見よ。この健保問題をはずして選挙戦を戦うこともできたであろうが、そうはしなかった」と称えた。

「私がホワイトハウスのthe Rose Gardenでこの法律に署名するときのことを皆さんは将来振り返って、『政治生活で最良の瞬間だった』'This was my finest moment in politics.’と必ずや回想できることを確信している」、その瞬間こそ「公僕としての議員の最高の瞬間なのだ。そしてこれは民主党議員としての最高の瞬間なのだ。これぞ公約を果たす最高の瞬間なのだ。」(This is their moment, this is our moment. ... This is our moment to deliver)と締めくくったと、伝えられている。


オバマ政権に暗雲 Wave After Wave of Bad News

2009-11-08 | グローバル政治
2009年11月8日(日)

オバマ大統領は、就任以来最初のアジア歴訪の旅程を遅らせて、Texas州、Fort Hood陸軍基地で発生した銃乱射事件の犠牲者追悼式典に出席することを決めた。

注目されるのは、「追悼式の日程は、犠牲者の家族の都合にあわせて決められる」としたことであり、これによって日本への到着は遅れ、日本での滞在時間は短縮される。

この銃乱射事件に関して、金曜日の夜大統領は、ホワイトハウス内のthe Oval Officeに、Gates,国防長官、Mike Mullen統合参謀本部議長、FBI長官のRobert Mueller、John Brennan国土安全省長官を集め、この事件の分析を行った。その内容は極めて緊迫(intense)したものであったという。

この会議の直後に、オバマ大統領は10月の失業率が26年ぶりに10%台に乗せたという報告を受けた。この数字は、職探しをしている人を加えると、実質失業率は17.5%に達する。オバマ大統領が誇ってきた巨額の経済救済策の効果に、深刻な疑問が生じた。

こうした週末の事件のみならず、「今週はオバマ大統領にとってbad newsが連続した厳しい週だった」とABC Newsは、論評し、「まるで浜辺に立っている足元が、次から次へと悪いニュースの波で洗われているようだ(Wave After Wave of Bad News)」というホワイトハウスの関係者の言葉を紹介している。

まず、アフガニスタンの大統領選挙が不正投票問題で再選挙となったが、今週対立候補による忌避でカルザイ氏が再選された。しかしその政権の合法性や、民主制度に重大な疑問符がついたことは、アフガニスタン米軍増派や同盟国の支援体制に少なからず悪影響が出始めていること。

さらには、New JerseyとVirginia両州の知事選挙で、民主党候補が連敗し、民主党優位の政治局面に重大な転機が訪れる事態となったこと。

そしてアフガニスタンへの派兵拠点の、Fort Hood陸軍基地でのアラブ系米国人軍医による大量射殺事件に至ったのは、偶然とはいえ、増派決定で世論が二分している状況下で、あまりにタイミングが悪い。

翻ってこのオバマ大統領の日本到着を遅らせるとの決定と、岡田外相の訪米受け入れが実現しなかった経緯とあわせ考えると、米国政府の鳩山政権の位置付が浮かび上がってくる。



米失業率10%突破 Jobs saved and created

2009-11-07 | グローバル経済
2009年11月7日(土)

10月の米国の失業率は、26年ぶりに10%ラインを突破して、10.2%となり、失業者総数は、1570万人となった。10人に一人が失職している状況はしばらく続きそうである。

失業増加はこれで22ヶ月連続となる。10月一月で増加した失業者は19万人で、大恐慌以来とされる今次の景気後退局面で新たに失業した人の数は、730万人に達している。

第3四半期の経済成長率が、プラス3.5%に転じた後だけあって、この失業率の予想以上の悪化は、消費者の購買意欲に、重石になるのではないかと懸念されている。

オバマ大統領は、「9月末で、約15兆円に達した景気刺激策によって、64万人分の職場が救済されるか、創出された(saved or created)」と、自らの政策の効果を強調しているが、これに対して、民主党内部から異論が出ている。

もっとも失業率が悪化している州のひとつであるCalifornia州選出の下院議員は、「政府は現実から遊離してしまっている(being out of touch with reality)」と非難している。

同議員は、さらに「政府は、職場の‘救済と創出’という表現で自らの政策の成功を謳いあげて、失業者の実数の増加に対する責任回避をしている。この‘救済と創出’という統計は実は検証不可能な数字(the immeasurable metric)であり、毎月毎月この数字で、国民に対する説明責任を回避し、国民の目を現実からそらし続けている」と非難した。

確かに、「64万人分の職場が救済ないし創出された」といえる根拠は何かという説明はない。「救済された雇用」はあくまで推定であろうからこの非難の方に分がありそうだ。


ウォールストリート大規模インサイダー取引摘発 Octopussy

2009-11-06 | グローバル企業
2009年11月6日(金)

3週間前に、IBM、Intel、Moody’sを巻き込んだインサイダー取引の容疑でthe Galleon hedge fundの創始者Raj Rajaratnamが逮捕されたが、木曜日に、これに関連して弁護士、Moody’sのアナリスト、証券会社Incremental Capitalの創始者など14人が、マンハッタン地区連邦検察局に、約4000万ドルの不正利益を得た容疑で訴追された。

担当検事は、「これは、世界的に有名な会社の内部に通じる’不埒なインサイダーへの鉄槌’(a clampdown on “unscrupulous insiders with connections to some of the best known companies in the world”)だ。」と語っている。

検察当局とSECによる今回の捜査の中心にいるのは、元the Galleon hedge fundに勤務していて、数ヶ月前にIncremental Capitalを立ち上げたZvi Goffer氏である。同氏に付けられたあだ名は、オクトパシー(Octopussy)。彼の情報網が、蛸足のように企業内に張巡らされてきたことを形容したものである。

企業内にいる内報者(tipsters)には、プリペードの携帯電話を渡し、追及の手が伸びたときの証拠を残さぬようにしていたことなどの周到な準備があったことが明らかになりつつある。また弁護士の中には、現金の運び屋の役目をしていたもの、自分が顧問を務めている会社の情報を流していたものが含まれている。

そして本件の立件に当たっては、大規模な盗聴、囮捜査、容疑を認めた者からの捜査協力があったことを当局は認めている。IBMやIntelなどの大企業の内部情報が、不正利益のために利用されたこともあり、捜査の展開が注目される。


米国小売業、年末セール繰上げ実施 Black Friday

2009-11-04 | グローバル経済
2009年11月4日(水)

11月の第4木曜日と定められている感謝祭(Thanks giving)直後の金曜日を小売業界では、Black Fridayと呼んで、年末商戦の開始日としてきた。

小売業が、通年の赤を、クリスマス商戦で取り戻して、「黒」字化を図れるもっとも重要なチャンスということから、’black’という形容詞が使われている。株式市場暴落の際に言われる、Black Mondayなどの用例とは意味が異なる。

ことしは大手小売業がこぞって例年より早くセールを開始するという。小売業界団体の調査による調査によると、今年消費者が年末のギフト購入に充てる予算は、683ドルで、昨年の705ドルから約3.2%減少するとの予測がでている。

この調査結果を見た小売各社が、’Black Friday’の開始時期をいっせいに繰り上げたのである。ABC放送は、Saks Fifth Avenue、 Wal-Mart、 Sears、Toy’R’Us、Dell(Wii)、Best Buyなどの有名小売業の新’Black Friday’戦略の内容を報じている。

そして実態を知るには、Black Friday @ Gotta Deal や Black Friday Ads. などのweb siteを見るとよいと勧めている。

日本の消費者金融業界の行方 The Dastardly Sarakin

2009-11-03 | 世界から見た日本
2009年11月3日(火)

2日の株式市場は、武富士が急伸し、ストップ高まで買われ、取引を終えた。アコム、プロミスもそれぞれストップ高だった。個人事業主の資金繰りが悪化していることを重視して、無担保ローンの貸し付け制限を緩和するのではないかとの報道に投資家が反応したのだ。

早速この動きを、Financial Timesが、株式コラムThe LEX Columnで論評している。

過払い利息返還請求に応じているため青息吐息となっているサラ金各社の苦難は、自民党政権が貸金業法を改正し、貸し出しの合計を年収の3分の1以下に抑え、上限金利 (capping) を設定する貸金業法の改正をしたことと、追いかけて2006年1月に最高裁が、「支払い済みの過払い金利返還請求」を認めるとする判断を示したときに始まった。

「鳩山民主党政権は消費者の味方であっても、消費者金融の味方ではありえない」との見方から、政権発足以来、消費者金融各社の株価は、20%以上下げてきた。「大衆迎合的な民主党(the avowedly populist DPJ)が、業突張りのサラ金(the dastardly sarakin)にやさしいわけはない」と投資家が判断したのである。

その結果、政権成立から先週末までに、20%株価は下げてきたのが、上述のように来年6月に予定されている貸金業法の再強化を見送るらしいというニュースが飛び交って、株価が大幅に戻したということである。

景気の悪化と比例して、過払い金利返還要求はやむことなく続き、すでに2社が倒産し直近では、ロプロが会社更生手続き開始を東京地裁に申し立て、受理された。また、最大手の一社の存続も危ぶまれている。

こうした状況を総合して、Financial Timesは、“More look inevitable”(もっと倒産するのは不可避)と、論評を結んでいる。


クリントン、パレスチナ調停不調 Freeze or Restraint

2009-11-02 | グローバル政治
2009年11月2日(月)

クリントン米国務長官が、パレスチナ和平交渉の再開を目指して、31日にアラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビで、パレスチナ自治政府のアッバス(Mahmoud Abbas)大統領と会談後、週末にイスラエル入りして、ネタニヤフ・イスラエル首相(Benjamin Netanyahu)と会談した。

和平交渉の前提条件となっていたのは、ヨルダン川西岸(the West Bank)と、東イスラエル地区に対するイスラエルの入植活動の全面的な凍結(a comprehensive settlement freeze)であったが、クリントン国務長官はイスラエル側の強硬な反対姿勢をくずすことができなかった。

先月、オバマ大統領、アッバス大統領、ネタニヤフ首相がNew Yorkで会談した際も、調停は不調であり、オバマ大統領も、「全面的凍結」という言葉を使えず、イスラエルの「入植活動の抑制」("restraining" settlement activity)という表現まで後退させざるを得なかったという経緯がある。

アブダビ会談でもアッバス大統領が、「全面的凍結」を再度要求した直後のクリントン国務長官の現地入りであったので、調整余地は事実上なかった。

クリントン国務長官は、ネタニヤフ首相と会談後共同記者会見に臨み、「入植活動の自制を提案していることは前例がない(unprecedented)と賞賛したが、これがパレスチナ側の怒りに火をつけた。

自治政府のスポークスマンは、「前例がないという言葉は、入植前面凍結以外には使えない」と反論。「2003年の和平手順合意(the 2003 road map)時点から、イスラエルは73,000人の新規入植者を許し、その人口は17%増加している」と、歯止めのない入植活動の拡大の現状を非難した。

オバマ政権は、米国内のユダヤ人の影響力が強大なため、これ以上イスラエルを強硬に説得することは不可能である、そしてパレスチナもイスラエル双方とも穏健派が表舞台から去ってしまっている。そして、アッバス大統領も次期選挙には出馬しない意向である。

穏健中道派であった同大統領の心境に関して、自治政府スポークスマンは、"He feels betrayed by Arabs, Israelis, some Palestinians and to a certain extent by the Americans"(アラブ人にも、イスラエル人にも、パレスチナ人の一部にも裏切られたという思いでいる。そしてアメリカ人にもいくばくか裏切られたと思っている)とCNNに語った。

オバマ大統領の、解くべき外交問題に、もう一本難しい方程式が加わった。

オバマ、ハローウィンに二千名の子供を招待 No Trick

2009-11-01 | 米国・EU動向
2009年11月1日(日)

土曜日の夜に、オバマ大統領夫妻は、ワシントンとその周辺のMaryland・Virginia両州の小学校から、2000名の児童をホワイトハウスのハローウィンに招待した。

子供たちは、アメリカでもっとも有名な玄関で、大統領一家からご褒美(goodies)をもらうために、ハローウィンのお祭りの言葉“trick-or-treat”(お菓子をくれないといたずらするぞ)の声を上げた。

庭では子供たちのためのイベントが行われて、キャンディをもらう長い行列をいちどきに作らなくてもよいようにとの配慮がなされた。この日は、子供たちにとって極めつけのご褒美(ultimate trick-or-treating treasure)となった。

正真正銘のご招待だったので、まさに'No trick'であった。

かつて、ホワイトハウスで、ハローウィンを大イベントで祝ったのは、1989年のGeorge H.W. Bush大統領が500名の児童を招待したのと、1993年にBill Clinton大統領が、ホワイトハウス邸内いっぱいにかぼちゃのお化けランタン(The Great Jack-O'-Lantern)を描くという趣向を凝らした、その2回である。

大統領一家は、この夕方の大行事の後は、ホワイトハウスのthe East Roomで、Joe Biden副大統領一家とともに、軍関係者とホワイトハウス職員の家族とのレセプションを行った。