ガウスの旅のブログ

学生時代から大の旅行好きで、日本中を旅して回りました。現在は岬と灯台、歴史的町並み等を巡りながら温泉を楽しんでいます。

旅で農山村の荒廃を憂う

2005年09月09日 | 旅で考えること
 日本中を旅していると、農山村の荒廃が目立つようになった。農村部では、かつての青々とした水田地帯に耕作されない所が目立つようになり、景観を損ねている。また、農村の中心集落の商店街も活気がなく、シャッターを閉じたままの店も見られる。それが、昔ながらの街並みに変化を来させてもいる。逆に水田地帯に大型のスーパーマーケットが建てられたりしていて、著しく違和感を感じさせる場合もある。
 これが、山村部へいくともっと深刻で、耕作放棄された棚田が目立ち、手入れされていない森林で樹木が立ち枯れしていたりもする。また、人が住まなくなって、荒廃した民家も目に付くし、お年寄りばかりが農作業している姿も見られる。
 先日の台風14号では、九州、四国、中国地方に大きな爪痕を残したが、山村部での土砂崩れが目立ち、その下敷きになって、死亡したり行方不明になっている人たちも高齢者がほとんどだ。しかも、高齢者の一人住まいや高齢夫婦世帯が多いのだ。これらの災害の原因には、希に見る異常な降水量があったことも事実だが、山村地帯の荒廃もその一つに挙げられている。荒廃した棚田や山林は保水力を失い、鉄砲水の原因となっているし、それらを管理できなくなってしまった山村の過疎高齢化が背景にある。
 山村地帯の過疎高齢化が問題とされて久しいが、いっこうにそれが改善される気配がなく、ますます高齢化が進行している。一部には、伝統的な祭りが出来なくなったり、消防団さえ維持できなくなっている所もあると聞く。極めて深刻な状況と言わざるを得ない。
 これらのことは、政府与党の行ってきた、国土の管理や公共の福祉、所得の再分配などの政治がうまくいっていないことを示しているようにも思えるのだが...。確かに、高度成長期以来土木建築費には多くの予算が費やされ、道路や河川、ダ工事などは行われてきた。旅先でもその様子はよくわかるのだが、肝心の住民の生活基盤が脅かされ、農林業採算が取れなくなって、耕作放棄や森林の放置、そして農山村地帯からの人口流失(とりわけ若年労働力)を引き起こしてきた所が多いようにも思う。これらが、国土の荒廃を促し、農山村の公共福祉にも影響を与えているようにも考えられるのだ。
 国の重要な役割の一つ、所得の再配分政策の面では、最近これがうまくいってないことが顕著になっていると思う。9月8日付「朝日新聞」朝刊に出ていたが、日本の貧困度(国民平均所得の50%以下の所得しかない「貧困者」の全人口比)は年々上昇し、1980年代半ばの10%ちょっとの水準から、現在では15%を超えている。一方で、所得格差(上位2割と下位2割の所得総額の比率)は年々広がり、1980年代前半には10倍以内だったものが、2002年には168倍にも達しているという。要するに貧困世帯が増加する一方で、富裕層との格差が著しく広がっていると言うことだ。
 山村地帯の高齢者世帯などはまさにこの貧困層に属すと思われるが、このような所に所得を再配分して、活性化させ、国土の荒廃を食い止め、公共の福祉の面でも充実が図れないかと思うのだ。そうしないと、山紫水明の美しい国土には蘇っていかないのではないか...。
 ところが、いま政府自民党は2007年度あたりをめどに消費税の増税を企図しているようだし、民主党も消費税の3%増税を打ち出している。これは、所得再配分の面からは的を得ていないよう思えるのだ。消費税は、物を買うたびに税金が取られるので、貧困層にも応分に負担がかかるからだ。
 このように、所得格差が拡大しているときには、累進課税を強化して、富裕層に多く負担してもらって、国土の保全や公共の福祉を進める方が良いようにも思うのだが...。ちなみに、所得税の最高税率はかつての50%から、1999年以降37%に引き下げられてしまっている。また、法人税の最高税率も引き下げられ、さらに租税特別措置法によって、1億円以上の企業は優遇されている。日本経済も回復基調にあるようなので、こちらの方にメスを入れる方が良いように思えるのだが...。
 旅をしながら徒然に思ったことを書いてみたが、農山村に活気がみなぎり、山紫水明の日本が蘇ってくれることを願って止まないのだ。