
さて、今回の正義と悪を考えるシリーズは、テレビのヒーロー番組のお話をしたいと思
います。
と言っても、このヒーローをご存知の方はあまりいらっしゃらないのではないでしょう
か?
「新・七色仮面」
ね?
私も、3年前くらいに初めて知ったんです。
それもそのはず、この「新・七色仮面」は昭和34年に始まった「七色仮面」のあとを受
けて、昭和35年に、半年間、放送されたヒーローものですから。
もちろん、私が生まれるはるか以前のテレビ番組です。
つまり、昭和30年代って事♪
まず、全部、日本語なのが、レトロな雰囲気がして、古いものが好きな私のハートに、
グッときちゃいます♪
私の子供の頃は、「ウルトラマン」や「ミラーマン」など、横文字のヒーローが多かっ
たんです。
もしそれらのヒーローを日本語にしたら、どうなるでしょう?
「ウルトラマン」は「極度の男」
「ミラーマン」は、「鏡男」
「仮面ライダー」は、「仮面乗り手」
なんだか、すごく新鮮!
もしかしたら、イケてるかも~♪
でもね、このヒーローものが放送されていた昭和35年というと、今みたいなカラーテレ
ビじゃなく、白黒テレビの時代でしょう?
その白黒テレビの時代に、「七色仮面」て、罪作りな名前だと思いませんか?
白と黒しか分からないんだから、いっその事「白黒仮面」にすればよかったのに。
私、初め、そう思ってたんです。(笑)
ところが、それは(七変化)という言葉があるように、変装の名人という意味だったん
です。(苦笑)
それでは、もっと詳しく、「新・七色仮面」について書きますね。
この主題歌を歌っているのは、キング小鳩会と近藤よし子さんという小さいお子さん達
で、とっても可愛らしい歌声で、歌詞の内容も童謡っぽく、今の子供にもウケそうだなと
思いました。
♪解けない謎を さらりと解いて
この世にあだなす者達を
でんでんどろりこ やっつけろ でんでんどろりこ やっつけろ
七つの顔のおじさんの本当の顔はどれでしょう?
(でんでんどろりこ)って、何でしょう?
歌詞の流れから言って、たぶん、悪党の事で、もしかしたら悪党が登場する場面で流れ
る怪しげな音楽になぞらえているのかも知れません。
では、主な登場人物をご紹介しますと、主人公の七色仮面こと蘭光太郎は、普段は私立
探偵で、彼の正体が、七色仮面なのは誰も知りません。
演じているのは、世界的なアクション・スター千葉真一さんで、この作品がデビュー作
になるそうです。
この蘭光太郎が、悪党の仕組んだ様々な謎を解いて、いざという時、七色仮面に変身し
て、悪党をやっつけちゃう訳♪
彼は変装の名人で、謎の中国人や浮浪者に化けるだけでなく、なんとゴリラにも変装出
来ちゃうのです♪
また、超能力者でもあり、七色仮面に変身した時、瞬間移動出来たり、機関銃で撃たれ
ても、まるでへっちゃらなのです♪
脇役では、金有左門という、やはり探偵のおじ様がいて、助手の荒井三子さん共々、滑
稽な役で、息が詰まるような緊張感をほぐしてくれる重要な存在です。
で、私が観たのは第6部の「毒蜘蛛に手を出すな」の巻です。
これは、トルメニア国建設を企む毒蜘蛛(どくぐも)一味が、国の象徴となる神器とし
て、竜造寺家のコレクションを盗むのを、七色仮面が阻止するというストーリーです。
まず最初に、びっくりしたのは、お話が長くて、ストーリー性の豊かなところでした。
私の子供の頃のヒーロー番組は、30分1話完結方式だったのに、「毒蜘蛛に手を出す
な」の巻は、7話もあるんです。
つまり、単純に計算すると、3時間半!
この番組は、サスペンスあり、コメディあり、活劇ありで、ストーリー作りが上手でな
ければ出来ないなと思いました。
しかも、蘭光太郎が、ピストルで撃たれて倒れたり、崖から転落するなど、毎回、ハラ
ハラ・ドキドキしたところで終わり、次回に気をもたせているんです。
ちなみに、脚本家は「月光仮面」を作った川内康範さんで、この人は作詞家としても有
名な方です。
では、なぜ、私の子供の頃は、30分1話完結方式だったのでしょう?
30分では、3時間半ある「七色仮面」のストーリーの豊かさには遠く及ばないですが
、その代わり、毎週、違った悪が登場してましたから、次はどんな悪がヒーローと戦うの
かに興味が行くようにしていたのかも知れませんね?
それはともかく、蘭光太郎は悪党の計略を次々に見破り、敵が攻撃してくると見るや、
パッと七色仮面に変身して、超能力を駆使し、2丁拳銃でやっつけちゃうのです。
これを観た当時の子供たちは、悪に負けない勇気と知恵の大切さを学んだのかも知れま
せん。
だけど、女性として、また子を持つ親として私は、一つだけ気になることがあるんです
。
これは見方によっては、かなり危うい受け取り方になっちゃうだろうなと思うんです。
それは七色仮面が、自分のことを、正義の味方と名乗っている事です。
正義の使者でもなければ、正義の化身でもなく、正義の味方って、一体、何なの?
でも、七色仮面は、「これは正義のためだ!」みたいな事を言って、悪をやっつけてる
んです。
考えたら、「七色仮面」に限らず、多くのヒーローものは、暴力を振るってますが、正
義のためなら、暴力も許されるのでしょうか?
私が疑問に思ったのは、ある人が、あれはヒーローではなく、正義の味方だという言い
方に固執する文章を、ブログを書いたからなんです。
私は、ヒーローという呼び方だったら、ある使命感を持って、暴力を振るう訳ですから
、許される気がしなくもないです。
私が、そう思うのは、私はこれまでにも、いくつかヒーローものの記事を書いているの
ですが、ひときわ私の心に響くコメントを頂いたからです。
その人は、元自衛隊員で、子供の頃の純粋な気持ちを思い出し、勇気をいただいたと、
私がヒーローものの記事を書いた時には、いつも嬉しそうにコメントを寄せてくれていた
のです。
その人は、すごい情熱家で、自分のブログに(お国のためなら命も捧げる)みたいな事
も、時々書いていました。
そういえば、普通の人は、お国のために働いてるという意識はあまり持たないと思うの
ですが、私は、自衛隊の方が「お国のために頑張ります!」という言葉を何度も聞いた事
があります。
私が、それを最初に聞いたのは、湾岸戦争後、ペルシャ湾に自衛隊が初めて海外に派遣
された時でした。
それまで日本は資金を援助するだけで、戦争に加担した事はなかったのですが、同盟国
の要請を受け、自衛隊を海外に派遣せざるを得なくなったのです。
その時、日本の世論は、自衛隊の方が戦死したり、これを機に、再び、戦争への道を歩
み出すのではと懸念する声が多く聞かれました。
ところが、テレビで、海外に派遣される自衛隊員に心境を聞く番組があって、皆、真剣
な眼差しで、口々に「お国のために頑張ります」と答えていたのです。
自衛隊が海外に派遣されるのは正しいとか間違ってるとか、正義とかではなく、当の自
衛隊員はそれを使命と捉え、命懸けで、戦地に赴くのだなと、私はその言葉を聞いて、胸
が震えるほどの感動を覚えたのです。
そして、彼らが無事に生還出来るようにと祈らずにはいられませんでした・・・
彼らこそ、ヒーロー(英雄)の名にふさわしいのでないのか。
私が、正義の味方と呼ぶのに抵抗を覚え、ヒーローと呼びたいのは、そういう理由から
です。
それに正義の味方と言っても、単に暴力を美化したいだけじゃないのかな?と疑問に思
ったのもあります。
というのは、ヒーローものも、いわゆる勧善懲悪の類型の一つだと思うのですが、時代
劇みたいに悪が人間でなく、人間では及びもつかないような凶暴で恐ろしい悪を創造する
点にあります。
普通、正義と言えば、平和的で、生産的で、建設的なもののはずです。
いいえ、絶対、そうです。
ところが、正義の味方は、必ず暴力を振るって、悪をやっつけなければいけない事にな
っているらしいのです。
悪がはびこるのを抑えるためには、暴力も必要だと言いたいのでしょうか?
だけど、暴力を正義だと言いたい人は、正義の味方が引き立つためには、悪は出来るだ
け強くて、凶暴でなければならないと言うんです。
そして、悪の列伝を得々と、自分のブログに書いていたのです。
それが、本当に、正義を愛する人のする事でしょうか?
暴力は暴力を呼び、最終的に、悪に目覚めてしまう。
暴力を振るう者を、正義の味方という言い方に固執する人は、本当は悪が好きなのでは
ないかと思わざるを得ないです。
では、一体、誰が、最初に、正義の味方という表現を作ったのでしょう?
それは、「月光仮面」の主題歌で歌われたのが、最初で、作詞したのは、やはり「新・
七色仮面」を作った川内康範さんだと分かりました。
「月光仮面のおじさんは、正義の味方よ 良い人よ・・・」と、ご丁寧にも、「良い人
よ」と、付け加えられています。(笑)
もともと、川内康範さんは、日蓮宗のお寺で生まれ、月光仮面は、善悪の区別なく、誰
にでも降り注ぐ月光を象徴とした月光菩薩をイメージして作られたのだとか。
だったら、それがどうして暴力で、悪を屈服させるのでしょうか?
仏教が、暴力を勧めるはずがないでしょう?
仏教の場合は説教じゃないですか。
相手が、悪人なら、こんこんと説き伏せて改心させる。
それでこそ、宗教というものです。
月光菩薩に暴力を振るわせるなんて、とんでもありません!
ましてや、正義の味方に暴力を振るわせるために、この世にいない凶暴で、恐ろしい悪
を創造するとは、言語道断も甚だしい!
正義を勧め、悪を憎むなら、悪はやっぱり人間で、暴力を振るってはダメです。
そして、悪にはこんこんとお説教して、改心させる!
しかし、お説教なんかしなくても、川内康範さんには、悪を改心させる素晴らしい方法
があるじゃありませんか。
例えばですよ、実際に犯罪を犯して、籠城している犯人を説得して、自首させる方法に
、母親を呼んで、涙ながらに訴えるのがあるでしょう?
どんな悪人でも、世界中で一番、大切なのは、お母さんに決まってますから、これは効
果絶大だと思います。
そこで、正義の味方が、悪を改心させるのに、川内康範さんが作詞した森進一さんの名
曲「おふくろさん」を歌って聞かせるんですよ。
♪お袋さんよ おふくろさん
空を見上げりゃ 空にある
雨の降る日は 傘になり
お前もいつかは 世の中の
傘になれよと教えてくれた
あなたの あなたの真実
忘れはしない
ああ、なんて、素晴らしい歌でしょう?
感動で、涙が・・・涙が、とまりません・・・
これを聞いたら、どんな悪人さえも、お母さんの優しさを思い出し、涙せずにはいられ
ないでしょう・・・
そして、改心して、自首し、もう一度、人生をやり直す。
これで、めでたしめでたし。
ね?
すごい名案でしょう?
これだったら、暴力を振るわずに、正義の素晴らしさを子供たちに教えられるじゃない
ですか?
暴力は暴力を呼び、悪に目覚めてしまう。
正義とは、暴力とか、破壊的な事とは無縁で、平和的で、生産的で、建設的な事を言う
のです。
でも、ヒーローなら、暴力を振るう場合もありかな。
私の説、あなたはどう思いますか?