
お待たせしました。
ようやく、昨日、「巨人の星」のDVD33枚を観終わり、今日、漫画版もすべて読み終わりました。
最初は、こんなに沢山のDVDを観るの大変だな~と思ってたんですけど、観始めたら、グイグイ引き寄せられて、全然、退屈しませんでした。
「巨人の星」は3年半も放送していたそうで、だから、こんなに多いのですね。
漫画版は、今回、初めて読んだのですけど、テレビアニメの「巨人の星」は、私が幼い頃に放送してましたので、観ていた記憶はあるんです。
「あしたのジョー」の記事でご紹介した私の従姉妹のお姉さんも大好きだったようで観ていたと教えてくれた事がありました。
だけど・・・私が子供の頃、観ていたのは、正直、最初のうちだけだったんです。
なぜかと言うと、最初の頃、飛雄馬は小学生だったでしょう?
私は、その頃、飛雄馬より、ずっと幼かったですけど、割合、年齢が近かったので、お兄ちゃんみたいな気持ちで観ていたんです。
そして、忘れてならないのは小学生の頃の飛雄馬は、父・星一徹に厳しく育てられていた事ですよね。
ちゃぶ台をひっくり返して、飛雄馬を殴ったり、雪の中を、一緒に走ったり、バットで打ったボールを捕まえ損ねて、体中、傷だらけにさせられたり、大リーグボール養成ギブスをさせられたり。
そんな飛雄馬がたまらなく可哀想で、涙をこらえながら、幼い私は応援していたんです。
ところが、放送が進むに連れ、たった数ヶ月で、飛雄馬は小学生から、中学生になり、高校生へと、どんどん成長していっちゃっいました。
私は、飛雄馬が、自分と、どんどん年齢が離れていったので、そんな大きな人を可哀想とは思えなくなっちゃったんです。(苦笑)
つまり、抱っこされて、頭を「いい子いい子」と撫でてもらいたいくらいに、飛雄馬が成長しちゃったので、途中で、観る気をなくしちゃったという訳。(苦笑)
消える魔球とか、日高美奈さんとのエピソードとか、断片的に観ていた記憶はあるんですが。
それで、先日、初めて、全部を観て、魂が揺さぶられるほどの感動を覚えちゃったんです。
これこそ、男のロマン、男の世界だわって。
まず、取り上げたいのは 父・星一徹との関係ですね~。
星一徹は、プロ野球で、自分の果たせなかった夢を、飛雄馬に託して、小さいうちから、ボールで遊ばせたり、大リーグボール養成ギブスで鍛え抜くのです。
一徹が、飛雄馬と夜空を見上げて言うこんなセリフがあります。
「飛雄馬よ、見るがいい。
あの星座がプロ野球最高の名門巨人軍だ。
おれも、かつてはあの輝かしい星座の一員だった。
だが、それが今では、もう手の届かない彼方に遠ざかってしまった。
飛雄馬!
お前は何が何でも、あの星座まで駆け登るのだ。
巨人軍という星座のド真ん中で、ひときわデッカイ明星となって光れ、輝け!」
男として生まれたからには大志を抱けという事でしょうか。
そうして、飛雄馬は父親に鍛えられていくのですが、星一徹の何がすごいって、念願かなって巨人軍に入った飛雄馬と決別し、中日ドラゴンズのコーチに就任して、打倒大リーグボールを掲げ、敵味方となって、闘志むき出しで闘うっていうのですから!
しかも、飛雄馬の無二の親友、伴宙太を中日ドラゴンズにトレードして、二人を引き離してしまうのです!
そんなのって、もう親子でも何でもない!
まさに、鬼としか言いようがないわ!!
でも、そこには深い理由があり、亡き妻の遺影に向かって、星一徹はこう言うのです。
「飛雄馬の背番号16と、わしの背番号84を足せば、いくらになる。
100じゃ。
すなわち、完全じゃ。
そして、その足し算とは、父と子が、先輩と後輩の、男と男が、血で血を洗うすさまじい戦いじゃよ!
その死闘の彼方において、もし飛雄馬が勝てば、みごと、わしを乗り越えれば、その日こそ、やつは完全なる野球人となりうる!
王者巨人の星座にあって、ひときわ、でっかい明星に!」
ところで、その伴宙太は、飛雄馬と初めから仲が良かった訳ではなく、飛雄馬の心意気に感じて、伴宙太の方から頭を下げて、親友になったのです。
そんな飛雄馬と闘うのは、宿命のライバル花形満と、熊本出身の左門豊作です。
花形満は自動車メーカーの御曹司で、美男子で、キザっぽいのですけど、これは間違いなく、貧乏対お金持ちの対決にしたかったからでしょうね。
花形は、飛雄馬の大リーグボールを打ち崩すために、父親の自動車工場で、何度も機械を作ったりしてますので。
一方の左門豊作は、飛雄馬より、さらに輪をかけて貧乏という設定で、幼い弟や妹を引き取り大切に育てていて、飛雄馬との対決の時、どちらを応援していいかわからなくなるほど、その境遇が可哀想でならなかったです。
そして、左門豊作は前述した通り、熊本の出身なんですけど、なぜ飛雄馬の強力なライバルを熊本にしたのか、同じ九州に住む私には分かる気がするんです。
熊本は、巨人軍の監督川上哲治さんの出身地でもありますが、柔道で金メダルを取った山下泰裕さんの生まれた県でもあり、あの剣豪宮本武蔵が、死に場所を求めた県でもあるのです。
つまり、全国一強くてたくましく、熱い闘志を持った男の中の男がいるのが熊本県という訳♪
そんな花形満や左門豊作と、飛雄馬はライバルとして闘いながらも、熱い友情を築いていくところが、めっちゃ感動するんです♪
少女漫画家の萩尾望都さんが、男同士の友情は、肉対関係のない愛情だと言っておられますが、女性にはすっごく魅力的に写っちゃうんです。(笑)
そうして飛雄馬は野球一筋に生きるのですが、父・星一徹が、打倒大リーグボール1号のためにアメリカから呼び寄せたオズマに、「お前も、俺と同じ野球ロボットだ」と言われたのにショックを受け、人間らしさとは何か?と思い悩んじゃうのです。
そんな折り、キャンプのために行った宮崎で、日高美奈という女性と運命の出会いをし、愛してしまうのです。
そう!
飛雄馬が唯一、愛した日高美奈は、私と同じ宮崎の女性だったんです!!
ランララララ~♪
う、う、すごく嬉しい・・・(涙)
はっ!
ごめんなさい。
つい、我を忘れて、喜んじゃいました。(苦笑)
この日高美奈は、ただ美しくて優しいだけじゃなく、とても素敵な女性なんです。
最初の出会いの時、飛雄馬はボールを取り損ねて、日高美奈が応援席に連れていた少女を直撃し、美奈は飛雄馬の言葉が許せなくて、頬を平手打ちしちゃうんです。
「誤ちなら、許すしかありませんが、つい、よそに気を取られてというのが許せませんでした」と言って。
自分に厳しくないと、こういう言葉って、なかなか出てきませんよね?
そうして、二人は愛を育んでいくのですが、二人には悲しい運命が待っていたのです。
美奈は難病に冒されていて、明日をも知れぬ命だったのです。
しかし、気丈な美奈は、死の床で、飛雄馬を呼んでほしいという言葉を、診療所の沖先生に託した時、 「もし、星さんがマウンドに立っていたら、決して声をかけないでほしい。そこは星さんにとって、美奈より大切な場所だから・・・」と、最期まで飛雄馬を気遣うのです・・・
こんなにも儚く美しく、それでいて気高い恋に、私は泣くしかありませんでした・・・
あと、女性のキャラクターで言えば、忘れてならないのは飛雄馬の姉の明子です。
明子は、いつも優しく飛雄馬を見守っているのですが、気丈な面も併せ持っていて、伴宙太が飛雄馬との別れを嫌がり、中日ドラゴンズにトレードで行くのをゴネている時、背中を押すこんなセリフがあります。
「飛雄馬のために、ご自分の可能性を追求するチャンスを、伴さんが失ってしまう事がたまらなく心配なの。伴さん、あなたも、花形さん、左門さんのように、優れたライバルとして、青春のレース場で、徹底的に競いあうべきだと信ずるわ。」
伴宙太はそれまで飛雄馬を支えていただけで、せっかくの才能を活かすチャンスがなかったのです。
でも、中日ドラゴンズに行けば、星一徹コーチが、ベーブ・ルースにも引けをとらないほど、素晴らしいホームランバッターに成長させてあげると言っているのです。
それは、オズマを鍛え上げ、飛雄馬の大リーグボール1号を打倒した事で、十分証明されています。
明子のこの言葉にまだ逡巡していた伴宙太は、この際だからと、愛の告白をしようとします。
その場面では、こんなセリフが。
「その先を仰らないで!・・・ホホホ まだ青春の門の外で、さ迷っている大きい坊やが、そんな告白だけ、青年並みにしてはおかしいわ。これで、失礼します」
この言葉に、伴宙太は吹っ切れ、中日に行って、飛雄馬と闘う決意をするのです。
偉いわ、明子姉ちゃん!
そして女性にも、こんな強さが必要だと、このセリフを考えた梶原一騎さんには、心から尊敬せずにはいられませんでした・・・
ところで、飛雄馬という名前の由来は、ヒューマンから来ていて、つまり、父親を乗り越え、ライバルと互いに技を磨きあい、しのぎを削って成長し、真の男らしさ、人間らしさを追求するという意味があるそうです。
そこで、気になるのが、梶原一騎さんは、誰をライバル視していたかという点です。
ライバルの重要性を、これだけ謳っているのですから、誰かいたに違いないですよね?
さあ、誰でしょう?
そりゃあ、漫画界で、強力なライバルになりうる人といったら、この人しかいないんじゃないですか?
それは漫画の神様、手塚治虫先生!
だってね、「巨人の星」には、なぜか手塚治虫先生の代表作と同じキャラクターの名前が二つも出てくるんです。
一つは「火の鳥」。

2つめは「ブラック・ジャック」

これは、単なる偶然じゃないと思います。
このマンガが発表された当時、手塚先生はまだ「ブラック・ジャック」は描かれてませんでしたが、「火の鳥」を連載されていて、ちょうどスランプの時期でした。
もしかしたら、手塚先生も「巨人の星」を読んでいて、「火の鳥」の登場を大いに喜び、励まされて、そこからインスピレーションを得て、再起をかけたマンガを「ブラック・ジャック」というタイトルにしたのでは?
それを裏付けるかのように、「巨人の星対鉄腕アトム」というアニメが、1969年に作られ、日本テレビのバラエティー番組「前田武彦の天下のライバル」で放送されているそうです。
それに、梶原一騎さんは、手塚先生が発刊したマンガ雑誌「COM」に、「我が原作作法」という記事を連載されていたとか。
互いに技を磨きあい、しのぎをけずって成長する。
梶原一騎さんについては首を傾げたくなる面も多々あったらしいですが、この「巨人の星」を観る限り、子供に人の道を教える素晴らしい教師だったように、私には思えてなりませんでした。