今、甲子園で高校野球が行われ、熱戦を繰り広げている最中ですが、私の二人の息子も部活動で、小学生の時から、ずっと野球を続けていました。
息子が、野球部に入ったきっかけは、選手が集まらず廃部寸前なので入ってくれないかと監督さんに懇願されたのが始まりでした。
だから、うちの息子を含め、それまで誰も野球をした事のないメンバーばかりで、入部した年の試合は全戦全敗というひどい有様でした。
だけど、コーチが変わって、自信をつける指導を行った結果、だんだん勝てるようになったのです。
その息子達二人とも、今は高校に通うようになり、野球をやめて、勉強一筋の毎日を送っています。
次男の場合、進学コースのため、部活動が禁止されています。
その次男の中学最後の試合は一年一ヶ月前にあったのですが、私の頭にずっと残っていて、ちょっと書いてみたくなりました。
ちょうど、約一年前、宮崎は口蹄疫が猛威をふるっていて、その影響で次男の中学最後の年は試合もあまり出来なくなっていました。
そんな中、七月のある日、次男の中学最後の試合が行われたのです。
いつもは私たち親も観戦して応援するのですが、自粛されて応援に行けませんでした。
その最後の試合の様子は、コーチから後で聞かされたのですが、最初のうちは追いつ抜かれつ、互角の勝負で、手に汗握るいい試合展開だったそうです。
もしかしたら勝てるかも知れない!
いいえ。次男にとって中学最後の試合だから、ぜひ勝って、有終の美を飾りたかったに違いないのです。
それに、中学校を卒業したら、一緒に戦ってきたメンバーとは離れ離れになるので、その事もきっと頭にあったはずなのです。
だから、うちの次男はいつにも増して、気迫をみなぎらせて、試合に臨んでいたと思います。
でも、それは対戦相手にしても同じ事で、闘志むきだしで向かってきたのでしょう。
最後の9回裏で、次男のチームはちょっとしたミスをしてしまい、それに勢いづいた相手チームに猛攻を許してしまい、またたく間に点数を次々に取られて、大差で敗れてしまったそうなのです。
試合が終わったあと、次男や、ほかのメンバー、監督とコーチはみんなで人目をはばからず大泣きしたそうです…
惜しかった。
本当に惜しかった。
あと少し頑張れば勝てたかも知れない試合を負けてしまった…
その試合の様子をしゃべってくれたコーチは涙ながらに、私たち親にこう言ってくれました。
「お母さん、息子さん達は本当に頑張りました。
とても惜しかった。
最後の試合で勝てなかったのは残念だったけど、息子さんをぜひほめてあげて下さい。」と。
私はコーチのその言葉を聞いて、次男は素晴らしい監督さんとコーチに指導してもらってたんだなと心から感謝しました。
その日の試合を、私は事あるごとに思い出し、今日まで歩んできたのです。
勝負は勝つためにするものですが、必ず勝つとは限りませんよね。
負ける事も往々にしてあるものです。
だけど、負けて得るものも必ずあると思うのです。
次男が中学最後の試合で負けて、何を思ったのか私は知りません。
でも、中学最後の勝ちたかった試合に負けた思い出は、きっといつまでも、次男の心に残るに違いないのです。
人を指導する立場の人は、強くて負けを知らない人よりも、負けを経験して悩んだ人の方が優秀なリーダーになれるそうです。
私は次男に言いたいです。
あなたの流した悔し涙を決して忘れないで。
そして、あなたが社会に出た時、その悔し涙を思い出して、出来るだけ相手の気持ちを理解しようとつとめるのよ。
そうする事で、きっとあなたは多くの人に信頼され慕われるはず。
人は誰かに愛され慕われる事で、自分の能力を思う存分発揮出来るのだから。
あなたの洋々たる前途に、心からエールを送ります。