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桔梗について『花おりおり』(湯浅浩史文・矢野勇写真)には以下のように記されていた。
名は漢名の桔梗(きちこう)に由来する。本来の和名は別にあった。一つは『万葉集』の「朝がほ」。『本草和名』など平安時代の辞書には「阿利乃比布岐」が載る。奇妙な名だが、蟻の火吹きの意。子どもは花を巣にかぶせ遊んだ。花をアリがかむと蟻酸が作用し、赤く変色する。古(いにしえ)の人は、それを名にしたのである。平安文学では桔梗(ききやう)に転じる。
花をアリの巣にかぶせ、花をアリが噛むと、蟻酸に反応して赤く変色するのだそう。平安時代にはその現象が知られていたのだ。
それから千年以上も後に生まれた私はそういうことをまったく知らなかった。いにしえの人の観察は見ることだけではなく、試してみることでもあったのかと思う。
何かを試してみたくなるようなこの手の本には今までお目にかかったことがなかった。とても面白い。